Jeremy_Corbyn_2017

 
英労働党のコービン党首ほど近年、評価が上がり下がりした人物は、他の先進国にはいないでしょう。昨年6月のEU離脱を問う国民投票では、党首交代を迫る勢いで非難され、今回は労働党の躍進で退陣圧力は一挙に消え、評価は上がりました。

 英国の総選挙の結果が再び、世界に衝撃を与えています。総選挙を前倒しで行うことで政権基盤を強化し、ブレグジットの交渉を有利に進めようとしたメイ首相の目論見は大きく外れました。

 欧州議会では「キャメロンをがっかりさせ、今度はメイがやってくれた。いいかげんにしてほしい」と言う議員もいるほどです。政権基盤が弱体化し、ハード・エグジットの夢は消え、議会は離脱交渉で紛糾するのは必至です。

 それにまたもメディアの予想は外れました。メディアは国民の政治動向を読めませんでした。メイ首相が総選挙を前通しすると発表した時、メディアは疑問視するどころか、懸命なやり方と支持し、逆の結果が出るとメイ首相をあざ笑っています。

 EU残留支持だった労働党が躍進した理由は、英国経済の先行き不安から、個人に手厚い公約を掲げたからでしょう。それに保守党のめざすハード・エグジットが、さらに英国を孤立させ、経済を悪化させるリスクを国民が感じたからとも言えます。

 大陸側からみれば、英国の事情で一方的に離婚を宣言されたEUにとって、英国にだけ都合のいいハードな離脱条件を振りかざす英国は、あまりにも自己中心的と映っていたはずです。

 その英国が態度を変える可能性が出てきたわけですが、今度は決められない英国という困った状況に陥る可能性が出てきたわけです。

 ドイツは総選挙を控え、英国に譲歩するような余裕はなく、アメリカのトランプ政権には以前ほどの「特別な関係」を望めない状況です。

 国内では、総選挙の結果を受け、スコットランドで保守党が議席を伸ばしたとはいえ、再びEU残留を問う動きを強める可能性もあります。

 英国は国際舞台からの退場を示す材料が出始めています。これに喜ぶのはプーチンだた一人なのでしょうか。