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 ロンドン郊外のウィンザー城

 先週19日、2年に1度開催される英連邦首脳会議で、チャールズ皇太子を英連邦の次期首長にすることを全会一致で決めました。53カ国を擁する英連邦の現首長はエリザベス英女王ですが、世襲制ではないため、今回の会議で次期首長について話し合い、エリザベス女王の強い願いもあり、息子のチャールズ皇太子が継承することを決めたということです。

 英連邦の首長については、エリザベス女王の後継を、加盟国の持ち回りにする案も出されたことがあったそうですが、大きな混乱もなく、決まったようです。同首脳会議はロンドンのバッキンガム宮殿で開幕し、次いでロンドン郊外の英王室の公邸の一つ、ウィンザー城で46カ国の首長と7カ国の外相が出席して協議されました。

 チャールズ皇太子は、ダイアナ元妃との離婚や元妃の事故死、カミラ夫人との再婚で国民からの風当たりも強くなり、同皇太子が国王になれば、自動的に英国国教会のトップに立つこともあり、国民の間からは国王を一挙に息子のウィリアム王子にすべきという意見も聞かれました。しかし、当人たちの努力と、女王の尽力で今は聞かれなくなっています。

 実際、英国国教会には、国王は離婚経験者と結婚する事を認めておらず、過去には、エドワード8世が離婚歴のあるウォリス・シンプソンと結婚するために退位した話は有名です。チャールズ皇太子は、ダイアナ妃と結婚した後もカミラ夫人との親密な関係を続けていたことが明らかになり、国王にふさわしくないという声があったわけです。

 英連邦加盟国にとっては、チャールズ皇太子の私生活の問題は英国内問題であり、イスラム教などの他の宗教への理解も示すチャールズ皇太子は、英連邦首長としては問題ないと判断したといえます。第一、「君臨すれども統治せず」のスタンスもあり、英連邦の縛りは非常に緩いため、大きな問題にはならなかったようです。

 それにしても、かつて19世紀、世界最大の帝国を築いた英国が、当初、8カ国で出発した英連邦を53カ国に育てたことは大きなことといえます。居心地が悪ければ出て行く選択肢もあるわけですから、国際的な協力体制や貿易でなんらかのメリットがあるということです。

 約24億人の人口を持つ英連邦の存在は、英国の国際社会におけるプレゼンスにも大きく寄与しているのは確かです。英国が欧州連合(EU)離脱を決定しても、英連邦に大きな変化はないようです。今回の首脳会議の議題は後継問題だけでなく、海洋保護や気候温暖化対策、サイバーセキュリティ、加盟国間貿易などについて話し合われ、合意したとされます。

 特に貿易については連邦内貿易を2030年までに2兆ドル規模に拡大する目標を掲げており、加盟国の関心の高いテーマです。会議では「保護貿易主義と戦う」ことで各国首脳は同意したとしています。その他、連邦内、特にアフリカでの人身売買、教育普及などもテーマだったといいます。

 英国内では、なんのための連邦かと疑問の声もありますが、加盟国だったジンバブエのように白人農場の強制徴用など規律に違反したとして離脱させられた国もあり、英連邦の持つ価値観が共有されていることには意味がありそうです。

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