Boss-Announce-Angry-Man-Afraid

 日本と韓国は、国や政治レベルでは過去にない深刻な亀裂が生じているように見えますが、国民レベルでは、たとえば日本を訪れる韓国人観光客の数は増え続けています。韓国の政治家や従軍慰安婦、徴用工問題関係者が日本への憎悪を露にする発言をしているのとは対照的現象です。

 中国も今年は安倍政権が関係修復に乗り出していますが、政治的にはギクシャクした関係が続く一方、日本との経済依存度は非常に高く、中国の改革開放政策による経済発展に日本は大きな貢献をしてきた経緯もあります。

 日本を訪れる中国人観光客も多いのに、中国や韓国は、なぜ過去のことをぐずぐず言い続けるのかと日本は困惑状態にあるのが現状です。

 そこで、この問題を異文化理解という観点から見てみると、日本、韓国、中国に共通する文化的要素が潜んでいるように見えます。それはアメリカの文化人類学者、エドワード.T.ホールが唱えた「ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化」という識別法から見て、3つの国は世界的に見ても非常にハイコンテクスト文化の国だということです。

 コンテクスト(文脈)とは、コミュニケーションを構成する言語、価値観、体験、論理、知識、喜怒哀楽の感情、嗜好などを指しており、 日本、韓国、中国は、コンテクストの共有性の高いハイコンテクスト文化で、逆に欧米諸国などはもともと狩猟民族で移動が多く、異なった民族や文化が一国の中に共存するため、コンテクストの共有度は低い社会です。

 このコンテクストが作り出す常識への依存度の高低は、その国のコミュニケーションスタイルに反映されと考えられています。つまり、常識への依存度が高ければ、いちいち言わなくても「以心伝心」「暗黙の了解」で伝わり、常識への依存度が低ければ、丁寧な説明や確認、論理性、ジェスチャーなどが必要になるということです。

 アメリカで、文化の違いを超えたコミュニケーション手段が発達し、結果としてEメール、フェイスブック、ツイッター、インスタグラムなどの文字だけでなく写真や動画なども使えるコミュニケーションツールが発達したのも、アメリカがローコンテクスト社会だからだといわれています。

 当然、コミュニケーションは異文化理解の重要な柱なわけですが、ハイコンテクスト社会では異文化は、せいぜい地方色の違い程度で、国を超えるほどの違いは国内にはありません。アメリカのように子供の時から近所に黒人、白人、ヒスパニック系、アジア系が同居するような環境はありません。

 つまり、ハイコンテクスト文化で育った人間は、違いを理解し合い共通項を探したり、多様性のシナジー効果を発揮するスキルは身についていません。自分にとって当り前のことが隣の人には当り前でないという環境への耐性はなく、同じでないことに苦痛に感じる傾向があります。

 では、ハイコンテクスト文化を持つ国同士では、相互理解は容易かというとまったくそうではありません。なぜなら自分たちが寄って立つ常識が根本的に違うるからです。むしろローコンテクストの国の人同士、あるいはハイコンテクストとローコンテクストの方が違いが明白なので、相互理解は容易な場合もあります。

 ハイコンテクスト同士で相手を理解するためには、相手が寄って立つ常識を理解するのが早道ですが、簡単ではありません。たとえば最近、韓国に40年以上住む日本人に会いましたが「40年間気づかなかったことに最近気づかされ、なぜ気づかなかったのか思っている」といっていました。

 その日本人に韓国がどうして従軍慰安婦や徴用工問題を蒸し返しているのか聞くと「それは50年前の日韓関係と今の両国の立場が違っているからで、54年前、韓国は不利な立場で日韓基本条約を結ばさせられたという思いが強いからだ」といっていました。

 日本は国際条約は時代の変化とは関係なく遵守すべきものと主張していますが、韓国はそうはいかないと主張しているわけです。日本も韓国の論理でいえば、日本が対象国である国連憲章の敵国条項で「敵国条項に該当する国が起こした紛争に対して、自由に軍事制裁を課す事が容認される」とされていますが、この認識は今の日本には不当です。

 通常は話し合いによって調整すべきことを、いきなり条約を無視して強硬手段に出る態度に日本は困惑しているわけですが、この「いきなり」という印象を与える部分が、ハイコンテクストならではともいえるものです。なぜなら韓国内で共有する認識は、海外でも通用すると思い込んでいるからです。

 ハイコンテクストでは、論理的に丁寧に粘り強く説明して相手に理解してもらう努力はあまりしません。ハイコンテクスト同士では、互いの認識の違いは、ぶつかるまで表面化しない場合が多く、ぶつかると感情的になって修復が難しくなり、さらに相互理解は遠のきます。これはビジネス交渉の世界でも同じです。

 そのため、唐突に見える相手の主張には感情を抑え、相手の意図を正確に知る努力が必要です。それも日頃からコミュニケーションを密にとって置くことが重要で、その機会にこちらの認識や寄って立つ常識、思いを丁寧に伝えておく必要があります。

ブログ内関連記事
異文化に対する事前知識は固定観念を生むリスクを排除すれば大いに役に立つ
常軌を逸した文在寅政権の対日姿勢 中朝と共有する固定観念を読み解く
繰り返されるネガティブニュースによる固定観念の醸成が世界を分断し、異文化理解を困難にする
グローバルビジネスの鍵を握る双方向のフィードバックの重要性