安部雅延のグローバルワークス Masanobu Abe Global Works

国際ジャーナリスト、グローバル人材育成のプロが現在の世界を読み解き、グローバルに働く人、これから働く人に必要な知識とスキルを提供。

フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当する安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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 フランスでは、左派の経済学者、トマ・ピケティが著した資産に関する本が話題になっている。その本によるとフランスの人口の1割にあたる超富裕層が、フランス全体の総資産の6割を所有しているそうだ。

 その本は、この300年間の20カ国の資産や財産の変遷を15年間掛けて綿密に調査したデータから書かれている。本は900ページにも及ぶ。

 その結論は、労働よりも資産などの不労所得の相続の方が経済的に有利というものだった。著者は相続税への増税を提案しているが、自由経済派のエコノミストから批判を受けている。

 不動産や金や宝石、美術品、株式などフランス人が現在所有している資産は、合計で12兆ユーロに達し、その額はフランスが抱える公的債務の6倍に相当する額に達しているそうだ。 

 フランスは、1789年に大革命を起こして、王侯貴族や教会聖職者などの特権階級を追放し、格差をなくしたはずだった。20世紀の2つの大戦でも、多くの資産が失われたが、フランスはヨーロッパでもトップクラスの格差のある国だ。

 超富裕層は古い古城からパリの高級アパルトマン、高級ワイン醸造所、高額の名画、優良企業の株式などを所有し、その資産が生み出す利益は、普段のビジネスよりも遥かに効率よく大きな利益をあげているという。

 つまり、いったん大きな資産を形成してしまえば、その運用などで得られる利益は、労働が生み出す利益を遥かに上回るという話だ。これは全世界的に当てはまることでもある。

 たしかに個人的に何人かの資産家を知っているが、その金持ちぶりは途方もなく、まじめに働くサラリーマンの姿が虚しく映る。

 しかし、その財産をめぐって骨肉の争いも通常の事として日常茶飯事に起きている。結局は平等なんだと思いたいのは貧しい者のひがみなのだろうか。

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 日本の某大手企業から、非日本人社員に対する経営理念の徹底について相談を受け、研修を行ったことがある。実際、その経営理念を理解してもらうこと自体、非常に困難を伴うものだった。

 実は経営理念は、欧米企業にとっても重要な存在になっている。例えば、フランスはその典型だが、経営理念に合わないビジネスには絶対に手を出さないし、経営理念に背く社員は解雇する企業も存在する。

 まず理念ありきの演繹的思考の強いフランスに比べ、日本と似た経験重視の英国企業でも、経営理念は重視されている。とくにミッション、社会性については、こだわりもある。

 ただ、経営理念は進化させる必要もある。昨今のグローバル化の進展する世界では、とくに世界に通じる経営理念の再構築が急がれている。

 ところが、多くの日本企業が、この再構築に着手することを躊躇している。そこは触ってはいけない会社設立時からの神棚に置かれた物として扱う企業もある。逆に経営者が変わる毎に気軽に変えてしまう会社もある。

 ただ、非日本人が従業員に含まれるようになると話は別だ。経営理念に日の丸をかざしてもうまくは行かない。そこには国境を超えた誰もが納得できる普遍性が必要不可欠だからだ。

 今後は、このグローバルに耐えうる経営理念の再構築が、多様な文化を持つ従業員たちをつなぐ共通基盤となりうるし、その徹底の仕方にも多文化ならではの工夫が必要になってくる。 

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 友人のフランス人のブリュノは、ネット上でひどい中傷を受け、傷ついた一人。彼は中国人観光客のマナーがあまりに悪いことを、短文投稿サイト、ツイッターでつぶやいただけで、800件にのぼるつぶやきで中傷を受けた。

 彼のような中傷を受ける人間は世界中に数知れないはずだが、フランスでは今後、たとえネット上でも、中傷行為は罰せられることになりそう。

 ブリュノは、中国人を中傷しようという意志はなく、自分が目にした不快な行動に単純に驚いたことをつぶやいただけだった。 ところが「フランス人は差別主義者」「中国人よりはるかに劣等なフランス人が何を言う」などの投稿が相次ぎ、彼はあまりの汚い言葉に絶句したそうだ。

 彼の予想では在仏のフランス語ができる中国系移民によるものだろうと考えている。 実はフランスでは、反ユダヤ主義の書き込みがネット上に拡がり、フランスの司法がツイッターの運営会社に対して、それらの書き込みをした人物を特定しうる情報を提供するように要請し、応じることになった。

 フランスの司法関係者は「反ユダヤ主義に限らず、人を中傷し、傷つける行為は、たとえネット上でも罰せられるのは当然」と説明している。 ネット上はこれまで無法地帯と言われていたが、人権は守られなければならないという話だ。そこで友人のブリュノも司法に訴えるかどうか検討中だという。

