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  浙江省杭州市にあるアリババ・グループ本部

 中国大手IT企業が東南アジアで苦戦しているようです。欧州でも中国メーカーが電気自動車を市場に投入する予定ですが、ヨーロッパ人に受け入れられるかどうかまったく未知数です。米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、中国の電子商取引大手アリババグループのベトナムでの苦戦を詳しく伝えています。

 元英語教師のジャック・マー氏が20年前に創業したアリババは、世界最大規模の中国のネットショッピング市場を制したことで、東南アジアを制するのも時間の問題と見られていました。

 実際、アリババのショッピングサイトの取引量は、最新のデータで「中国で6億5400万人が8530億ドル(約91兆4800億円)相当の商品を購入し、これはアマゾン・ドット・コムとイーベイのサイトでの合計販売額よりも多い」とWSJは指摘しています。

 しかし、グローバル化戦略を最重点に置くアリババは、インドやシンガポールなどに巨額の投資を行ってきたにも関わらず、利益を出していないのが現状です。アリババ経営陣は「最初から長期戦と考えている」と説明しているものの、私は個人的にアメリカ企業と中南米の関係に似ていると見ています。

 WSJは「多くの中国ハイテク企業は、国内では過酷な長時間労働をいとわない従業員によって支えられている。また、中国政府の政策によって外国企業との競争が抑制されている。しかし、一歩外に出ればこうした恩恵を受けることはできない」ことを苦戦の理由にあげています。

 さらに「厳しいトップダウン型経営」が裏目に出ているとも分析しています。しかし、かつて世界を席巻した日本企業も、長時間労働、過重労働では負けていなかったはずです。政府の保護を受ける日本企業は、海外では苦戦したはずですが、そうともいえませんでした。

 無論、時代的環境は違いますが、アリババなどの中国大手ハイテク企業の東南アジアでの苦戦には、別の理由もありそうです。それは地政学的理由であり、東南アジアに拡がる中国アレルギーです。たとえばベトナムは現在、豊かな海洋資源の眠る南シナ海への強引な中国進出に悩まされています。中国と国境を接する同国はベトナム戦争だけでなく、中国との長い長い闘争の歴史があります。

 東南アジア全域には強力な華僑ネットワークも拡がる一方で、中国覇権への警戒感も強いのが実情です。特に一般消費者を相手にするネット通販は、地元の消費者感情が影響します。日本は戦後、反日感情がくすぶる東南アジア市場で忍耐強くイメージを転換した過去があります。

 今、日本が経済覇権で再び東南アジアを支配しようなどと考える人はいないでしょう。しかし、共産党一党独裁の中国が推進する一帯一路のシルクロード経済圏構想にしても、背後に見え隠れする中華思想に対する強い警戒感があるのも事実です。まして今回トップを退任したアリババのジャック・マー氏は、自ら共産党員であることを明らかにしたような人物です。

 たとえば東南アジア市場で急成長した韓国企業に対しては、そのような警戒感はありませんでした。むしろ、自分たちと同じ途上国から這い上がっていったという意味で共感するところあり、韓国の背後に日本とアメリカがあることも信用を高めたといえます。

 中国メーカーの製品やIT企業の進出では地政学的問題のない欧州や南米では、消費者は安くて高品質であれば受け入れるのは容易です。実際にドイツでは安価な中国メーカーのソーラーパネルが多くのドイツ企業を倒産に追い込んでいます。とはいえB to Bならまだしも、たとえば欧州で販売が予定されている中国メーカーの電気自動車がどの程度受け入れられるかは不明です。

 企業のブランドイメージには、背後にある国のイメージの影響は受けます。日本は戦後、地道に国としての信用度を取り戻しましたが容易なことではありませんでした。中国は社会主義国家の信念と覇権主義へのこだわりを棄てずに、東南アジアで成功することはできるのでしょうか。

 中国ハイテク企業の東南アジアでの苦戦は、単に中国企業のグローバル化の過程的現象であって、短期的なものなのでしょうか。アメリカは圧倒的な経済力、軍事力で上から目線で中南米に接し続けた結果、今でもけっして良好な関係とはいえません。

 まして中国の場合は、自由世界とはまったく異なる体制の中で急成長した企業のグローバル進出です。そもそも意思決定の仕方もマネジメントの仕方も異なります。これまでは中国人を引き連れて海外進出するパターンが主流でしたが、それは海外でのローカリゼーションには繋がっていません。

 アリババは東南アジア市場で、結局は中国の販売業者の参加を促し、結果的にはタイなどでアリババに出店する販売業者を怪しむ事態に発展しているといいます。ビジネスは政治と違い、市場が受け入れなければ成功はできません。しかし、中国企業の過信と傲慢さはグローバル市場では足かせになっていることは否定できない事実です。

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