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 世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)などで英国の欧州連合(EU)離脱をめぐる政治家たちの発言が相次いでいます。特にブレア元首相の24日の発言は、誰もが内心、可能性があるのかないのか予想しかねている離脱撤回に言及したことで、注目を集めました。

 ウォール・ストリート・ジャーナルは、独自の取材でブレア氏が英政府とEUとの合意内容が英議会で否決された場合、「行き詰まり」から、来年3月までに40%の確立で離脱撤回に至る可能性があると語ったと伝えています。

 その数字は、昨年6月の総選挙で与党・保守党が単独過半数を失ったことによるもので、それ以前は、EU離脱撤回の確率は20%未満と考えていたと語ったとされます。

 つまり、議会がEUとの合意内容を承認しなければ「ノーディール」状態での離脱を余儀なくされ、それはありえないので撤回せざるを得なくなるかもしれないということです。国民投票で決定したことを撤回し、その準備に追われてきた英国当局とEU側双方の作業を無にすることも大変なことです。

 一方、英議会ではデービスEU離脱担当相が同じ24日、金融サービスやその他の通商問題についてEUの規則から離れる権限を確保するよう交渉を進めると発言しながらも、離脱後も規制面での一致を継続し、離脱後に将来的な選択の自由を残す考えを示しました。

 つまり、英政府として離脱交渉の目標として、EU市場へのアクセスを現状維持しながらも、将来的に自由な選択を行使できる通商交渉をめざすというものです。さらに現状のEUとの通商規則を維持し、EU司法裁判所の管理下に止まる移行期間の確保のために最大限努力するとも述べました。

 25日には、ダボスでメイ英首相が、ロンドンの金融街シティーが世界の金融センターとしての役割を確実に維持できるようにしたいの考えを示し、フランスのマクロン大統領が先週末に「英国が政治的・金銭的代価を支払えば、通商合意に金融サービスの要素含めることは可能」との考えを示唆したことに間接的に答える形となりました。

 そのメイ首相は同日、トランプ米大統領と会談し、1月に予定されたロンドンの米大使館開館式への参加を見送ったトランプ氏の決定で冷え込んでいると見られる米英関係の良好ぶりをアピールしました。

 英国はこの1年、嫌トランプ状態にあり、保守党はトランプ氏の公式訪問自体を歓迎していない状態です。BBCは一貫してトランプ氏へのネガティブ報道を繰り返しており、メイ首相もトランプ氏に近づきすぎると足下の保守党から反発される恐れがある。

 離脱後の米国との関係維持を重視すつメイ首相は、トランプ氏との間で米英の「特別な関係」が変わっていないことを確認する一方、「英国はEUを去るが、今後も自由貿易の世界的な擁護者であり続ける」と語り、保護主義的傾向を見せるトランプ政権に釘を刺すのも忘れませんでした。

 一方、トランプ氏は「われわれはあなたの国を愛している。両国は同じ理想を持っており、米国が英国のために戦わないというようなことは一切ない」と述べたことが伝えられています。

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