 彼は、この中傷を受ける前に、本当はロシア人のマナーの悪さをつぶやこうとしたそうだが、やめることにしたそうだ。実は彼は高級レストランのマネージャーで、日々、中国人やロシア人のマナーの悪さに遭遇している。

 「悪気はないし、正直に自分の感じたことをつびやいただけだし、マナーを良くしてほしいという願いも込められているんだけど、どうやら彼らには通じないみたい」と言っている。どちらにしてもネット上でのつぶやきがいつも危険と隣り合わせなのは間違いなさそうだ。 

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 フランスは付加価値税(TVA)の一部税率が来年1月から引き上げられる。景気へ懸念の声も聞かれるが、フランスの人は、一般的にTVAには慣れている。

 VATの最高税率は現在、19・6%だが、これが20%に引き上げられる。消費税5%を8%にするだけで大騒ぎになっている日本から来た日本人は、このTVAに驚く。

 とくに日系企業駐在員として赴任した日本人は、「何か買えば、定価の2割増しということになる。よくフランス人は受け入れていますね」などと聞かれることもある。

 無論、TVAには中間税率もあり、レストランや美術館などの利用は、現在7%なのが10%に、逆に光熱費や本、アルコールなしの飲み物などは現行の5・5%から5%に引き下げられる。

 経営で苦戦している新聞業界の販売価格や、医師の処方箋で買う薬剤は2・1%で据え置きだ。国民生活や、守るべき産業を考慮した政治的判断が見え隠れする。

 ヨーロッパでは、標準付加価値税が高いのは、ハンガリーの27%、スウェーデンなど北欧の25%、アイルランド、ポルトガルなどの23%、イタリア21%、英国20%と、20%以下の国は半分以下。 

 フランスの場合は、福祉の恩恵が日本とは比較にならないほど大きいので、国民も納得しているところもある。しかし、低成長の不況下では、政府への信頼感が鍵を握ることになる。

 巨額な債務を抱える日本で、安倍政権が、行けいけドンドンなのだから、フランスも景気対策にもっと投資した方がいいという意見もある。事実、不況を嫌う優秀な若者のフランス離れに歯止めがかからないのが深刻だ。

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 私が長い間教鞭をとったフランスのビジネススクールでは、30年前から国際ビジネスにどう取り組むかを課題にしてきた。そもそもグローバル化とは、ビジネスが生み出した言葉だったわけだけど、実はフランスは予想に反し、私が住み始めた22年前は、それほど積極的ではなかった。

 無論、ヴィトンやエルメス、シャネルなどの高級ブランド、ブルゴーニュやボルドーのワインは世界的に知られ、彼らのグローバルビジネスは長い歴史を持っている。メイド・イン・フランスのシールが貼れば売れる商品のグローバル化は早かったが、そのほとんどは輸出スタイルに依存していた。

 日本の商社は、フランスで小規模経営だが商品価値の高そうな商品の日本への輸出を交渉しても、20年前は警戒されることが多かった。大量生産体制に投資しても失敗の恐れがあると考えられたからだ。つまり、海外、とくにアジア市場に対する不信感は当時非常に強かった。

 フランスのみならず、ヨーロッパは19世紀からトランス・アトランティック同盟を結び、世界経済を牽引してきた。日本が登場するまで、トランス・パシフィックへの関心は低かった。欧米はキリスト教文明の共通性があるので、異文化といっても驚くほどの違いはなかった。1980年代、ジャパンバッシングを取材にデトロイトに行った時、日系企業とは比較にならない規模で欧州企業が進出していた。

 今、欧米諸国のビジネススクールでグローバルマネジメントを扱う理由の一つは無論、グローバル企業への変身が時代の要請としてあるからだが、実はアジア市場の登場が欧米企業にとって、異文化でのビジネス展開に新たな課題を与えていることが大きく影響している。

 その意味では、日本は得意な立場だ。もともと欧米スタイルとはかなり異なった経営手法で成長した日本は、周りに共通の価値観を共有する国がない。海の向こうは全てが異文化というわけだから、グローバルなビジネス手法を学ぶことは避けて通れない道と言える。

 輸出主導、販売拠点拡大の1970年の時代は過ぎ去り、日本人を大量に送り込んで生産拠点を運営する時代も過ぎ去った。今は、ローカリゼーションの時代だからこそ、グローバルマネジメントやリーダーシップ、リスクマネジメントは必須のスキルだが、そこに真剣に取り組み、投資している企業は非常に少ない。韓国や中国に先を越される原因を作っているように思われる。 

Martigne2013義父が愛した庭だったが、いったいこの庭はどうしたことか?

