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 英ロンドン中心部ロンドン橋付近で先月29日に起きた2人の死者を出した通行人襲撃事件を受け、英政府はイスラム過激思想による犯罪者の厳罰化の議論が始まっています。同時に欧米諸国で国民1人あたりの防犯カメラ設置数の多い英国で、テロを阻止できなかった問題が議論されています。

 無論、ローンウルフ型の個人的テロ阻止は防犯カメラだけでは困難ですが、その防犯カメラは治安を担当する当局が設置しているだけでなく、銀行や商店などが独自に設置する数も非常に多く、明確な法律がないためにプライバシーの問題を危うくしています。

 とはいえ、危険人物として監視対象に指定されている人物に対しては、監視カメラによる高度な分析は、監視対象人物のコミュニケーション手段への監視と合わせ、重要視されています。

 ロンドン橋襲撃事件のメラウスマン・カーン容疑者は、イスラム過激派として8年間の服役の経緯があり、さらに釈放後、様々なケアを受けていました。特に今回容疑者が殺害した英国人の一人は同容疑者の更生の手伝いをしていた人物です。口では感謝の言葉を繰り返していたそうですが、テロの機会を伺っていた現実は、重く受け止められています。

 この事件は英国より高い頻度でテロが起きているフランスでも、対岸の火事とは受け止められていません。聖戦主義過激派の収監者が欧州で最も多いフランスでは、過激思想に染まり、改心していない危険となれる服役者は現在、約500人、聖戦主義の影響を受けながら危険性が低いと見られる収監者は1,000人に上っています。

 フランス内務省によれば、隔離房は1500は必要との見解ですが、足りていないのが現状です。今後、トルコやシリア北部から追放される過激派組織、イスラム国(IS)元戦闘員やその妻が帰国後、次々に収監されていることを考えると、彼らにも釈放される日がいずれ来るということです。

 イスラム聖戦主義は刑務所内で拡がる傾向があることは、この数年で最も指摘されていることですが、フランスでは現在収監中の危険とされる服役者は、完全に独立した独居房に入れられ、他者と接触させない措置がとられています。しかし、問題は釈放後の再犯です。

 フランスでは、2016年7月に起きた仏北西部ノルマンディー地方のカトリック教会で神父を刃物で殺害した2人の犯人のうちの1人は、刑務所から仮釈放されたばかりで、足にはブレスレットを着用していて犯行に及んでいます。

 英仏のテロ専門家たちからは、今回のカーン容疑者のように釈放時に聖戦主義を棄てるような意思表示をしながら、機会を伺い、再びテロを実行する例は少なくないと指摘されています。そのため、釈放後も更生施設に長期間収監する方が安全だという意見もあります。

 フランスのテロ対策当局は、国内で約19,000人が過激思想に染まっていると見られ、対策チームがケアしているのは、2,600人の個人と800家庭に止まっているとしています。対象の多くは実刑判決を受け収監された経験がある一方、数の多さから当局の監視には限界があり、予算も限られているのが現状です。

 行動監視のブレスレットを付けたまま、犯行に及ぶケースがあるくらいですから、再犯を防ぐのは容易ではありません。昨年、フランスではテロへの直接、間接の関与で収監され、長期刑期を終えた約20人が釈放され、今年12月末までに30人が釈放される予定といいます。

 さらに軽犯罪などで収監され過激な思想に感化された受刑者約1,200人のうち200人が年末までに出所する予定で、ロンドンの事件を受け、不安の声があがっています。監視の人員不足解消に高度な防犯映像分析システムも必要だという声が上がっていますが、フランスは英国よりプライバシーに敏感な国なので、中国のようなカメラによる監視国家になることも警戒しています。

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