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 儲かるビジネスには大胆に手を出し、儲からないと判断すれば瞬時に撤退する。これが中国人ビジネスマンたちの基本的考え方です。長期戦略より短期決戦が優先され、目の前の利益追求に集中し、そのために盗めるものはできるだけ短期間に手段を選ばず手に入れるのが基本です。

 誰がどの国で考え出した技術やビジネスモデルであるかは関係なく、儲かると思えば、わき目も振らず、中国共産党政府に守られながら、先進国の常識では不当と思われるやり方でノウハウを入手し、自分のものにしてしまうのが中国です。そこには不当という自覚はありません。

 成長を続ける巨大市場を背景に合弁とか合併という耳障りのいいWin Winの大義名分のもとで、多くの外資系企業は飲み込まれ、大手といえども、ノウハウを吸収した中国企業の急成長で、撤退を余儀なくされる時代に入ったわけです。外資の中国市場進出は、それを覚悟で進出するしかありません。

 今月18日、米ネット通販最大手のアマゾン・ドット・コムは、競争が激化する中国の電子商取引市場から撤退することを明らかにしました。アマゾンは中国向けウェブサイトAmazon.cnを通じたサードパーティー向けマーケットプレイスの運営や出品業者向けサービスについて、7月18日をもって停止すると発表しました。

 これで中国企業は、アマゾンのプラットフォームを利用して中国消費者に製品販売することはできなくなります。もともと創業者で最高経営責任者であるジェフ・ペゾス氏は、新興のヘッジファンド、米D.E.ショーでシニア・バイス・プレジデントしていた人物で、中国商人と違い、明確な彼自身のビジネス哲学がありました。

 売れる最小限で通販を開始したアマゾンですが、今はありとあらゆる種類の商品を販売しています。中国市場撤退も充分に考え抜かれた後の決断だったと思われます。実際、米ネット通販各社は、中国市場では長年、苦しんできました。ネット通販のノウハウを短期間で吸収し、急成長した大手中国ネット企業の前に勢いを失っている形です。

 現在、通販市場でアマゾン中国が占めるシェアは、18年10-12月期でわずか6%、逆に中国大手アリババグループ傘下のTモール・グローバルは31.70%、中国ネットイースの通販サイト、コアラのシェアは24.50%ということで、同じビジネスモデルでは勝ち目はないようです。

 米ウォールストリートジャーナルによれば、中国アマゾンは輸入品のネット通販事業について、中国の同業ネットイース(網易)の越境ネット通販プラットフォーム「コアラ」と株式交換方式で統合させることを協議中と報じられています。実現すれば、中国からアマゾン・ドット・コムの名は消えることになります。アマゾンといえども合併という選択なしにビジネス継続は困難ということです。

 アマゾンは発表文で、海外事業やキンドル事業、ウェブサービスを通して引き続き中国に力を入れていくとしていますが、基幹事業からの撤退は明らかです。中国市場参入から15年、進出当初は最大手だったアマゾンは撤退に追い込まれたわけですが、短期激変型のITビジネスのは中国での動きは、中国大手企業にとっても気を抜けない話です。

 皮肉にも儲からないと判断すれば瞬時に撤退する中国ビジネス・スタイルをアマゾンは中国から学んだのかもしれません。即決即断力に欠けるといわれる日本企業も中国で学ぶものがあるでしょう。無論、地道な努力が苦手な中国人が成功し続けるとは、まったく思っていませんが、利益の有無はビジネスの基本の一つであることも間違いありません。

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