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 東京を拠点に障害者の自立や社会参加をサポートするパンの製造・販売などを手掛けるスワンが新年早々の7日、ベトナムに同社としては初の海外フランチャイズ店「スワンカフェ&ベーカリー」を2店舗を同時にオープンしたそうです。同社はヤマトホールディングスの特例子会社です。

 国の後押しもあり、企業が障害者雇用などの自立支援を行う例は少なくありませんが、独自に海外展開する例は非常に珍しい。オープンしたのは、ホーチミン市1区グエンチャイ通りの「グエンチャイ店」と同区レロイ通りの「レロイ店」の2店舗で。両店はそれぞれ店舗面積が153平方メートルと71平方メートルで、ビジネスの行方も注目されます。

 もともと今回のプロジェクトは、ヤマトグループが地元ベトナムで配達・配送サービスを展開する365トレーディング・ロジスティクスと合弁会社を設立した当初からの話のようです。365トレーディングのディン・ヴィン・クォン社長が日本のスワンベーカリーを訪問し、経営理念に共感したことから、ヤマトがベトナムでの開業のオファーを受けたことで始まったそうだ。

 現在、販売するパンの原料はすべて日本から輸入、オープンに先立ち、「アンデルセン」や「リトルマーメイド」を展開するタカキベーカリーが当地で技術指導を行ったそうです。スワンは、地場365トレーディング・ロジスティクスと加盟店契約を締結しており、2月をめどにパンのデリバリー販売も開始する予定だといいます。

 開店セレモニーには、懐かしい「ベトちゃんドクちゃん」として親しまれた結合双生児で、日本で分離手術を受けたグエン・ドクさんも出席し挨拶しています。ヤマトグループの特例会社スワンは、日本国内では1998年に銀座に1号店をオープンし、障害者の雇用の場の提供と経済的自立、社会参加の支援で20年の実績がある。

 現在、日本国内には直営店4店舗と加盟店が23店舗あり、合わせて350人以上の障害者を雇用している社会貢献型ビジネスですが、365トレーディングも、ベトナムで障害を持つ子どもたちへの奨学金給付や同グループが経営するベトナム料理レストランで貧しい人々に昼食を提供する支援などを実施してきた実績があります。

 スワンのベトナム店によると、2020年までにホーチミン市を中心に10店舗に拡大する目標を立てており、もともと障害児童や社会的弱者支援に取り組んできた365トレーディングとしては、今後も障害者や教育・就職の機会がなかった人たちの雇用を促進する方針だといいます。

 若者人口比率の高いベトナムでは、若者文化が町のあちこちで見られ、若者受けするカフェはすでに激戦状態に入りつつあります。パンの文化も若者には非常に魅力的で、そんな状況も後押しになると考えられます。

 ベトナムは戦争を乗り越え、若い世代が将来に向かって驚くほど積極的姿勢を持つ一方、その貧しさから障害者や教育機会に恵まれない人も多く、彼らの支援が社会的課題といわれています。安価な労働力を求めて製造業中心に進出してきた日本企業は今、国・地域別にみた場合、ベトナムの外国直接投資(FDI)で2017年、18年と2年連続で首位となっています。

 それも近年、製造拠点としてだけでなく、内需に焦点を当てた卸・小売業やサービス業など非製造部門の投資が拡大しており、地元の経済成長にも寄与しています。ホーチミンに住む私の友人のベトナム人もスワンの人道主義、社会貢献型ビジネスモデルは地元で好感を持たれているといっており、知名度を増すのが課題と指摘しています。

 海外進出モデルとしては非常に特殊ですが、ベトナムの社会的、文化的土壌にもマッチしたビジネスモデルでもあり、今後の成長が期待されるところです。

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