top-ceos-pay1
    2016年のアメリカのCEOの年俸トップ10 トップは100億円 出展 The associated press

 日産自動車のゴーン会長の所得隠しの金額は、毎日のように増えている感があります。その額は100億を超えるかもしれません。そこで思い出すのは2008年の金融危機で倒産した米リーマン・ブラザーズのCEO、リチャード・ファルド・ジュニア氏が退職金パッケージとして、2億9900万ドル(当時のレートで約200億円超)を受け取ったとの噂が流れたことです。

 会社が倒産し、最後のトップや役員らが超高額の退職金を得ていたことで、企業役員の高額報酬が欧米先進国で問題になりました。世界中の国々で当時、リーマンショックによる金融機関や保険会社の倒産を避けるため、莫大な公的資金が投入される中での出来事でした。

 ゴーン会長は自分の報酬に対する日本やフランスの批判に対して「グローバルスタンダードからすれば、けっして高い報酬ではない」と明言していました。それでもあまりに突出した報酬は、社員やその国の社会常識から理解を得られないと判断し、別の方法で報酬を得る道を模索し、法律専門家のアメリカ人のケリー同社執行役員が協力したと思われています。

 会社が莫大な利益を得て、株価も上昇し、企業価値が上がることに貢献した場合、それを主導したリーダー個人に対して、その貢献度に見合った高額報酬を与えるという発想は、組織のチームプレー重視の日本の文化にはなかったものです。

 しかし、世界的に見れば、日本は特殊で、多くの国では、個人にインセンティブが集中して与えられるのが常識。青色発光ダイオードでノーベル賞を受賞した中村修二氏が、勤務先だった日亜化学工業と報酬をめぐり争ったのも、会社がその発見で莫大な利益を得たとしても、その技術は従業員1人がもたらしたものではないという考え方を不満としたからでした。

 ゴーン氏が見ている世界は、世界の富豪が行き交うグローバルスタンダードの世界なので、日産への貢献度を考えれば、安い報酬という理屈になるわけですが、日本の企業文化は創業者でない限り、雇われ社長に法外の報酬を与えるわけにはいかないため、ゴーン氏は裏技を模索したと思われます。

 無論、フランスでもゴーン氏が日産、ルノー、三菱3社から受け取る高額報酬に疑問を抱く声はありますが、それはフランスがアングロサクソン主導の金融資本主義に批判的だからという側面もあります。金融資本主義の原則からすれば、ストックオプションを含め、会社の功労者は高額報酬を得るのは当然とされ、その限度に規定はありません。

 ただ、アメリカの富裕層には、人道団体などに寄付をする慣習があり、ある程度、貧困層や社会的弱者に循環する側面もありますが、それ以上に富裕層が必要とするラグジュアリーサービスのために新たな産業が生まれ、雇用が増えるということを正当化しているのがアメリカです。

 優秀で腕利きのゴーン氏のような人材を日本企業が雇おうと思えば、日本の常識を超えた報酬を出さない限り、来てはくれません。それに彼らが日本で結果を出せるかも不明です。ただ、ゴーン氏が、かりにルーツを持つレバノンに人道支援金を出し続けていたとすれば、高額報酬への何らかの理解を得られるかもしれません。

 今は、宗教性も寄付の文化もゼロの中国の富裕層が登場し、その贅沢ぶりを見せつけていますが、人間の欲望に限りはありません。グローバルスタンダードといいますが、様々な側面から議論する必要がありそうです。

ブログ内関連記事
沢山の危険なエアーポケットが潜むグローバルビジネス 天国と地獄は紙一重
ゴールは働かずして稼ぐ段階に入ること 金が金を生む貴族文化とは
格差社会と階層社会の違いは?(3)
格差社会と階層社会の違いは?(2)