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     ノートルダム大聖堂前にあるパリ警視庁

 フランスではパリ警視庁内で今月3日、同僚4人をナイフで刺殺したアルポン容疑者がイスラム過激思想に染まっていたことが明らかになり、国家の治安上深刻な問題として懸念が拡がっています。特に同容疑者が職場で問題発言していたにも関わらず、管理者に報告されず、放置されたことが深刻に受け止められています。

 アルポン容疑者は2003年に警視庁に勤め始め、情報部のIT部門で働いており、2015年1月の風刺週刊紙、シャルリ・エブドー編集部襲撃テロ直後、職場で歓喜したことで職場の同僚と激しい口論になったそうです。ところがその場にいた同僚らは上に報告していなかったことが今回明るみに出ました。

 当局によれば、現在は2015年以降に頻発したテロ事件を受け、職員の思想チェックが厳しく行っているとはいっていますが、不信感は高まるばかり。カスタネール仏内相は公務員だけでなく、公共の治安に直接影響を与える公営バスの運転手や空港職員にも過激思想に傾倒する者がいることをある程度把握しており、その対策の遅れを認めています。

 内相は「アルポン容疑者の2015年の危険な態度が上司に報告されなかったのは、当局がアルポン容疑者を監視対象に入れるのを同僚が恐れた可能性もある」と指摘しており、監視体制に不備があった事を認めています。

 2015年11月のパリ同時多発テロの実行犯の一人は、パリ交通公団のバスの運転手でした。同年1月のパリ東部のユダヤ食料品店を襲撃したテロ犯の妻に対して、襲撃前に情報提供したのは過激派組織と関係していた憲兵隊院で、発覚後罷免されています。今年6月に発表された議会の報告書によれば、治安隊員で過激思想が確認された30件のケースや、警視庁内でも15件のケースがあるという深刻な現実があります。

 ドゴール空港やオルリー空港などパリ空港公団で働く8万人の職員の中にも、これまでに105人の過激化が認められ、刑務所職員4万4千人のうち10人が危険人物として監視対象になっているとされています。政府が依頼する外部の調査会社によれば、公共交通機関求職者や現在働いている職員の過去や人間関係、思想チェックで昨年だけで185件の不適切な人材を発見したそうです。

 フランスでは5年前からは不審な行動を見抜くための研修を行っており、これまで約2,700人の職員が研修を受けたとしています。それでも今回の警視庁内での殺人事件を防ぐことには繋がっていません。政府としては、公務員及び公共交通機関などの公共性の高い職場で働く職員の間で過激思想が拡散しないよう具体的な強化策を打ち出すとしています。

 最近、パリの住民の間でパリ離れが起きており、治安悪化も一つの要因。ノートルダム大聖堂の目の前にあるパリ警視庁内で同僚同士の刺殺事件が起きるのは象徴的だとも見られています。特に暴力事件の増加がパリのイメージダウンに繋がっています。

 原因の一つは、黄色いベスト運動が1年も続いていることです。毎週土曜日に町を荒らし、暴力事件が多発し、バス停などの公共物が破壊され、パリは荒れています。最近、パリに住み続けた70代の歌手がパリを出ることを宣言し、話題になっています。パリのイダルゴ市長の無策を指摘する人もいます。

 私の友人はパリにアパートを買ったばかりなのに、今はパリから出て行くことを検討しているといいます。にもかかわらず、パリの不動産は上がっており、不思議ともいえます。パリはこれからどうなるのか、マクロン政権になってパリの町は荒れてしまったという想定外なことが起きています。

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