Samsung_headquarters
   ソウルのサムスン・タウン

 韓国のサムスン電子は、7月31日に発表した4-6月期(第2四半期)決算で純利益が53%減少したことが明らかにしました。減収の原因は、米中貿易摩擦の長期化により不透明感が世界的に拡がる中、消費者の買い控え傾向が強まり、スマートフォンなどへの購買意欲が弱まったことによるものとしています。

 買い控えは、サムスンの主力である部品事業への需要減退にも繋がり、さらに、日本の対韓国の輸出手続き強化により半導体などに欠かせない原材料の出荷に時間が掛かるようになることから、半導体というサムスンの中核事業が強い圧力にさらされていることも影響しているといわれています。4-6月期の営業利益は、モバイル部門は42%減、半導体部門は71%減でした。

 一方、世界のスマートフォン市場を2分したiphoneとサムスンのgalaxy戦争に割って入った中国のファーウェイの決算は対照的で、米中貿易摩擦で厳しい制裁をかけられているにも関わらず、7月30日に発表した2019年1〜6月期の売上高は、前年同期比23%増の4013億元(約6兆3000億円)でした。

 5月からのアメリカによる制裁の影響は未だ軽微で、中国市場でのスマートフォンや次世代高速通信「5G」関連の通信機器の販売増により業績が拡大したことが、増益に繋がったとされています。ただ、制裁の影響が本格化するのは年末以降との見方もあります。

 中国、韓国ともに、経済的成功は、もともと外国からの投資にもとづくもので輸出志向に支えられたものでした。つまり、共に先進的な技術革新国ではなく、先進国に奉仕する形で発展し、自立的発展は今後の課題とされている国です。

 ところが中国は巨大市場を持つために世界の工場から世界一の市場を売りにすることで海外からの投資を増やし、同時にオリジナル技術を生み出すことにも注力することで派生的経済発展モデルを卒業しようとしています。対する韓国は市場規模が極端に小さく、輸出依存は今後も続き、技術も日本などに頼る体質を続けているために、世界経済の不透明感が強まる中で、明暗が分かれたといえそうです。

 日本はバブル崩壊後も先進的な技術革新国であったことから、先進技術を必要とする韓国や中国企業を中心に世界に技術を提供することで生き延びることができましたが、今、輸出規制強化で脅威に晒される韓国は、足腰の弱さからパニック状態に陥っています。

 言い方を変えれば、日本が韓国を甘やかし続けてために、自立的発展に切り換える切迫感が失われ、中国は、世界に模範的社会主義モデルを示し、文化的、政治的優越性を世界に認めさせようとする中華思想を持ち、次世代校則通信規格5Gなどで世界市場を独占する勢いです。先進国依存型経済からの脱却に強い意欲を示しています。

 一方、北東アジアの安全保障に何よりも注目しているアメリカは、日本の輸出規制強化で韓国が極端に弱体化すれば、朝鮮半島での立場も弱まり北朝鮮のさらなる台頭が予想されるため、日韓関係の悪化は望んでいないはずです。そのため、完全に日本側に立つ姿勢はとらない可能性が高いと思われます。

 つまり、文在寅政権に一定の圧力を加え、経済の失策を認めさせ、懸案事項である従軍慰安婦や徴用工問題での譲歩を促しながら、日本には、これ以上、韓国を追い込まないようブレーキをかけるかもしれません。足腰の弱い韓国の極端な弱体化は主導権を握りたい北朝鮮の思う壺でもあるからです。

 つまり、文在寅政権周辺に暗躍する北朝鮮工作員が今回の一連のシナリオを描いている可能性も否定できません。それにアメリカは韓国が中国に助けを求め、中国への依存度を増すことは望んでいないはずです。

 ただ、アメリカが韓国に理解を示さない形での介入であれば、韓国国民の屈辱感が強くなり、反米感情も高まるのは必至で、非常に難しい判断が求められているのに事実です。そのため、理想は二国間での解決ですが、韓国への優遇継続は日本の国内世論が許さず、特別支援も困難な日本は、過去にないほどの高度な外交判断を下す必要に迫られているともいえます。

ブログ内関連記事
トランプ米政権のファーウェイ排除 問題の本質はどこにあるのか
泥沼の日韓関係 日本の常識が通じないのは当り前、相手の理解を期待するより伝える力が問われている
先進国仲間入りを自負する韓国は日本の輸出規制で国際的メンツが傷がつくことに怒っている
常軌を逸した文在寅政権の対日姿勢 中朝と共有する固定観念を読み解く