中東サウジアラビアでドイツ系の土木建設会社のプロジェクトマネジャーを務めるロバート氏は出自が複雑です。彼自身はカリブ海の島、トリニダードトバコ生まれで、両親にはスコットランドを初め、様々な血が混じっている。彼自身はアイルランドの大学を出て、今の仕事に就いています。

 彼と出会ったのは、彼の結婚相手が日本人で、その日本人の親が身近な人だったからです。2人が出会ったのはシンガポールで、当時、ロバート氏はシンガポールに駐在していて、日本人女性の方も、米系の航空会社のシンガポール支社に勤務していました。

 そして今秋、夫の新しいプロジェクトのために夫婦で中国大連に赴任するそうです。ロバート氏の仕事は、多国籍チームで取り組むプロジェクトの現場で、様々な文化的、人種的背景を持つチームをマネジメントすることです。報酬も相当いいそうです。

 会社がドイツとアメリカの共同出資会社で、世界中のインフラ整備などの大規模な事業を受注し、企業は完全にグローバル企業化しています。そのような企業が今、積極的に活用しているのが、国境を跨いで複数の文化的背景を持つ人材です。

 ロバートは見た目は完全に黒人です。オバマ前米大統領もそうですが、西洋人の血が入っているといっても分かりません。しかし、話すと日本人にも違和感のない完全な国際人です。
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 多文化の人材をマネジメントする一つの有効な解決策として、ブリッジパーソン(文化の案内人)という考え方があります。たとえば、日系企業であれば現地のナショナルスタッフで日本への留学経験を持つ人物などを活用する方法です。

 しかし、その場合はブリッジパーソンに立てられた人物が、日本側に忠誠を誓う必要があり、ヘタをするとナショナルスタッフや現地企業と癒着し、不正行為を働くリスクもあります。

 そこでブリッジパーソンの役割を、最初から第3国の人にする場合もあります。日本の大手ゼネンコンには、日本のODAのプロジェクトで、自社の海外支社で雇っているナショナルスタッフを第3国に送り込んだりする会社もあります。

 ロバートもその一人で、シンガポールもサウジアラビアも彼とは関係のない国です。しかし、大きなプロジェクトでは現場で働く人も多国籍、多人種です。そんな多文化の職場環境ではロバートのような人物は有効だというのです。それも彼には西洋の血も入っている。

 実は、カリブや南米の人々の背景は複雑です。たとえば南米スリナム出身でオランダに暮らす友人は、見た目は東南アジア人です。彼の先祖はインドネシア人で、オランダがインドネシアを植民地化していた時代に同じ植民地だったスリナムに先祖が奴隷として売り飛ばされた経緯があるというのです。

 植民地時代に奴隷だった人々は現地に住み着くしかなく、家族は強制的にバラバラにさせられ、ルーツを辿ることも困難な人が多い。彼らは売り飛ばされた先で違う人種の人と結婚し、さらに複雑になる。中には宗主国のヨーロッパの白人との間に生れた子供もいて皆混血です。

 それだけみれば、同情してもしたりないほど悲惨な境遇ですが、たくましく生き延びています。そんな複雑な背景を持つ人間がアメリカやヨーロッパで高等教育を受け、グローバルな現場で活躍しているのは非常に希望です。ロバートの親はいつも遠くにいるので寂しいけど、息子の活躍を積極的に支持しています。

 ブリッジパーソンはグローバルビジネスで重要な役割を担っています。欧米のグローバル企業は、文化がビジネスに与える影響を非常に重視している。特に現場で活躍するプロジェクトマネジャーへの登用が促進されています。

 これは多国籍企業と言われた1980年代から海外展開した欧米企業の経験に基づくもので、今は様々な文化、人種を超えられた人材の登用が盛んに行われています。