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 年間8,000万人を超える外国人観光客が訪れるフランスは、人数としては世界一を走り続けている一方、ホスピタリティの評価は世界でも最悪にランキングされてきました。今から5年前、パリの商工会議所は、やっと重い腰を上げ、その汚名を取り除くプロジェクトを開始しました。

 それは、国別に対応するための接客マニュアル作り。ホテルやレストラン、カフェ、土産品店にマニュアルを配り、出身国に応じたきめの細かい接客ができるようにすることでした。きっかけになったのは、フランスを訪れた外国人観光客からの接客評価が非常に低いという調査結果があったからです。

 たとえば「フランス語以外絶対話さない」「意味不明な英語のガイド」「注文と異なった料理がくる」「質問しても相手にされない」「店の商品を触ったら叱られた」「レストランで注文を取りにこない」「食事の後に支払おうとしても相手にされない」など、枚挙に暇がない。

 簡単に言えば「無愛想で客にサービスする気がない」というものです。日本流に言えば「おもてなし精神」がまったくないということです。日本人なら誰もがパリで経験したことがある話です。その不快な経験は日本人だけでなく、近年急増した中国人やロシア人、インド人観光客にとっても同じです。

 彼らは日本人のように我慢強くないので、フランス人の無愛想な態度に露骨に怒りを露にする場合も少なくありません。そこでパリ商工会議所は、なんとか評価を挽回し、観光収入を増やそうとマニュアルを作成したわけです。

 そのマニュアルで見ると、日本人に関しては「何より安心を求める」とあります。また、「ベルギー人は敬語に敏感」と書かれている。果して効果はあったのかどうかは分かりにくいのが現状です。なぜなら、テロの頻発した2015年から2016年を除き、外国人観光客は増え続けているからです。

 実はフランスに関して言えば、おもてなしのクオリティーと観光客数は比例していません。ホスピタリティーは最低でも、リピーターを含め、世界中から観光客が押し寄せているからです。その理由は簡単です。それは圧倒的な観光資源を持っているからです。

 モンサンミッシェルを始め、30を超える世界遺産に登録された古代遺跡を含む名所旧跡、美しい街並み、名画に出てきそうな田舎の風景、地方ごとにまったく異なる個性を持つ多様な文化、それは食文化にも当てはまります。無論、世界的評価を受けるフランス料理やワイン、モード、世界有数の所蔵品を持つ美術館や博物館など、観光資源の豊富さは世界を圧倒しています。

 だから、少々不快な思いをしても、次回来る時は、別の所に行ってみようという気になるわけです。そんな観光資源に寄り掛かり、ホスピタティーを怠ってきた背景には、意外な理由もあります。それは、ヨーロッパに根強く残る階層社会です。

 サービスの質はお金次第ということです。フランスには金持ち対応の高級ホテル、レストランも多くあります。そこに行けば、日本並の接待も受けられます。中には豪華な建物全体をホテル代わりに借り切るサービスもあります。今は中国富裕層向けに専属の店員が同行するサロンを備えた買い物スペースを完備するデパートもあります。

 パリ観光局は、観光スポットで案内する「笑顔の大使」を配置してみたり、地下鉄などでは案内係の若者が配置されていますが、その横にはテロ対策のパトロールの兵士が重装備して歩いているというのが、今のパリの風景です。

 スリや置き引きで、毎日2件はパスポートをなくした日本人観光客が大使館を再発行で訪れるパリですが、それでも観光客が増え続ける底力は凄いというしかありません。日本も磨くべきはおもてなしではなく観光資源なのかもしれません。

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