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 英国の欧州連合(EU)離脱に関する離脱協定案の採決を行った欧州議会の本会議場で、日本でも分かれの歌として知られる「蛍の光」を議員たちが手をつないで合唱する光景が世界に報じられました。フランス・ストラスブールにある欧州議会は感傷的ムードに包まれました。

 今月29日、欧州議会は賛成621、反対49で離脱協定案を承認し、31日の英国の正式離脱の全ての手続きが終了しました。2016年6月の国民投票からなんと3年半の迷走の末の離脱で、EUとしては加盟国の離脱は初めて。EUとの離婚を一方的に突きつけられたEU側欧州議員だけでなく、英国の欧州議員も大合唱に加わりました。

 1973年にEUの前身、欧州共同体(EC)に加盟して以来、英国は重要な加盟国の一員であり続けました。無論、単一通貨ユーロには入らず、国境移動を自由にするシェンゲン協定にも入らず、しばしばEUとは政策的対立をしてきた英国ですが、存在感は持ち続けてきました。

 31日をもって離脱後は混乱を避けるため、直ちに移行期間に入り、通商協定などの協議に入り、移行期間はEU分担金を払い、これまで通りEUに従う一方、EUの重要な政策決定に英国は参加できなくなります。英国選出の欧州委員会委員の1人の女性は、ブリュッセル本部の自分のロッカーがなくなる事態に眉をひそめ「発言権を持たずにEUに従うなんて異常」と強い懸念を表しました。

 採決後の挨拶で、欧州委員会のウルズラ・フォンデアライエン委員長が英作家ジョージ・エリオットの言葉を引用し「われわれは別れの苦しみの中でのみ、愛の深さを見つめる」と語り、「われわれは今後もずっとあなたを愛する。遠く離れることは決してない。欧州よ永遠に」と叫びました。

 離婚が成立し、出て行く妻を見送る夫の忸怩たる思いが込められた叫びでした。賛成票を投じた多くの欧州議員は離脱に賛成したのではなく、合意なき離脱を回避するために賛成したのは明白で、反対すれば離脱ができないというなら反対票を投じたといっています。実は今でも英国内では離脱と残留は最新の世論調査でも五分五分という現実があります。

 英国のブレグジット党党首のファラージ欧州議会議員は「欧州は好きだが、EUは嫌いだ」と最後までEUに悪態をつきました。その姿は見ながら、この離脱を牽引した大半は男性議員であり、女性議員は残留派だったということです。たとえば、離脱交渉で挫折したメイ前英首相も国民投票では残留派でした。

 国民投票でEU残留が離脱を上回ったスコットランドの与党スコットランド国民党を率いるスタージョン党首も女性です。欧州議会で涙を流した英国議員も女性たちで、涙を流したEU側の議員の多くも女性でした。無論、感傷的になりやすい女性の特性はあるかもしれませんが、女性には共に生き、共に支えあうという本性があり、致命的対立がなければ離婚はしないものでしょう。

 無論、離脱強硬派の閣僚で構成されるジョンソン内閣で内相を務めるプリティ・パテル元国際開発相は離脱強硬派です。インド系の彼女は個人的に1992年のポンド危機で両親が事業のために借りていた借金の金利が高騰したことをEUのせいにして懐疑論者になったといわれていますが、どこから見ても単純にEUのせいにするような問題ではありません。

 英国には様々な血が混じった人々が住んでいますが、彼らは生き抜いていくために英国への忠誠を純粋な白人以上に誓う必要があり、彼女の強硬姿勢の一因と見るのだ妥当だと思います。保守党内でも離脱に関しては穏健派の女性議員が多く、強硬派は男性が多数を占めています。

 無論、切り替えの早いのも女性の特徴なので、2月1日からは離脱後の新たな現実に対応することに集中するのでしょうが、国家の方向を左右するEU離脱を牽引してきたのは、虚勢やプライド、主導権を握ることにこだわる男性たちが中心だったのは確かと私は見ています。

 少なくとも英国議会の男女比が50%ずつだった場合は離脱判断は違っていたかもしれません。それに残留派が多いといわれる若者の中では女性の方が、「ヨーロッパ人でいたい」という意見が多いといわれています。欧州議会で流された女性の涙を見ながら、考えさせられるものがありました。

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