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    6000年の歴史を持つといわれるルーマニア・ワイン

 アメリカとの貿易摩擦のエスカレートが懸念される欧州連合(EU)では、日本との日EU経済連携協定(EPA)への期待が高まっています。それに伴い、中国や東南アジアに集中していた日系企業の関心が中・東欧地域に向き始めているとの指摘もあります。それを物語るのがルーマニアで7月9日に開催されたEPAフォーラムでした。

 これまでもルーマニアでは日系自動車メーカーなどが生産拠点を置くなど、冷戦以降、投資を拡大させてきましたが、頭打ちの感もありました。中・東欧地域が日本に熱いまなざしを向けているのには、英国のEU離脱やこの数年、中東からの大量に流入した難民・移民の影響もあります。

 ブレグジットの理由の一つだった移民問題で、ポーランドやルーマニアからの移民労働者問題は英国人に強い懸念を抱かせたのは事実です。人と物の移動の自由が2013年以降、中・東欧加盟国にも解禁となったことで、職を求めてEU内の豊かな国に移動する現象は止まらない状況です。ルーマニアはそれ以前でも英国にに住むルーマニア移民が多額の送金を自国に行っていたことがニュースになっていました。

 ところが、その大きな受け皿となっていた英国が門戸を閉ざす方向にあることは、中・東欧諸国にとって重大な転機となっています。それにこの数年、大量の難民・移民が中東地域から流入し、特に難民認定を受けた人々への支援拡大で、彼らが中・東欧から働きに来ている人々の職場を奪っている実態もあります。

 日本側にしてみても、環太平洋パートナーシップ協定(TTP)と並び、EPAは自由貿易と透明性の高いルール形成の重要性を世界に示す機会としたいという立場です。EU側は来年の欧州議会選挙を控え、早期の発効をめざしています。

 ルーマニアでは日系企業進出に向け、インフラ整備が課題とされていますが、日本への輸出拡大に大きな期待を寄せています。たとえば、今月14日には、日本ルーマニアビジネス協会と在日ルーマニア大使館が年4回行っている「ルーマニア、ワインの国」というセミナーが日本で開催されたばかりです。

 6000年のワインの歴史を持つといわれるルーマニア・ワインの売りは、恵まれた土壌と気候、工業化で汚染されていない自然の中で、歴史が培ったワイン製造技術を持つことです。また、ルーマニアは EU最大の蜂蜜生産国で、ルーマニアはヨーロッパ最後の原生林であるアカシアや菩提樹の森が広大な国土に拡がっています。

 また、豊かな材木資源を生かし、家具生産国としても知られ、隣国イタリアからの受注の長い歴史を持っています。約25年前には私の日本人の友人が家具ビジネスのためにパリからブカレストに移動しています。ルーマニアは天然資源恵まれ、石油、木材、天然ガス、石炭、鉄鉱石、及び塩の埋蔵、ならびに水力発電のための施設が多くある一方、外国からの投資不足が課題になっています。

 治安の改善も指摘され、親しみやすい人柄から、進出した日系企業の満足感は高いといえます。しかし、中・東欧への日系企業の進出規模は、西ヨーロッパの3分の1以下しかなく、今後の拡大が期待されています。

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