 一年前にブルターニュ地方にある義父の家を買った英国人女性の暮らしぶりが判明した。義父の弟が最近、彼女の家を訪ねたからだ。彼の報告で妻の兄弟たちの話が大いに盛りあがった。というのも報告によると、その英国人女性は家の中も庭も、フランス人から見たら荒れ果てていたからだ。

 まずは、家の中に通されて、廊下でさえも物が乱雑に置かれ、歩くのに一苦労したらしい。居間や客間の壁はペンキで赤く塗られ、家具は色も形も不統一な物が無秩序に置かれ、相当ショックを受けたそうだ。

 庭も雑草なのか植えた草花なのか判別がつかず、聞けば、隣に住む老夫婦と、そのことで一戦を交えたそうだ。隣は丁寧に芝が刈られ、庭は整然としていて、いつも手入れが行き届いている。

 逆隣のジャムロー氏の家は、さらに見事な庭が道行く人の目を引いている。義父も庭いじりが趣味だったので季節ごとに花が咲き乱れ、見事な庭だった。妻の兄弟たちは「さすが英国人だな。美的感覚がゼロだ」「あの無秩序が彼らの美学らしい」と英国人に対する悪口が止まらない。

 フランス人やドイツ人から見れば、部屋のインテリアも庭の趣味も最悪だ。イングリッシュガーデンもかたなしだ。理由は統一性がないことと、乱雑さにある。フランスでは家具の色、カーテンの色や模様は、全てトータルコーディネートするのが習わしだ。

 庭も咲く花の色などに合わせ、美的なコーディネーとがされている。ヴェルサイユ宮殿の庭などは典型かもしれない。無論、ヨーロッパの国々は歴史的に互いに影響し合っている。それに趣味の善し悪しも主観的問題だ。

 それでも、確かにフランスに慣れてしまうと英国人の家は小さく、部屋は狭く、中の調度品にも統一性がないと感じてしまう。しかし、散々悪口を言っていた兄弟たちが、「まあ、彼女は人柄がいいよね」「それが救いだ」と褒め始めた。両国民の愛憎は複雑だ。

 ブルターニュ地方とアイルランド、スコットランド、コーンウォルはケルト文化で繋がっている。そのためブルターニュ地方に住む英国人は多い。義父の家を買った英国人女性もブルターニュにきて10年以上が経つ。

 ある意味、フランスの中では閉鎖的なブルターニュ地方だが、英国やアイルランドとは歴史的な繋がりもあり、互いにどこかで親近感を持っている。 

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 同性婚合法化で国民の間に大きな亀裂が入ったフランスで、今度は初等教育へのジェンダー教育導入が、国民を二分する可能性が出てきた。今週から与野党ともに政党の夏期勉強会だが、議論が本格化しそうだ。

 フランスは、かつてフェミニスム発祥の地として1970年代にアメリカのウーマンリブ運動と共に注目を集めた。その教祖とも呼ばれた作家のボーヴォワールは当時、世界的にも影響を与えた。

 無論、今ではフェミニスムは下火で、性差を生物学的、自然に基づいたものとしない理論は、的外れの空論として、過激な活動家以外、フランスでも誰にも相手にされなくなった。

 ところが「三つ子の魂百まで」のことわざ通り、どこかにいた左翼フェミニストは、オランド仏左派政権誕生とともに息を吹き返したようだ。

 左派政権誕生で勢いづく主要教職員組合は今、男女に性差がないとする内容を初等教育過程に盛り込もうとしている。それも今となっては懐かしい、「女は女に生まれたのではなく、女になった(社会によってさせられた)」という作家ボーヴォワールの思想を注入しようとしている。

 あまりの時代錯誤に呆れるが、身近にいるフェミニスム世代の義姉のジャクリーヌに聞いてみたら「馬鹿げている。娘2人を育てたけど、彼女たちは女に生まれたことに満足している。ありえない考えだわ」と一蹴した。

 フランスでは、同性婚合法化に反対したデモ参加者が逮捕され、政府に反対する者は拘束されると政府の強権が批判されている。今回も反対運動が高まれば、反対者を逮捕するのだろうか。エジプトと変わらない恥ずかしいフランスの現実だ。

 フランスは、確かにフェミニスムを産んだ国だが、ヨーロッパの中でも男女平等が進んでいる国とは言えない。国会議員や企業管理職の男女比率は、北欧に負けているし、男女の賃金格差もある。

 だからといって、今頃、時代錯誤のジェンダー教育を持ち込むのは男女平等を進めることにも繋がらない可能性が高い気がする。フランスは日本に比べ、男性の女性蔑視の考えはきわめて低い。

