企業は今、縦の階層構造から、目的に応じたチームベースで働くケースが増えています。そこで重要視されるのがチームワークです。イギリス人の友人が日本に最近駐在するようになり、興味深い話をしています。

 彼は、日本人は世界的に見ても優れたチームワークを発揮できる人種だというイメージを持ち、赴任前の研修で日本人は集団主義で個人主義のイギリス人とは、ま逆だと教えられて来たのに、現実はだいぶ違っていたというのです。

 日本のオフィスを眺めていると、チームのメンバー間の信頼関係が築けているとは見えなし、自分に与えられた仕事を黙々とするだけで、メンバー同士のコミュニケーションは希薄で、何よりも彼らが気にしているのは上司だけということに気づいたというのです。

 チームワークの基本は共同作業を支える協力の精神ですが、確かに今の日本の40歳以下の世代では、協力精神は希薄なのかもしれません。チームにはスキルのバラツキがある場合も多いのですが、通常、日本では相互補完関係で互いに弱点を補いあってチームを動かす慣習があったわけですが、それもイギリス人の友人には疑問だと言います。
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 ウォールストリートジャーナルは、アメリカの企業生産性研修所の調査から見える最高のチームワークを引き出すリーダーの4つの共通項目を紹介しています。これは政府系機関や学術機関を含む組織1000以上のマネジャーや従業員を対象に、協力に関する取り組みについて調査した結果から導き出されたものです。 

 それによると、好業績をあげている企業では回答者の過半数以上が、良好なチームワークは1、共同作業のモデル作成、2、強力な従業員ネットワークの構築、3、部署間の協力の奨励、4、効果的な作業の構造化、と答えたというのです。

 少々各項目についての説明が必要ですが、言い方を変えると、有能なマネジャーほどメンバーに明確な目的を持たせているほか、各自がチームとの信頼関係を築けるようにしていると同リポートの共同執筆者である同研究所のケビン・マーティン氏は指摘しています。

 さらに例えばマネジャーたちは今回の調査で、チームの共同作業がはかどるのはメンバーが自身の過剰な負担について報告しやすい環境にある時だと答えています。マーティン氏によれば、最も成績が良いチームのマネジャーは、メンバーを助けて自身の役割を理解させると同時に、最終決定を下す人物を明確に指名していることもわかったと言っています。

 前半の部分は、まさに日本的に言えば、相互補完がスムーズに機能するケースでもあると言えます。無論、チームの誰に決定権があるのかという部分は、日本的にはチームの上にいる上司と受け取られがちですが、実際にはチーム内の話です。

 興味深いのは、チームの機能不全は、相互のフィードバックが欠如し、仕事の負担が他のメンバーに理解してもらえない時や仕事の方向が理解できない時に起きているとの指摘です。友人のイギリス人が見た日本のオフィスは、まさにその点が欠落していたのかもしれません。

 チームメンバー間のフィードバックや目標の共有化は、費用を掛けずにリーダー次第で実現できることなのですが、コミュニケーションそのものに深刻な問題を抱える日本の若い世代は、共通の価値観を持つことでチームワークを発揮できた過去の世代と違い、新しいチームワーク構築の手法が必要になっているようにも見えます。