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     ドイツ・デュッセルドルフのオフィス街

 日本の某化学メーカーの開発部長で、ドイツに赴任してきた方の研修を行ったことがある。その方曰く「ドイツ人管理職は、日本人よりはるかに権威主義的に見える」というのです。また、社内でドイツ人は知らない社員とは挨拶しないのに驚いたと最初の印象を話してくれました。

 日本人にとってドイツ人のイメージは「硬い」とか「感情が表情に表れない」とか「ラテン系の人に比べて冷たい」、さらには「徹底した合理主義者」などが定着しています。フランス人の妻も4年間ドイツに住んだことがありますが、「フランス人にとって、ドイツは非常に厳しい土地だった」などと言っています。

 ですから日本人の持つイメージは当たらずとも遠からずと言えるかもしれません。さらに日本人ならナチスドイツを題材にした映画を1本や2本は観ているでしょう。そこに出てくるナチ親衛隊のリーダーの権威主義的態度は、まったく人間味のない高圧的なものがほとんどです。

 ですから、無表情で自分のポジションの仕事を黙々とこなすドイツ人管理職を見ると、高圧的なものを感じたりするのでしょう。しかし、実はドイツは戦後、ナチスドイツの蛮行の反省から、軍隊式の序列を重んじる権威主義的リーダーシップには一定の距離を起き、民主的であることを重視してきた経緯があります。

 さらにものづくり大国ドイツは、他の西洋諸国に比べると意思決定が一方的ではなく、コンセンサス重視なのが特徴です。無論、職種にもよりますが、職人的ギルドの伝統を持つドイツでは、高い技術を極めるため関係者全員のコミットメントを重視しており、一見、権威主義的に見えるのは彼らが不器用なだけで、実はそうではない場合が多いのです。

 たとえば隣の国フランスは圧倒的に中央集権的で、一人の人間に権力が集中し、一方的に決定する傾向が強いのとは対照的です。たとえばドイツでは従業員代表による行動決定権というのがあります。

 コンセンサスという意味では日本的と似ているようにも見えますが、実はポジションによる役割分担、権限、責任は日本よりはるかに明確です。その役割に徹する姿が、なんとも権威主義的に見えたりするのです。

 某大手韓国企業が送り込んできたトップが役員会議で、一方的に演説し、さらに社長とは異なった意見を述べたドイツ人幹部を降格させたために、役員全員から訴えられた例もあります。異文化を読むことは簡単ではないということです。

 それに冷たく見えるドイツ人は、実は非常に人道主義的価値観を重視する国なのです。シリアやイラクから押し寄せる難民を100万人以上受け入れたのは、彼らの強いヒューマニズムからです。つまり暖かい心を持っているのです。

 しかし、人間は第一印象で、その人に対するイメージの9割が固まり、それを変えるのは至難の業と言われています。ドイツの職場で朝、知らない社員に「おはよう」と声掛けしたら、反応がなかった場合、「なんと無礼なんだろう」と思ってしまいます。しかし、村社会のドイツでは知らない人に対する警戒感も非常に強いし、誰とでも挨拶する習慣がない。

 逆にアメリカではホテルのエレベーターに乗ったら、まったく知らない人が「ハーイ」と声を掛けてくる。すると「アメリカ人はなんと人懐っこく、オープンなんだろう」と思うわけです。しかし、多くの場合は日本的常識の延長線上で相手を判断しており、それが適切でない場合も多いのです。