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 フランス政府が取り組むフランス国鉄(SNCF)改革に反発し、ストライキを決行している労働組合は、政府が妥協しない姿勢を見せていることから、3カ月という長期戦の構えを見せています。労組は4月に入り、5日ごとに2日間のストを6月末まで18回続ける方針を打ち出し、ストをエスカレートさせています。

 SNCFの負債は450億ユーロ(約5兆9,000億円)にのぼり、政府によれば公的資金の投入も10年前より22%増加しており、これ以上放置できないとして、事態打開のための雇用改革を断行する構えです。実はフランスでは膨らむ赤字解消のため、1995年にSNCF改革を断行しようとして失敗した苦い経験があります。

 それは私にとっても忘れられない悪夢でした。当時、凱旋門近くの三越美術館で、日本画家、高山辰雄の展覧会があるというので、日本の某メディアの依頼で記者会見に行きました。ところが、パリはストライキに突入しており、全ての交通機関が止まり、ヴァンセンヌの森から凱旋門まで約10キロを雪の吹きすさぶ中、歩くはめになりました。

 当時はスマホどころか携帯電話も持っておらず、結局、現地に辿り着いたら、記者会見は延期という悪夢の経験でした。そのストライキは1カ月近く続き、呆れるしかありませんでした。結局、政府は改革を断念しました。しかし、時代は変わり、通勤スタイルや働き方も多様化し、今回は様子が違います。

 同改革案について先週末に行われた労組側と政府の会合は平行線に終わり、今週以降もストの継続を労組側は確認し、各地でストの影響から混乱が起きています。3日のストでは高速鉄道の約87%、普通列車は80%が運休、影響は、乗客を乗せる列車だけでなく、貨物列車の運航も取り止めになり、物流にも影響が出ています。

 国民議会での法案審議が開始したのに合わせ、パリの議会前やニース、トゥールーズなどで9日、抗議デモが行われ、北部リールでは県議会の建物を組合員が占拠し、各地で通勤電車の代替え運航するバスの発着を妨害したりなどして、エスカレートしています。

 断続的にストを行うため、スト明けもまともなダイヤで運航できず、全国各地で混乱が続いています。当初は理解を示していた利用客も国鉄職員と駅構内で激しい口論が起きたりしています。それに興味深いのは、メディアも労組側に同情的な報道は、左派の新聞を除けばがほとんどありません。

 政府が掲げる改革の中で最大の争点は、鉄道員(シュミノ)の資格の改定にあります。現在、終身雇用が保障され、50歳定年も可能で有給も28日間(民間25日)という特権資格を廃止するとしているのです。実は50歳定年の権利は蒸気機関車時代に鉄道員が重労働を理由に獲得したものです。

 石炭をシャベルでくべながら走行するスタイルは、はるか昔に消えているのに権利だけは残っている。政府は新規雇用から資格を段階的に廃止したい考えですが、労組は強く反発しています。さらに職員は家族も含め、特別割引運賃が適応されており、その割引額は年間約1億ユーロ(約131億円)に上るとされ、民間企業との不公平感が問題になっています。

 この待遇のギャップの大きさに対して、日頃はさまざまなストライキに理解を示すフランス国民ですが、今回のストライキへの支持率が5割を切っていると全国紙ル・フィガロなどが報じており、国営TVフランス2も政府改革案の正当性を報道する姿勢を見せています。

 この状況を受け、20年越しの懸案となっていた改革を断行することに自信を見せている政府に対して、徹底抗戦の構えの労組に、どこまで国民の支持が得られるかが注目されます。政府は近年、鉄道やバスの運営多様化を推進し、ウイゴーなどで格安料金が提供され、大いに歓迎されています。

 移動手段も多様化し、民間企業の新規参入もあり、利用者は選択の幅が拡がっており、元の状態に戻ることを支持する利用者はいません。フランスでは、この他にもエールフランス航空の職員ストライキも決行されており、空の便にも影響が出ています。

 パイロットたちが待遇改善を要求していますが、逆にメディアは、エールフランスのパイロットが他の欧州航空会社に比べ、フラント時間が相対的に短く、給与は逆にトップクラスであることを伝えています。中道のマクロン政権下で一般国民は、右とか左とかの政治信条で政策を見るのではなく、実利を取る傾向を見せていると言えます。

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