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     パリ外環を1周するトラムT3 

 デジタル革命といわれる現代、今ほど製造業が危うい時代はないかもしれません。新たなITテクノロジーはコミュニケーションのあり方を変えただけでなく、人間のライフスタイルそのものを大きく変化させています。さらに地球温暖化対策や過去にない健康ブームも、人々が求める物とサービスを大きく変えています。

 私が長年、大学で教鞭をとったフランス西部ブルターニュ地方の中心都市、レンヌは、大学都市であるとともに、これまで何度もフランスで最も魅力的な都市に選ばれています。市内の人口は20万人超ですが、周辺には大企業の事業拠点や研究所もあり、キャノンは30年近く前にレンヌ郊外リフレに拠点を構えています。

 そんなレンヌは今、地下鉄など公共交通機関の整備で郊外に住み、市内で働く人々が、市内入り口まで車で来て、車は駐車場に入れ、地下鉄に乗り換えるスタイルが定着しています。中にはその車さえ、近所の人とネット上の乗合サービスを利用する人も増えています。

 かつてはフランスの地方都市では、車は一家に1台ではなく、一人1台が当り前だったのが、車は1台あればいいという家庭も増えています。若者は安価なネット・レンタルサービスなどを利用し、自家用車を持たない人も増えています。さらに大気汚染対策で市内への車乗り入れ制限もあり、車の利用率は年々、下がっています。

 同様な現象は、世界の先進国で見られる現象です。世界で最も車社会といわれたアメリカでさえ、若者の車離れは止まらない状況だと、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は最近伝えています。

 「全米で運転量が減少している要因には、人口密度の高い都市部への人口移動、職場に近い場所に住むことや別の輸送手段を好む若者の増加、テレワークやネット通販・ストリーミングの台頭、通勤が不要な年金生活者の増加などが挙げられる」と指摘しています。

 アメリカじんにとって車は自分の靴と同じくらい必要なものというイメージでしたが、そうでもなくなってきているのは驚きです。さらに驚きなのは通常、車の利用率は景気に連動しているといわれ、不景気で失業すると、まず、自家用車を売るといわれたのが、この10年景気は上向きなのに自動車の保有率が減少しているのも過去にない現象です。

 日本でも車を所有するためのコストを別の生活の質向上に使いたい若者が増え、カーシェアやリースが増えています。高級車を保有する男性に女性が憧れたバブルの時代は完全に過去のものです。

 それでもアメリカでは車の販売台数は過去最高を記録しているといいます。公共交通機関が未整備のアメリカでは、どんなにライフスタイルが変わっても車は今のところ必要ということでしょう。しかし、WSJは、車の利用時間は確実に減少していると指摘しています。

 そこには人々のライフスタイルそのものの変化があり、WSJは「国勢調査によると、在宅勤務を毎日する労働者の割合は10年の4.3%から18年には5.3%に上昇している。労働省によると、終日の在宅勤務を時々する人の割合も約15%と以前から増えている」と指摘しています。

 パリでは市の外環を走っていた路線バスが路面電車、トラムに変わりました。トラムはフランス全土で急増しており、車道は減らされ、トラムでの移動が増えています。アメリカの都市でも同様な現象が見られます。

 製造業を象徴する自動車業界では100年に1度といわれる電動(EV)化が進み、ただでさせ巨額の投資が必要なところに車離れが襲い、人々のライフスタイルの変化の見極めは、ますます重要さを増しています。市場を見誤れば命取りになるのがビジネスの世界、製造業もサービス業も経営判断がますます難し時代が到来しています。

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