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 グローバルビジネスや異文化環境で仕事をする時、毅然とした態度と柔軟性の両方が求められるといわれます。これは外交にもいえることで国益を追求することや、国家として信じる普遍的価値観を守るという意味では妥協は可能な限り最低限にすべきですが、一方で柔軟な対応がなければ対立の悪循環に陥るリスクもあります。

 この数年の日本は、隣国の中国、韓国との関係が困難に陥っています。対中関係が改善の方向に向かっているとはいえ、来春に予定される習近平国家主席を国賓として迎えるためには、日本国内で一波乱も二波乱もありそうです。

 中国は対米関係悪化で出口を見出せず、経済も停滞する中、対日戦略を一転させているとか、安倍政権が就任当初冷え込ませた強硬姿勢を改めたことなどが指摘されています。しかし国民の反中感情改善は容易でありまえん。米ピュー研究所の最新の調査では、反中感情が先進国で軒並み60%〜70%代と高まっていますが、中国を好ましくない国と考える国では、日本は85%と断トツです。

 一方、韓国は日本にとって自由と民主主義、法治国家という同じ価値観を共有する重要な隣国であることには変わりありませんが、互いの国民の相手国に抱くネガティブな感情は出口が見えない状態です。実際、温泉好きの韓国人が訪れていた私の郷里、別府や湯布院では韓国人観光客は激減状態だそうです。

 無論、徹底した反日教育を学校で半世紀以上続けてきたことが根底にあり、一度恨みを持てば100年でも1000年でも持ち続けるという国民性の影響もあるでしょう。日本製品の不買運動を続ける韓国では、いかに日本製品で溢れ返っているかを思い知らされているといいます。

 ビジネスにおけるグローバル交渉は、外交に例えるられますが、実際に国外の拠点でビジネスを日々行う場合も外交的な要素は存在します。同時にローカリゼーションを推進し、その国に根を生やすためには、その国の人々に愛され受け入れられる企業をめざす必要もあります。信頼関係構築なしにビジネスは成り立たないからです。

 そこで必ず課題となるのが、どこまで自社及び日本の価値観を持ち込めるのかということです。某大手企業で自社の経営理念を海外拠点でも浸透させたいので、その方法を相談されたことがあります。経営理念は、その会社の従業員を一つにする縦糸のような存在で、当然重要ですが、グローバルな観点で見れば、その中身は大きく違います。

 日本企業の経営理念は、どちらかというと精神論が大半を占め、本来の利潤追求の企業目的とは矛盾するような「人間を幸せにする」的な社会貢献のキャッチコピーがあったりします。無論、企業活動も社会貢献ですが、どこまでいってもビジネスであり、NGOが展開する人道支援活動ではありません。

 この境が曖昧な点も日本の経営理念の特徴です。つまり、日本企業の経営理念が、どの国の人々にも理解され受け入れられる普遍性があるかは検証する必要があります。無論、テクノロジーの追求は人々の生活そのものを根底から変えるものもあるので、普遍性もありますが、けっして精神論とはいえません。

 同時に日本人が重視するものが、どこの国でも重要とは限りません。たとえば、日本人はルールを守ることに心血を注ぐ国民性を持っています。それを他国の従業員に当てはめようとしても無理な場合があります。毅然とした態度で妥協しないという姿勢が軋轢を生むケースも多々あります。

 だからといって、ルールはどうでも言い訳でもありません。新興国や途上国で仕事をすることが圧倒的に増えている状況の中、その国がなぜ途上国だったのかいえば、ルールを無視し気分で動き、公共性がなく利己的な国民性が発展を妨げてきたのも事実です。だから相手の国になんでも合わせればいいという話でもありません。

 現地で譲れないことがある場合、その中身が果たして、その国の人々にも有効なものなのか、それとも日本人だからこそ適応できているのか検証する必要がああります。やり方は1つであるというのは大きな間違いです。異文化環境で生産性を上げられる効率的なやり方が見つかる場合もあります。

 方法論は相対的で絶対的なものではなく、固定化し宗教扱いするのは非常に危険です。細かいことが大好きな日本人にだけ適応できる方法を文化や慣習、国民性の違う人に対して強制的に適応しても結果は出ません。どんな途上国でも新しい発見はあるものです。それよりも目標を共有することに力点を置くことで結果を出している企業は多くあります。

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