6日に投開票された米中間選挙は、最近では珍しく世論調査の予想とほぼ同じ結果でした。上院で共和党が過半数を維持したことも、トランプ大統領が選挙終盤で自分の選挙のように精力的に遊説を繰り返したにも関わらず、民主党が下院の過半数を奪還したのも、大筋で予想通りだったといえます。

 この結果に対して、議会の「ねじれ」から、今後、トランプ大統領の求心力が急速に失われ、民主党が過半数を制した下院では、大統領弾劾に向けた動きが加速するなどトランプ政権へのネガティブな予測がメディアから大量に流されています。しかし、果たしてトランプ政権は弱体化するのでしょうか。

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 今回の中間選挙は、アメリカ国内で過去にない高い投票率を記録し、その関心の高さを示しただけでなく、世界中がトランプ政権への信任を問う選挙と位置づけ、注目しました。結果の分析はこれからですが、まずは、民主党の下院での勝利は、史上初の100人を超える女性議員の存在が大きかった。2016年の大統領選で女性候補のクリントン氏が落選したリベンジともいえます。

 さらトランプ氏への憎悪を中心に据えた民主党の戦略で、民主党の政策への支持より、トランプ政権の求心力を削ぐ目的で投票所に足を運んだ有権者が多かったことも無視できないでしょう。ただ、大統領への信任を問う性格の強い中間選挙で「不信任の意見が強くなりがちなのは、歴代政権でもみられた現象で、トランプ氏に限った話ではない」と米CNNは分析しています。

 一方、下院での共和党の敗北には、今回の中間選挙で、多数の共和党現職議員が引退表明し、知名度の低い新人候補で戦わざるを得なかったという事情も無視できないでしょう。逆に民主党は、同時に行われた知事選で、フロリダ州初の黒人知事を目指したギラム氏やジョージア州で米国初の黒人女性知事を目指したエイブラムス氏と、テキサス州上院選のオルーク氏など期待の新星が全敗しました。

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は「トランプ米大統領が進める通商協定の見直しや規制緩和は難航するとみられている」と指摘し、「大きな法改正はもうない見通し」「追加減税やビジネス絡みの政策変更はないだろう」と予想しながらも「トランプ政権下で成立した法律が変更されることもない」との見方を示しています。

 一方、これまでトランプ政権にとって最も大きな実績ともいわれる企業の減税措置による景気浮揚も、財政赤字が膨らむことの方を懸念する民主党が、増税を主張する公算が強く「昨年成立した個人減税の恒久化に向けた動きも、阻止する構えだ」と予想しています。
 しかし、WSJは「民主党はトランプ氏を引き立てる敵になり、トランプ氏は政策が失敗した場合、同党を非難することができる。特に、景気が落ち込んだ場合には言い訳に使える。安定した経済成長が何年も続いていたため景気後退の可能性はある」と、今回の結果は民主党の下院での勝利がポジティブには働く可能性も指摘しています。

 個人的には、今回の選挙がもたらした「ねじれ」は、アメリカの政治文化の中では健全な状況と私は見ています。物事を決定するプロセスとして、違いを明確化することで客観性が生まれ、その中から、より正しい結論と方向を見出していくのは、多様性を強みとするアメリカの民主主義文化そのものだからです。

 今後は、物議を醸すトランプ氏の打ち出す政策を民主党が正面切って反対することで、トランプ氏の政策の中身が、さらに国民に分かりやすくなる可能性もあります。

 それに共和党は下院で過半数を失ったことで、より一体化する可能性もあるでしょう。上下両院で過半数を持っていたことで緊張感がなくなり、傲慢になり、トランプ氏に反発する議員も多かった状況は少なくなる可能性があります。これもトランプ氏には有利です。

 さらに気になる対日政策を含めたアメリカ外交政策への影響は、大きな変更はないでしょう。アメリカ以外の国は、外交・通商への影響を懸念しているわけですが、対中、対露、対北朝鮮外交を含め、民主党が極端な反対意見を持っているとはいえず、アメリカ第1主義は今後も継続するのは確かでしょう。

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