Bregancon
 フランス大統領の別荘のあるブレガンソン

 9月のフランスでは、学校は新学年が始まり、大人は夏の長期ヴァカンス明けで仕事が再始動する時です。そのため会社内では、ヴァカンスでどこに行ったかが話題になり、女性は日本と違い、南フランスやスペインなどのビーチで焼いた小麦色の肌を自慢する光景が見られます。

 ただ、9月はリゾート地のホテルやコテージの値段が下がるので、8月は働いて9月に3週間のヴァカンスを取るフランス人も増えています。とにかく、9月のオフィスでの話題はヴァカンスです。日系企業のパリ支店で働く日本人とフランス人の同僚の間で、ヴァカンスが話題になり、フランス人に呆れられたという話はよく聞きます。

 理由は日本人はヴァカンス先でも観光名所を巡り、忙しく動き回り、タイトなスケジュールをこなしている例が多いからです。せっかくお金と時間を掛けていくヴァカンスだから、その元を取るために、しっかり計画を立て、世界遺産や美術館を周り、無駄のない充実した時を過ごそうというわけです。

 逆にフランス人は、行った先で何もしない時間をたっぷり過ごすことが休養だと考えているので、ヴァカンス先で忙しくするなど問題外です。非日常効果が休養をもたらすという考えは日本人もフランス人も変わりませんが、フランス人の多くは、ヴァカンス先のビーチで観光することなく、1日中、日光浴して本でも読みながら過ごすスタイルが一般的です。

 あとはスポーツです。最近は海のスポーツだけでなく、山間部のトレッキングも盛んです。行った先でサイクリングで移動し、宿泊施設を泊まり歩くなどという過ごし方もあります。無論、ヴァカンスで日本に行くフランス人は、結構タイトなスケジュールで動いていますが、疲れ果てるまで動き回るというわけではありません。

 某日系企業の日本人駐在員家庭は、8月のヴァカンスでヨーロッパ5か国を回ったそうで、その話を聞いたフランス人はあきれられたそうです。しかし、そういうフランス人も、私が知る30年の間に大きく変わったと感じます。たとえば10年前までは、ヴァカンス先にPCを持っていく人は少なく、携帯電話は持っていても、電源を切っている人もいました。

 ところが、今ではビーチで寝ころびながらも、スマホを1日中いじっている人は急増しています。仕事が断ち切れずにPCに触っている人も見かけます。以前にはありえない光景が今はある。かつては働かないことを自慢していたフランス人が、結構、ヴァカンス先でも仕事の話をしている。

 ライフワークバランスを重視し、生活の質向上に意識が集中する今のフランス人の労働観は、日本人とはかなり違います。忙しいことは悪いことと考えるのも日本人とはま逆です。それは一朝一夕に出来上がったものではないのも確かで、農牧業従事者が多かったフランスでは、3週間、4週間の長期休暇など考えらえなかった過去もある。

 そのフランス人も今では、働くことへの考え方が少しずつ変化し、社会保障に頼る社会主義的な考えは薄れ、週労働35時間制も形骸化しています。努力する者が報われる社会へと向かっているという点では、日本に近づいているのかもしれません。

 逆に日本人は働きすぎでライフワークバランスを取り戻すことが課題です。ライフワークバランスを重視する社会は女性の存在感が強い。日本は逆に世界1といわれる男性中心社会を脱却する必要があるということで、日本人が想像もできないフランス人のヴァカンスの過ごし方に学ぶものがあるように思います。

 27年前、フランスで生活し始めて不便だったのが、日曜日に全てのお店が閉まることでした。しかし、考えてみれば、日曜営業すれば家族や友人の中に日曜日に働く人がいるということで、一緒に過ごすことはできません。いつしか、いい習慣だと思えるようになりました。

 イタリアでは、解禁された日曜営業をもとに戻すべきという意見が出ています。日曜営業の経済効果が絶大ですが、家族や友人と過ごせない人が出てくるのは問題です。ヴァカンスや週末の休みは、リフレッシュやリセットの意味もあり、仕事の効率化にも欠かせないものです。

 フランス人はたっぷり休んでいるのでいつも元気です。だから、日本人は、日本人が知らないフランス人の週末やヴァカンスの過ごし方から学ぶものがあり、休み過ぎのフランス人は、もう少し仕事のやり甲斐を学ぶべきかもしれません。


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