facebook-959060_640

 アメリカのウォールストリートジャーナルなどのメディアが5日に報じた会員制交流サイト(SNS)最大手の米フェイスブックが、少なくとも中国エレクトロニクス企業4社とデータ共有で提携していた事実は、重く受け止められるべき問題です。

 同時にその原因が彼らの認識の甘さや幼さからのものなのか、それとももっと危険な思想が背後にあるのか考えさせられるものがあります。少なくとも冷戦時代を知らない世代が経営の中心に立っていることを思い起こさせる出来事でした。

 アメリカ政府当局は、フェイスブックがデータ共有で提携してきた、たとえば華為技術(ファーウェイ)の製品は、中国政府によるスパイ活動の道具になり得ると見ているとしています。さらにパソコン世界最大手レノボ・グループ、スマートフォンメーカーの広東欧珀移動通信(OPPO)、総合電機メーカーのTCLの名が挙がっています。

 ファーウェイは元人民解放軍所属の軍事技術関係者によって創業され、米当局は彼らのスマホなどの情報端末に情報収集のためのバックドアが仕込まれているとして、政府機関での使用に注意喚起した経緯があります。他の3社も中国政府の情報戦略に組み込まれている可能性を何度も指摘されている。

 フェイスブックの広報担当者は、同社サービス拡大のため2007年から通信機器メーカーと約60件の提携を結んでおり、今回明らかになった4件もその一部だったとし、それらの提携の半分超は5日までに終了したと説明しています。

 また、フェイスブックの幹部は、フェイスブックユーザーのデータがファーウェイのサーバーに保存されたことはないと言明しているようですが、確認の術はありません。

 フェイスブックでは、今年4月初め、英政治コンサルタントのデータ分析会社、ケンブリッジ・アナリティカ(すでに事件後倒産)がフェイスブックに仕込んだアプリを通じて、世界のフェイスブックユーザーの個人情報を最大で8,700万人分以上、不正取得していたことが発覚しました。

 この個人情報が、アメリカのみならず、世界の大統領選や総選挙に利用された疑いが浮上し、フェイスブックのザッカバーグ最高経営責任者は、米議会公聴会で企業のデータ使用と保護についての認識が甘かったことを認め、欧州連合(EU)にも呼ばれ、改善を約束したばかりでした。

 ウォールストリートジャーナルのハイテク担当のコラムニスト、クリストファー・ミムズ氏は「フェイスブックが反トラスト法(独禁法)当局によって、傘下のインスタグラムとワッツアップの売却を強いられる可能性もありうる」と指摘しています。

 実際、フェイスブック、グーグルの親会社アルファベット、アマゾン・ドット・コムなどが、IT系サービスの新たなカテゴリーの独占企業になりつつあり、結果的に彼らの資金力に物をいわせた市場支配が、イノベーション(技術革新)や競争にマイナスに働く事態が訪れているという指摘もあります。

 それほどまでに巨大化している企業、それも人間にとって最も重要なコミュニケーション手段の提供者が、情報管理のリスクマネージメントで問題を抱えていることは深刻です。そこにはITハイテク技術で「世界を根底から変える」という安易なリベラズムも見え隠れし、その危険性は放置できないものがあります。

 事実、フェイスブックユーザーからの大量の個人情報流出事件後も、フェイスブックで働く社員の士気には影響しておらず、相変わらず働いてみたい憧れの企業であり続けているという報告もある。若者には、政治や中国の覇権主義などはどうでもいいという空気があるようです。

ブログ内関連記事
フェイスブック個人情報流出疑惑の英政治コンサル会社破産の背景
フェイスブック個人情報流出8,700万人の大半は米国内、アジアではフィリピン
IT系企業のお気軽「世界を変えたい」が世界を破滅させる