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 世界中に存在する優れたビジネス・リーダーには、さまざまな仕事の仕方、ライフスタイルがあるものですが、現在、世界一の富豪といわれる米アマゾン・ドット・コムのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の「1日3つの良き決断ができるよう心がけている」との言葉は示唆に富んでいます。

 米首都ワシントンのエコノミック・クラブが13日主催したイベントで、約1400人の聴衆を前に語ったベゾス氏の講演内容を米ウォールストリートジャーナルが紹介していますが、彼はまず、朝10時前には会議の予定を決して入れないようにしているといいます。
 「早寝早起きして、朝はのんびり動き回るのが好き」と語るベゾス氏は「新聞を読み、コーヒーを飲んで子供と朝食を共にすることを好む」からだそうです。さらに「夕方5時までには帰宅の途に就くようにしている」というのも、日本の経営者では考えられないことかもしれません。

 そういえば、自動車メーカーの日産・ルノーを率いるカルロス・ゴーン氏はま逆で、日産のCEOに就任する前から、セブン・イレブンというニックネームがあったそうです。朝7時には出社し、夜11時までオフィスにいるほどのハードワーカースタイルは、日本人にはぴったりだったのかもしれません。

 しかし、なぜ、べジス氏が朝をゆっくり過ごし、夕方5時には帰宅する生活をしているのかというと、その理由は、経営幹部の優先する仕事は、限られた数の質の高い決断を下すことにあるからだと説明しています。彼はなんと、そのために8時間の睡眠時間をとっているそうです。

 「より良く思考でき、エネルギーも高まり、気分もよくなる」というわけです。そしてベジス氏は「1日に3つの良き決断を下せれば、それで十分だ」といい、「とにかく自分にとって可能な限り質の高いものでなければならない」と語っています。

 今や50万人以上の従業員を抱えるほどの巨大企業アマゾンは最近、アメリカ企業としてアップルに次ぐ2番目の時価総額1兆ドル超えを達成し、ベゾス氏自身は世界一の富豪に躍り出ました。自宅のガレージで始めたオンライン書籍販売が巨万の富をもたらしたサクセスストーリーです。そんなアメリカンドリームの体現者であるベゾス氏は、世界一の富豪になりたいと思ったことはないといいます。

 ベゾス氏は自社の株価についても、短期的な株価の上げ下げに一喜一憂するのは時間の浪費だと社員には教示しているそうだ。つまり、本当の企業価値は長期的評価で得られるものという哲学です。

 トップダウンなアメリカ型の意思決定は、コンセンサス重視の合議制の日本型意思決定スタイルとは違い、リーダーに対する考え方もかなり違います。だからといって中央集権的なフランスなどとも異質です。ベゾス氏がいう「決断」は、経営判断を下すものですが、適切な判断を下すには、常にリフレッシュされた脳が必要です。

 アメリカの強みは、歴史がないために過去や常識にこだわらず、過去の成功に寄り掛かることなく、純粋に今の現実に向き合う姿勢を持ち続けていることです。ベゾス氏は「いかにスタートアップ精神を維持するかを大切にしたい」「大企業ではあるけれど、小さな会社のような心と精神を保ちたい」と語っています。

 良き決断のために柔軟で自由な思考、ビジネス的直感を研ぎ澄ますためには、日々の仕事に忙殺され、長時間働くことは妨げになるという話は興味深いものがあります。先行きが見通せない今の世界を前に正しい経営判断を下すことは容易なことではありません。その意味でもベゾス氏のライフスタイルは富豪の余裕に見えるかもしれませんが、重要な意味を含んでいます。

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