japan-nissan

 われわれは今、世界の工場といわれた中国が、集った知財と膨大な資金を元手に、強力な中国企業を増殖させ、世界支配に乗り出しているというイメージを持っています。この場合、企業は中国共産党と表裏一体だとか、もともと中華思想を持つ華僑を見ても、中国人の強烈なアイデンティティがあるために覇権の匂いがしているとかいわれます。

 フランスの自動車メーカー、ルノーとアライアンス関係にある日産自動車は、マクロン氏が大統領に就任して以来、筆頭株主であるフランス政府が三菱自動車を含めた経営統合を望んでいることを強く警戒しています。すでに資本関係からすればルノーの子会社でしかない日産ですが、日本企業でなくなることには強い拒否反応があります。

 ネット通販最大手のアマゾンが中国市場から今回徹底するのを見て、アメリカ企業が中国市場から撤退すると人々は理解しています。今はGAFMAと呼ばれるグーグル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフト、アップルの世界に支配的な5大企業は、全てアメリカ発、それも多くはシリコンバレーやシアトルが拠点のアメリカ巨大企業と人々は理解しています。

 国際企業、多国籍企業、グローバル企業、トランスナショナル企業など、この30年間にさまざまな呼び名が生れましたが、どの企業にも出自があるものです。その出自には創業以来、産み育ててきた人たちと、特定の市場という「栄養」で成長した経緯があります。そのため、日本人が創業し、日本で最初の成長を遂げれば、日本のアイデンティティが付与されるのは自然なことです。

 その出自によるアイデンティティは、その会社が完全に消滅するまで存在し続け、DNAとして残っています。たとえば、韓国で創業され、世界的企業になったサムソングループは、日本に必死に学んだといわれる韓国人の故李秉抻瓩創業し、韓国市場で育った企業です。

 韓国に批判的な経済アナリストが、サムソンの株所有比率は海外が圧倒的なので韓国企業ではないといいます。しかし、サムソンの企業アイデンティティが消えているわけでもなく、韓国人は韓国企業であると主張するでしょう。

 同じ韓国で創業され、今は日本でSNS分野で成功したLINEの創業者、李海珍(イ・ヘジン)氏の日経ビジネスの2年前のインタビューには興味深いものがありました。韓国で7割以上の検索シェアを誇るネイバーの日本法人だったLINEは、独自の成長を遂げ、2年前には米ニューヨークと東京、2つの証券取引所への同時上場まで果たしました。

 その創業者の李氏は「ネイバーがLINEの株式の約83%を持っているためにLINEは韓国企業」と理解されているが「その理屈でいえば、ネイバーの株式の約6割は外国人投資家によるものですから、ネイバーも、その子会社のLINEも韓国の会社ではない、という結論になってしまいます」と述べています。

 無論、日本では韓国企業のイメージは外交対立に振り回され、いいとはいえないので韓国生まれのIT企業のLINEから韓国イメージを取り去りたいのかもしれません。市場規模の小さい韓国では、国外で成長する企業が多いのも現実です。

 近年では、米IBMがPC部門を中国のノキアに売却し、そのノキアが米携帯端末メーカーのモトローラを買収し、アメリカ企業でなくなっています。むしろ、英国などは外資受入れに積極的で英メーカーは影も形もなくなっている状況です。特に製造業に関しては外国資本に占有されていますが、国も国民も基本受け入れています。

 しかし、その一方で国家のビジネスへの影響も今も絶大です。国家の支援なしに企業も成長できません。英国離脱派は、むしろEUから主権を取り戻した方が経済運営はうまくいくと主張しています。その場合、彼らは外資を排除するつもりはなく、むしろ規制の多いEUの方が外資からの投資を遠ざけていると考えています。

 同じ島国で実力を持つ日本は、独自の発展を遂げた希有な存在ですが、今後のグローバル競争には課題が多いのも事実です。特にビジネスの形でグローバル化の先頭を走るIT企業を見ながら、企業の国家アイデンティティを再考する時期が来ていることを痛感させられます。

ブログ内関連記事
アマゾンの中国ネット通販事業からの撤退 IT系グローバル企業は中国では成功できないのか
革新的技術の流出 外資から中国へではなく中国ユニコーンから外資の時代に
日産自動車と英国政府の駆け引き、ゴーン氏への密約文書公開で今後の展開は?
とうとう出てきた日産・ルノーの経営統合話 日産に逃げられたら困るフランス側の事情