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 EU離脱派の元欧州議会議員でジャーナリストのダニエル・ハンナン氏が、ブレグジット後は日本との関係強化が英国経済の成長で重要というコラムを英テレグラフに寄稿しました。今さら引き返すことはできないブレグジット、人々の関心はブレグジット後の英国がどうあるべきかに関心が移っているともいえます。

 ハンナン氏は、英国が欧州連合(EU)を離脱する理由は、自国の法律を優先する民主的な自治を取り戻すことと、自国の外交政策を追求し、EUを介さず自主的に貿易できる2点とした上で、日本がこれまで英国に対して、EU域内では最大の投資を行ってきたパートナー国でブレグジット後の経済発展に欠かせない存在と指摘しています。

 ハンナン氏によれば、世界3位の経済大国の日本は、古くから英国を重要なパートナーと考え、日本が高い目標掲げる投資や金融サービス、デジタル貿易などの分野は、英国が収益を伸ばそうとしている分野と合致すると主張しています。

 EUに縛られない独自の通商戦略で動くことを主張してきた離脱派としては当然の主張という部分もありますが、これまで彼らは、”特別な関係”のアメリカや英連邦に属するカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、さらには英国法に由来するコモン・ローを持つマレーシアなどと、新たな貿易協定を結ぶことの重要性を強調してきました。

 そこに日本を加えるだけでなく、世界第3位の経済大国との新たな通商関係を結ぶことは、英国にとってアメリカとの関係同様、重要だとナンハン氏は主張しているわけです。しかし、日系企業が英国を欧州のヘッドクォーターに選んでいる理由は、英語圏であることやEUと市場が一つになっていることで関税障壁がないことなどが主な理由です。

 確かにハンナン氏が指摘するように第1次大戦以前は、日本は英国を重要なパートナーに選び、戦後、日英関係は驚くほど回復し、今に至っています。第2次世界大戦で蔓延した反日感情は今はなく、在英日本人の数も欧州最大です。

 同じ島国である英国は欧州大陸を背景に大西洋に面し、日本はアジア大陸を背景に太平洋に面し、共にアメリカを最大の同盟国にしてきた共通点もあります。

 EUにネガティブなハンナン氏は「農産物の規格や製品の関税についての議論をEUは重視するが、そんなものは20世紀の遺物だ」と切り捨て、英国は「日本をはじめとした同盟諸国と、それぞれのサービスについての相互理解、公平な投資、越境データ移動、サービス提供者への規制緩和などに関して最先端の協定を結ぶ道を模索すべき」として、これぞ21世紀の貿易だと書いています。

 過去、世界を主導した環大西洋文明のアメリカと並ぶ主役だった英国は、今度は環太平洋諸国との関係強化に関心を抱いています。中でも日本は、同じ価値観を共有し、技術と経済を先取りする先進性を備えた国とのイメージがあり、ブレグジット派には大きな魅力といえるのかもしれません。

 無論、保守党の古い議員の中には、未だにネガティブな対日感情を抱く人はいないとはいえませんが、ブレグジットは英国が生き残りをかけた大きな懸けでもあり、日本は無視できないというわけです。ならば、日本企業が英国に留まれる環境を整える必要が彼らにはあります。ハンナン氏は関税重視は古いといっても、競争力を左右することは否定できません。

 EUあっての英国という日系企業が圧倒的に多い中、ブレグジット後の英国は、どうやって彼らを引き止められるのか、具体的な施策は示されていません。全て個別に各国と協定を結ぶといいますが、ハンナン氏を含む離脱派が主張する公平性をどう保障するのかも見えていません。

 無論、日本は英国との関係を重視していくことに変わりはないと思いますが、英国からのラブコールに対して、停滞気味の日本企業にとってもチャンスであるのも事実。同時にブレグジット後の混乱への慎重で柔軟な対応と、対英政策の新たな思慮深いスタンスが日本には求められているといえます。

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