Global_Peace_Index.svg

 グローバル化が進む中、新たな生産拠点や市場を求め、これまで以上に途上国や危険な地域へ出張、赴任する例が増えています。毎年、世界の国ごとの平和度を指数化し、発表している経済平和研究所(Institute for Economics and Peace)の「世界平和指標」のデータでも、危険な国トップ30位以内に日本企業が進出していることが分かります。

 2018年版の「世界平和指標」Global Peace Index 2018では、世界163カ国を対象にした調査で、平和指数がワースト1位は内戦の続くシリアですが、ワースト30位に入る国に、すでに日本企業が本格参入している場合があります。たとえば、ロシアはワースト10位、トルコ15位、メキシコ24位、フィリピン27位、インド28位などです。

 フィリピンは日本企業との関係の歴史は長く、ロシアやインドは日本企業が最も投資を拡大させている国です。この指標でワースト30位までの国は、アフリカ、中東、中南米に多いわけですが、たとえば、ワースト16位のアフリカ・ナイジェリアは、発展するアフリカの中で最もポテンシャルが高い国の一つといわれていますが、危険度指数は非常に高い国です。

 一方、日本企業が大挙して進出している中国は、ワースト51位、タイは50位で、けっして平和で安全な国とはいえません。無論、地域によって危険度には大きな違いがあるのも事実ですが。

 ちなみに平和指数が高いのは、上からアイスランド、ニュージーランド、オーストリア、ポルトガル、デンマークで、日本は経済規模の大きな国では最も高い9位でした。上位はほとんど欧米先進国ですが、シンガポール8位、ブータン19位、マレーシア25位まど30位内にアジアの国も数カ国入っています。

 同研究所は「世界テロリズム指標」Global Terrorism Index 2017も公表しており、イラク、アフガニスタン、ナイジェリア、シリア、パキスタンなどが上位を占めている他、トルコ9位、フィリピン12位、タイ16位、フランス23位など、日本と深い経済関係を持つ国も30位内にランクインしています。

 特にタイは現在、5,000社以上の日本企業が進出し、駐在員天国といわれるほど、住みやすさで人気のある国です。しかし、2015年8月には、タイの首都バンコクのBTS チットロム駅間のヒンドゥー教寺院エラワン廟などで2回に渡って爆発テロ事件発生し、死者20人、負傷者125人(邦人男性1名含む)の被害者を出しています。

 治安の悪い国に行く場合は、まず国の政治・経済状況の変化、対日関係を注意深く継続的に情報収集が必要です。さらにリスクへの対処でその国の政治家や影響力のある人物とのネットワークを作っておくことも重要です。また、日本大使館、ジェトロなどの政府出先機関との連絡体制、本社と現地支社の緊急時対応の体制づくりも必要です。

 実は欧米企業の中には危険度の高い国に進出した場合、リスク分析や対応を決定する安全対策マニュアルの作成だけでなく、専任のリスクマネジャーを置いているケースもあります。一方、危機が起きた場合に複数の日系企業が連携して、国に働きかけることも効果的ですし、派遣した邦人社員とその家族の安全対策教育や安全マニュアルづくりも必要です。

 しかし、基本は個人個人のリスクマネジメントスキル向上にあります。頭でどんなに分かっていても、実践できなければ意味がありません。日本があまりにも安全なために、日頃から訓練されていない面もあるので、特別なマインドセットと自分を守るための知識や方法の習得が必要です。

ブログ内関連記事
パリ刃物襲撃テロ 毎年ラマダンを前後して世界でテロが頻発している理由
バングラデシュ人質事件と異文化理解
予想されるグローバルクライシスには指揮官が鍵になる