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 昨年暮れのアメリカの大統領選挙では、アメリカの多くのメディアがクリントン候補の勝利を予想しながら、トランプが当選し、今年3月のオランダの総選挙でも予想に反し、極右政党は政権をとれるだけの得票を得られませんでした。今はフランスの大統領選が注目されていますが、マスコミは予想しかねています。

 メディアに関わってきた者の一人として、選挙予想が大きく外れる事態は過去にもありますが、今の方が深刻なのではと思います。予想が外れる理由を考えてみますと、一つには丁寧な取材が行われていない現実があります。ネット時代では毎日大量の情報が流されていますが、真実を伝える情報は多いとは言えません。

 真相に迫るには時間もお金も必要です。多大な労力を掛けても真実に辿り着かないこともあります。ネット時代の今日、情報量は非常に多いのに真実に辿り着けない原因の一つに、情報の孫引き問題があります。視聴率や購読者獲得のためにはスピード感が必要で、結果的にある程度信頼できるメディアが流した情報を利用してしまうケースが増えているわけです。

 現場で丁寧な取材をすることなく、いわゆる孫引き的に記事を書いてしまうメディアの増加は申告です。新聞社は紙媒体の衰退を補うほど、ネットから収入を得られていません。取材予算は削られ、通信社の記事に頼る傾向は強まる一方です。ところが通信社も現場で丁寧に取材しているか、怪しい場合もあります。

 この孫引き問題は、例えばヨーロッパでポピュリズムが拡がる危険に晒されているといった論調を流すメディアを追随する報道が拡がる現象に見ることもできます。左翼メディアの多いヨーロッパでは、極右は大敵なので、意図的なネガティブ報道も多いのに、それを鵜呑みにする日本のメディアが多い。

 それにアメリカのジャーナリストの7割がユダヤ系と言われる中、反アラブ、反イスラム報道は世界中を駆けめぐっています。それにトランプに投票したようなグローバリゼーションに置いていかれた層の深刻な現状より、シアトルやシリコンバレーで活躍する超リベラルなIT富裕層のニュースの方が売れるし、彼らはメディアのスポンサーです。