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 日本国内外で日本人以外の人と協働する機会が増える中、リーダーシップはどうあるべきかは重要なテーマです。その第1は仕事への情熱で、日本人の仕事熱心さは世界中の人に知られています。しかし、その姿を見ただけでは、文化の異なる人は付いていこうとはしません。

 多文化チームをまとめ上げ、エンゲージメントを高めるための大前提は信頼関係の構築ですが、それ以外に2つの認識が必要です。一つは全体目標の共有です。いったい、チームで取り組む仕事は何のためにやっているのか、その目標は何かということです。手段が目的化しやすい日本では、目先の方法論に目が行きやすいく、目的の共有は忘れがちです。

 たとえば、環境ビジネスで産業廃棄物の巨大処理施設を国内外で運営する企業は、安全性を大きな柱に置いています。しかし、安全性は日々の作業のリスク管理に属する方法論で、目標は施設の社会的役割にあり、いかに効率的、効果的に処理し、環境問題に貢献するかです。

 文化の異なる人々とチームで働く場合は、目標共有そのものが簡単ではなく、丁寧な説明と理解を求める必要があります。日本人の中では説明不要な事項であっても多文化チームでは説明は必要です。目標共有はチームの縦糸で仕事へのコミットメントには欠かせないことです。ただ、間違っても最初から組織のためとか、会社のため、社長や上司のためという考えを全面に出すのは間違いです。

 2つ目の認識は個人の目標を明確にすることです。「このチームに加われば、スキルが磨けるとかキャリアになる」ということです。これも日本企業では会社側が明確なキャリアパスを示す習慣がなく、成果主義だとチーム内の人間関係がギスギスするという理由で個人間の競争原理は十分に機能していません。

 欧米のように自分の仕事ぶりを自己アピールする習慣もないので、海外で昇給や昇進要求するナショナルスタッフに驚かされたりします。評価は個人のモチベーションに大きく影響します。それを日本とは違い、口に出して一人一人に個人的に丁寧に伝える必要があります。

 たとえばミスを繰り返しながらミスを認めない人や、最初は教えた通りにやってくれていたのが、目を離すといい加減になるナショナルスタッフは少なくありません。そんな時、全体の目標と個人の評価の両面から話して改善を求める必要があります。

 異文化環境で豊富な経験を持ち、成果を上げている日本人リーダーに話を聞くと「結果的にそんなことを続けると自分のためにならない」という伝え方は有効だといいます。多文化チームは愛社精神や組織への忠誠心を持たせることは困難は一方、報酬とキャリアという個人目標ははっきりしているからです。

 アジアと欧米では仕事とプライベートの境に違いがあります。欧米ではプライベートは仕事と切り離されているので、職務詳細の契約にないことや残業を強いる上司は嫌われます。逆にアジアでは職場も家庭の延長線上に捉える考え方が強いので、従業員のプライベートに上司が踏み込むこともしばしばです。

 では、そんなアジアで好感を持たれる上司は、どんなタイプの人でしょうか。一言でいえば、仕事には厳しく、仕事を離れたら面倒見のいい情に厚い上司です。成功している日本人リーダーの多くは、そのメリハリがしっかりしています。このふたつを持ち合わせることは信頼関係構築に極めて重要です。

 オフの時に遊びで時間を共有することも重要です。個人的な相談に乗ることも重要です。無論、一定の距離感も保たなければ、中国では親しくなると、返すつもりもないのに金を貸してくれなどといわれます。しかし、部下への面倒見の良さは日本でも1970年代にはありました。

 日本と異なる文化を持つ人が日本企業で働いて共通して感じることは「目に見えないルールが社内にも社会にも山のようにある」「卵の殻の上をあるいているようで、間違って強く踏むとからが割れてしまう」とよく聞きます。そのルールを本音で語り合う場も信頼関係を築くためには必要です。

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