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 今から20年ほど前、サマータイム(夏時間)に切り替わる日をど忘れし、大きな失敗をたことがあります。時間が切り替わる日の翌日の取材のため、パリ・ドゴール空港からロンドン・ヒースロー空港に移動するはずが、時間が1時間ズレたことに気づかず、予約した飛行機に乗り遅れたことがありました。

 確かに5月位から10月まで、ヨーロッパは夜の9時でも昼間のように明るいので、時間をズラす気候的理由はあると思います。しかし、育った環境にサマータイムで年に2回、時間をズラす習慣のない日本人などは、戸惑うことも多いといえます。

 何度か、子供から日曜日の朝、「パパ、今日から1時間早くなっているの知らないの?」などといわれたこともあります。今、欧州連合(EU)は、サマータイムの廃止の是非を本格的に検討しており、今月16日には、加盟28か国のEU市民を対象にした約1カ月間の意見募集が締め切られました。

 EU執行機関の欧州委員会は、今回のアンケート調査で集った件数は460万件に登り過去最高で、全ての加盟国から意見が寄せられたそうです。今後、調査結果を分析し、廃止するかどうか本格的な検討に入るとしています。

 議論のきっかけは、加盟国フィンランドが今年初めにサマータイムは「利益よりも不利益が大きい」などと主張し廃止を提案したからで、2月の欧州議会で審議され、まずは夏時間のメリット、デメリットを徹底的検証し、改正が必要な場合は本格的に検討することを採択しました。

 検討の一貫として、欧州委はEU市民に直接、意見聴取を行うことを決め、今回実施したわけで、詳しい分析はこれからとなります。近年、EUが採用しているサマータイム制度で時間が変更されるのは、健康や睡眠に悪影響があるという研究結果も報告されており、関心が高まっているのは事実です。
 私の周辺で意見を聞くと、北に行くほど廃止支持者が多いと感じます。ドイツで行われた最新の世論調査では74%が廃止を望んだといわえていますが、友人のドイツ人の多くは「時間を変える合理性はない」「毎回、ビジネスのシステム変更をする労力は無駄」などといっています。

 50%強が廃止を支持しているといわれるフランスの友人は「時間を変えれば、夏の間夕方からの時間が長くなるので消費が伸びるなどという考えは、長時間労働が当たり前の時代の遺物で、今は消費に影響しているとは思えない」などといっています。

 逆にいえば、サマータイム維持派は、単にオイルショック以降の1970年代に導入された習慣を変えたくないというだけで、説得力のある意見が少ないといえます。逆に廃止派は、健康被害だけでなく、EU域外との交流が圧倒的に増えているグローバル時代、その不便さを指摘する声も増えています。

 日系企業も日本本社との間で、サマータイムのない日本とのやりとりで、1年に2度時間を変える必要があり、金融などは大幅なシステム変更が必要です。ただでさえ時差があるのに、さらに時間変更が加わる不便さは効率性を損なっていると感じるビジネスマンも少なくありません。

 私のように交通機関で時間変更に気付かず、失敗した経験を持つ人は、ヨーロッパ人にはいないかもしれませんが、時間が変わることの影響は非常に広範囲に渡ります。そのため明るさの問題ではなく、日常生活からビジネス、公共サービスに至るまでメリットがないと判断されれば、廃止はスピーディーに行われるだろうと複数のメディア予想しています。

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