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 アメリカは今、次期大統領選挙に向け、特に民主党の候補者選びのプロセスに入っています。何かと話題の耐えないトランプ米大統領を、何がなんでも引きずり降ろしたい民主党には、大統領弾劾とメディケア・フォー・オール(国民皆保険制度)、パリ協定離脱などを主な争点として、戦いを挑んでいます。

 しかし、オバマ政権が誕生した2009年以降、アメリカは過去のいかなり時代よりアメリカの世界に対するプレゼンスが弱まり、小国でもアメリカのいうことは聞かない状況です。アメリカ自体も内向きになっているといわれ、国民の関心は他の先進国同様、外交政策は票に結びつかない状況にあるともいえます。

 民主党の最有力候補といわれるバイデン前米副大統領は、外交経験のないオバマ氏を支え、他国よりはるかに多い世界の問題へのアメリカの関与に対して外交のプロとして、様々な重要案件に関わってきました。バイデン氏といえば、1979年、カーター政権下で第2次戦略兵器制限交渉(SALT II)にあたった若き議員の同氏がロシアの熟練外相グロムイコから外交の手ほどきを受けた話です。

 彼は今でも武勇伝として語っていますが、東西冷戦真っ只中のアメリカにとっては最重要案件の一つに関わった話ですが、外交より内政重視の民主党の中で外交の熟練者として評価を受けてきました。トランプ大統領がイラン核合意、TTP、パリ協定から離脱する中、バイデン氏はそれらへの復帰を公約にしようとしています。

 バイデン氏は、オバマ大統領の支持でイラクから米軍を撤退させるプログラムを進めた一方、彼の中では中東へのアメリカの関与の継続の重要性も認識し、米軍残留に向けイラク政府と交渉していたと、最近のウォールストリートジャーナル(WSJ)とのインタビューで答えています。

 世界から見れば、トランプ大統領は、イラク、アフガニスタン、シリアなどの紛争の泥沼から抜け出すため、米軍撤退を考え、従来、共和党が重視してきた自由貿易を守るために国際問題に関与することは正しいとする伝統的考えを変更しようとしているように見えます。

 つまり、自由と民主主義を守るために世界で、それを脅かす動きに対してアメリカは軍事オプションも含め関与する正当性に疑問符を投げかけているというわけです。これにはトランプ支持者だけでなく、多国間主義の民主党の左派の一部も賛同している状態です。

 アメリカが世界経済や安全保障問題への関与を継続する道を歩み続けるのか、それとも世界の問題関与からの次々に撤退する道を選ぶのかという、アメリカ外交の岐路に差し掛かっているともいえる状況です。そこでバイデン氏は、トランプ氏がひっくり返した従来のアメリカ外交の基本姿勢に立ち返るような発言をしているわけですが、果たして有権者の心を掴めるのでしょうか。

 バイデン氏はWSJのインタビューの中で、シリアからの米軍撤退について「われわれが世界をまとめ上げなければ、誰がまとめるのか。それは良い人々ではないだろう」といっています。この認識は善良でパワフルなアメリカ以外に世界の平和と安全を中心的に守れる国はないという認識です。

 私はトランプ氏が、国益、特に経済重視の観点から貿易の不均衡に不満を持ち、国外での軍事負担が不公平だと主張しているからといって、アメリカの正義に関心がないとか、孤立主義でいいと思っているとは見ていません。しかし、同時に対ロシア外交で鍛えられたバイデン氏の伝統的外交政策も説得力を失っているように見えます。

 むしろ現実離れした高邁な理想主義で突き進むリベラル派の矛盾に満ちた世界観が気になります。その世界観が主導する東西冷戦後の新たな世界の枠組みづくりを危険視し、仕切り直しを計ろうとするトランプ政権の方が時代にあった現実的対応として説得力を持っているように私には見えます。

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