Marche_de_Cosne-Cours-sur-Loire

 フランスの有機食品の市場規模は、2018年時点で97億ユーロ(約1兆1,640億円)と日本の1,850億円に比べ6倍以上という驚異的市場に成長しています。それもフランスでは過去5年間で2倍以上に市場規模は増加しているとフランス農業・食料省は指摘しています。

 実はその兆しを体感したのは、今から20年前、パリ14区のアレジア近くに住んでいた時のことでした。アパートから歩いて行ける距離にはダンフェール・ロシュローというインテリや文化人が多く住むエリアがあり、歩いてアパートから10分の範囲に、なんと5軒もの自然食品の店があったのに驚かされました。

 フランスのスーパーマーケットでは、日本でいうオーガニックを意味するbio(biologique)のコーナーの占有面積が驚くほど拡大し、bio専門のコンビニまで登場、青空マルシェには「bio」の看板の下で野菜や果物、ワインまで売られています。bioの基準は厳しく、フランス農業・食料省の独自認証である「AB(Agriculture Biologique)」マークが付されて販売されています。

 AB認証は、化学肥料や農薬を使わない農地で生産され、かつ、遺伝子組み換え技術を使わないなどの生産要件を満たした有機農産物、さらに原料の95%以上に有機農産物が使われた加工食品に与えられます。ヨーロッパ共通認証では「ユーロフィーユ」マークとなっています。

 実はbio食品の価格は通常より3割以上高く、20年前にはインテリが住むダンフェール・ロシュロー界隈の富裕層を当て込んでbio食品を売る店舗が増えたと思われます。同じことは4区や7区、8区、15区、16区など経済的に豊かな層が住む地区で拡がっていましたが、今はどこにもあり、完全に浸透しています。

 仏公益団体・有機農業開発促進機関(Agence BIO)のサイトで公表されている最新の調査結果では、フランス人の71%が自分と家族の健康、そして地球環境への配慮のため、月に1回以上bio商品を購入していると回答しています。

 また、国民一人当たりのbio食品の平均購入額は、年間136ユーロと日本の10倍以上で、購入層は若者の間にも拡がり、bio専門のコンビニに行っても、20年前とは違い、様々な年齢層、人種の買い物客が来ています。ワイン市場に至っては、ビジネスとして最も成長分野とされ、多くのワイン生産者が参入しています。

 フランス政府は昨年、有機農業への転換促進のため総額11億ユーロの財政支援を盛り込んだ計画「Ambition Bio 2022」を策定しました。特に農薬依存からの脱却をめざし、欧州連合(EU)域内でも、フランスはその牽引役になろうとしています。

 フランスで、首都パリを含む、リール、ナント、グルノーブル、クレルモンフェランの5つの都市で今月12日から、市内での合成農薬の使用を禁止しました。理由は生物多様性と市民の健康保護の必要性としています。フランスでは今年1月から、個人の庭でも天然由来の農薬以外の合成化学農薬の使用が全土で禁止されました。

 bio市場の成長は、雇用の促進にも貢献し、昨年1年間でbioに関連し18,714名が新たに直接雇用されたとしています。次の目標はbio食品の価格です。これだけ需要が伸び市民権を得ているにも関わらず、高価格で留まっている原因の一つが流通業者のマージンにあることが指摘されています。

 より管理にコストの掛かる有機野菜や果物について、流通マージンが高くなるのは当然という考え方もありますが、通常の野菜や果物の流通マージンに比べ、平均75%も高いのは異常という批判が出ています。とはいえ、高くても買うbio食品は競争力を持っているの事実。

 ただ、通常食品との価格差は、経済格差が拡がるフランスでは、食生活の不平等感も与えており、価格差の圧縮は喫緊の課題といえます。フランスの人口は日本の半分ですが、bioの市場規模は6倍というのは驚きです。

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