1414833204_67b8d9ded9_b

 この数カ月、ドイツ経済の減速が伝えられていますが、一時的なのかどうか専門家の意見は分かれるところです。2015年以降、シリアやイラクから押し寄せた難民・移民を欧州連合(EU)最大の経済大国として100万人以上受け入れたドイツは、それが重荷になっているという話もあります。

 取材で多分、50回以上、ドイツを訪れたカメラマンの故大神達夫氏は私に「ドイツで電車に乗っていると、時々、東京の山手線に乗っているような感覚を覚える」と言っていました。私も同感です。ヨーロッパには日本人と似た2つの国の国民がいます。それは英国人とドイツ人です。

 英国は、日本と同じ島国なので、街並みもなんとなくちまちましていて、住んでいる家も狭く、無秩序に家具が部屋に置かれています。質素でシャイな英国人たちは、彼らにしか笑えないジョークを楽しみながら暮らしています。ユーロスターでフランスに入り、広々とした草原を見ると、なんと大陸は開放的なのだろう思います。

 地味なことでは負けていないドイツですが、彼らは感情を表情に表さないことで知られています。ドイツ人がテレビで笑顔を見せるとフランス人は「ええ、ドイツ人も笑うんだ」という冗談が飛び出すほど、気難しい顔をしています。

 同時にドイツは地域性が強く、日本同様の村社会で閉鎖的なところがあります。会社の中でも知らない人には挨拶しません。アメリカ人やフランス人、イタリア人のようにエレベーターの中でも知らない人に挨拶するような習慣はありません。この閉鎖的で開放的でないドイツ人の態度は、誤解されることが多く、シリア難民の多くは差別感を味わい、苦しんでいます。

 ドイツ人は日本人とは異なるものもあります。それは世界一といっていい、直截的な物言いです。ビジネスミーティングでも、世間話の前座はなく、すぐに本題に入るのが常です。アジアも北・南米も中東も世間話でアイスブレークし、相手が信頼できる人物かどうか確かめる傾向があるのに対して、アメリカ人も驚くほどドイツ人は直截的です。

 そんなドイツは日本同様、技術大国といわれ、共に戦後、重厚長大産業で経済成長し、競争力のある質の高い技術で世界市場で確固たる地位を築いてきました。ドイツには徒弟制度を持つギルド(商工組合)の流れを組む職人文化があり、しっかりとしたものづくりの伝統があり、日本の職人文化と共通するものもあります。

 たとえば、日本人から見れば、トップダウンの中央集権的な意思決定スタイルに見えるドイツの組織ですが、実は米英仏と違い、コンセンサス重視で現場の職人と管理職が分け隔てなく対話する姿は、日本に似ています。

 無論、日本人もドイツ人も勤勉で知られていますが、実はドイツは1990年代末にフランスが週労働35時間制を導入するまで、世界一労働時間が短い国でした。「人間らしく生まれ、人間らしく生き、人間らしく死ぬことに国家が責任を持つ」をモットーに社会保障がしっかりしており、ライフワークバランスという意味では、日本とは大きな違いがあります。

 それに日本人ほど、新しい物に飛びつく性格ではありません。1990年代、ドイツ及びヨーロッパで反響を呼んだ『日米の挑戦−ドイツ・ハイテク産業、生き残りの戦い』の著者、コンランド・ザイツ氏に同氏が大使をしていたローマのドイツ大使館で話を聞いたことがあります。

 彼は「ご存じのようにドイツはテクノロジーや重工業、熟練産業などの分野、つまり自動車、機械、化学、家電、鉄鋼などの産業分野で世界のトップを走ってきました。無論、最近の価格競争の激化は新たな局面をもたらしていますが、それでもドイツの重厚長大産業は世界をリードする技術と力を維持してきたと思います。ところが戦後登場した新しい産業分野は非常に脆弱です」といっていました。

 あれから20年以上経ちましたが、果たしてドイツのハイテク産業はどうなったかといえば、日本ほどではありません。なぜなら、ドイツ人は合理的であって 新しいモノが出たら真っ先に飛びつくような性格ではまったくないからです。たとえば、ドイツ人は未だにクレジットカードを信用せず、現金払いが多く、キャッシュレス文化は今後、根付くかどうか疑問です。

 日本の技術革新は、消費者がまず、新しい物に飛びつくことに支えられてきたともいえますが、ドイツはそうではありません。一つの技術は長年の風雨に絶えて、その質が証明されるという考えが今でもあります。次々に生まれる技術による新しいビジネスモデルの先取り競争という意味では、ドイツ人は奥手です。

 アメリカだけを向いて戦後を過ごしてきた日本は、そのお蔭で経済成長もできた側面がある一方、日本人にしかできないオリジナリティという部分は堅牢とはいえません。果たして似て非なる技術大国の日本とドイツの将来はどうなる違ってくるのでしょうか。

ブログ内関連記事
優等生ドイツの経済減速はヨーロッパ経済にどの程度影響を与えるのか
中国人にはいわれたくない「開かれていない国」ドイツ ではその実態は?
ドイツを脱出するシリア難民、欧州をめざすシリア難民の危険な事情
現金に執着するドイツ人、小切手に執着するフランス人