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 連日のようにアメリカのトランプ大統領の弾劾訴追裁判のニュースが流されていますが、この問題は当初から民主党対共和党の激しい党派対立に動かされているのが特徴的でした。特に民主党は大統領選を前に、たとえ弾劾できなくともトランプ氏の評価を極端に下げることで選挙戦を有利に戦えるとの意図が明白です。

 政治の世界ですから、常に政党の影響は大きいわけですが、大統領の弾劾という国家の最高権力者を引きずり降ろす判断は、果たして党利党略で行っていいのかということは考えておく必要があるでしょう。たとえば、ビル・クリントンが大統領時代に大統領執務室で行った研修生との淫らな行為は、党派を超えて大統領の資質が問われた弾劾裁判でした。

 しかし、今回は弾劾訴追は、トランプ氏と政治的に敵対する民主党の次期大統領選最有力候補のバイデン前米副大統領のを巡る不正を暴くため、ウクライナ政権に協力を依頼するため、ウクライナ支援で圧力をかけたことを権力乱用の不正行為としています。それは国益を極端に損なう行為といえるのか、違法行為なのかということでは議論が分かれるところです。

 つまり、ウクライナに対する介入は、トランプ氏がそれを今年の大統領選での再選に役立てようとしたという理由で、不正だと言われているわけです、政治家は自分の政治的成果を国民に示すために、あらゆることをします。その意味で同氏は1線を超えたのかということです。

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は再選をめざす大統領選前のオバマ前大統領の行った行為について、社説「不正な目的を根拠に弾劾は許されるのか」の中で「オバマ氏はロシアのメドベージェフ大統領(当時)に対し、選挙後までミサイル防衛における圧力を緩めてほしいとプーチン首相(当時)に伝えるよう要請した」ことを挙げています。

 「共和党の大統領候補だったミット・ロムニー氏は、オバマ氏がプーチン氏に甘いと指摘し、オバマ氏が再選を後押ししてもらうために、独裁者から政治的支援を得ようとしていると非難していた」ことを例に挙げ、どの大統領だって選挙目的で外交を動かすことはあることを指摘しています。

 ところが民主党は、トランプ氏は例外であり、法を無視する脅威だと主張しています。つまり、弾劾が党派対立の道具と化し、日常化されることはないというわけです。しかし、民主党の目的もまた、次期大統領選に集中しており、WSJは今回の弾劾裁判が本来の弾劾の目的をねじ曲げてしまうことに強い懸念を表しています。

 WSJは結論として弾劾制度は「党派主義に基づく糾弾用の日常的手段としての弾劾訴追を拒否し、大統領による権力乱用が生じた純粋なケースに対応するための措置として残しておくということ」が重要だ指摘しています。

 今回は、上院の弾劾裁判の進行規則案を巡っても、共和党議員全員が禁則案に賛成、少数派の民主党議員全員が反対する前代未聞のスタートとなりました。党派対立による弾劾裁判の性格をよく表しているといえます。たとえ、共和党が多数派を占める上院での弾劾裁判で大統領が弾劾されなかったとしても、民主主義に大きな傷を残すことになりそうです。

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