2013-02-1192282312
ロイヤルウエディングが行われたウインザー城の聖ジョージチャペル

 5月19日に英国チャールズ皇太子の次男、ヘンリー王子とアメリカ人女優メーガン・マークルさんの結婚式が、ロンドン近郊のウィンザー城で執り行われ、世界が注目しました。特にアメリカのメディアの注目度は高く、ABCやCNNなど主要メディアのメインキャスターたちが大挙して現地入りし報道しました。

 今回のロイヤルウエディングには、通常にはない二つの重要な要素がありました。一つはアフリカ系アメリカ人の血を引くマークルさんへの配慮。アフリカ系ということで、さまざまな場面で黒人が登場し、そこまで配慮するのかという印象さえあったことです。

 その流れで、アメリカ聖公会のアフリカ系のマイケル・ブルース・カリー総裁主教がメインの説教を行ったことです。とても感情の籠もった、しかし、長すぎる説教に接し、苦笑する参列者は少なくありませんでしたが、インパクトは十分でした。無論、新婚夫婦の心に届いたかは極めて疑問ですが。

 「アメリカ」、「黒人」という異文化を受け入れた英王室の懐の深さが、今回のロイヤルウエディングを特徴づけたことは明白だと思います。

 もう一つの重要な点は、カリー主教のスピーチに象徴されるように、英国国教会の宗教理念を式で明確にした点です。単なる形式ではなく、このウエディングには神が関与していることを強調し、確認する場だったというのが私の印象です。

 エリザベス女王は、孫のヘンリー王子がアフリカ系アメリカ人のマークルさんと結婚することに対して、式で英国国教会が持つ宗教的理念を2人に徹底させることにこだわったといわれます。ダイアナ元妃の事故死への対応で失敗し、王室存亡の危機に陥った女王は、ウイリアム王子が民間人と結婚することを認め、今回はアフリカ系アメリカ人を受け入れました。

 しかし、女王にとって最後の砦は信仰であり、英国国教会、ひいては世界の聖公会の頂点に君臨する女王としては、今後、英王室にさまざまな人種、国籍を持つ人間が入ってきたとしても、英国の精神的支柱である英国国教会の信仰の火だけは絶やすまいというこだわりが見えた気がします。

 英国は今、ブレグジットで明るいニュースがなく、国民は不安に満ちています。かつての大英帝国を取り巻く環境とは、あまりにも世界は変化してしまい、英国の威厳ある孤立主義は助からない可能性もあります。エリザベス女王でさえ、ブレグジットの決定に不快感を示したほどでした。

 そんな中のロイヤルウエディングは、最初は白人王室にとっては一見暗雲のように思われましたが、英王室の新しい時代を開く要素を発見し、式に望んだという印象です。しかし、多様性を受け入れる一方で英国の伝統的価値だけは守りたいという必死な姿勢がエリザベス女王からはにじみ出ていたようにも見えました。
 
 英国の友人でケンブリッジとオックスフォードの二つの大学の学位を持つロンドンの有名なパブリックスクールでラテン語を教えるジョージは「英国の持つ普遍的価値観を世界に示す必要がますます高まっている」と語っている。彼のような英国の超保守主義者たちは、エリザベス女王の葛藤と選択に深い敬意を抱いているようです。

 アメリカとの「特別な関係」を維持したい英国にとって、ブレグジット、トランプ米政権の誕生は大きな試練ですが、危機をチャンスに変えようとする意思も感じられます。今となっては「君臨すれども統治せず」の英王室のたかがウエディング、されど国際結婚ウエディングだったと言えそうです。

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