 男女平等を追求するのであれば、パートの管理職を正規採用と認めるオランダの雇用方式を導入すれば、はるかに女性が仕事をしやすく、管理職にもなりやすいと思うのだが。 

IMG_0407フランスの村々には村の中心に教会が建っているが、その姿が消えた村もある

 フランス人の妻の郷里の町の教会の鐘が最近、久しぶりに町に鳴り響いた。なんとも言えない感動が心に染み渡った。

 仏西部ブルターニュ地方の東部に位置するマルティニェ・フェルショは、人口3千人の小さな町だが、町の中心には立派な教会が建っている。

 40年前には人口が1万人近くいて、乳製品の工場やセメント工場があり、活気に溢れていた。教会に隣接した神父館には、聖職者ら20数人が住み、日曜日の礼拝は人で埋まっていたという。

 それが、工場が消え、人口が激減し、神父館はアパートとして貸し出される始末となった。町の高齢化も進んだ。

 12年間に教会の鐘楼の老朽化で鐘が落下し、割れてしまった。しかし、新しい鐘を作る資金がなく、数年前に篤志家が資金を提供し、ようやく鐘が戻ってきた。

 町を初めて訪れた27年前、教会の鐘が町中に鳴り響く光景に感動したものだった。フランスの地方都市を訪れると、どの町や村も教会が中心にあり、カトリックの役割が大きかったことを思い知らされたものだ。

 各自治体が教会の改築や修復の費用を払えず、現在7600もの教会の建物の存続が危ぶまれているという。すでに今年に入り、5つの教会が解体されたそうだ。

 逆にイスラム教のモスクは増え続けている。彼らは熱心に教会に通うし、維持費には中東イスラム諸国の資金も流れてきている。友人のフランス人は、「フランスはイスラムの国になる日も近い 」と冗談まじりに言う。 

 フランス全土には45000の教会があるが、解体に反対する人は多い。無論、原因は教会に行く人の数が激減したからなのだが。

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   フランスといえば、1ヶ月近い長期ヴァカンスを国民が楽しんでいるイメージがある。確かに平均の有給休暇は5から6週間はある。
 しかし、最近のフランス人は、夏に1カ月間も南仏やスペインで過ごす人々は減っている。フランス北西部リールに住む友人のピエールも、今年の夏は自宅で3週間の休みを取っている。

 40歳のピエールは、この5年間に2回も会社のリストラに遭い、今も求職中だ。

「去年の夏も失業中だったけど、南仏で家族と3週間過ごした。だけど遠出すれば、お金も掛かるから今年は自宅で過ごすことした」とピエールは言っている。

 2人の小学生の子供たちは、それぞれ2週間の林間学校に行っている。ピエールは近くにある図書館に行ったり、公園で日光浴したり、自宅の庭に知り合いを招いてバーベキューをしたりして過ごしている。

「こんな風に夏を過ごすのは初めてだけど、案外住んでいる町のことを知らなかったりして新鮮な気もする」と言っている。友人も数人が遠出を断念したそうだ。

 フランスでは長期の不況で先行き不透明なこともあり、出費を控える人が増えている。「いつかはギリシャみたいになるかも」とピエールも心配している。

 とはいえ、有給が減ったわけではなく、少なくとも3週間休み、秋や冬にも長期の休みをとる生活は変わっていない。

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 日本経済新聞は英国のフィナンシャル・タイムズからの影響が強いと言われている。世界にはウォールストリート・ジャーナルや英エコノミスト誌など、世界のビジネスマンが読むメディアが存在する。ヨーロッパには、パリで発行されているインターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙があり、発行元はニューヨーク・タイムズ紙だ。

 これらの新聞を読み比べてみると、やはり日本経済新聞には違和感を持つことが多い。大体、世界的メディアの一面トップは、共通する。一見、経済とは関係なさそうなシリア情勢やエジプト情勢も一面を飾る。周知のとおり世界の投資家たちは、世界情勢を読みながら重要な判断を下している。

 実際に欧米のビジネスリーダーと接すると、世界情勢に対する知識は豊富で、常に更新されている。英国の某カジノオーナーに最近、日本でのカジノ解禁について意見を求められた。彼は実に日本の政治にも詳しく、今回の参議院選挙で日本がどのように成長路線に転換していくかにも、かなり踏み込んだ意見を持っていた。

 それと、フィナンシャル・タイムズなどの一流紙には、時を得た大局的見方を与えてくれる教養溢れる社説やコラムが多い。インターナショナル・ヘラルド・トリビューン紙でコラムを担当する友人の教養には舌を巻くことが多い。最近では、米国家安全機関(NSA)の諜報活動を暴露した米中央情報局、CIA元職員のスノーデン容疑者が騒動で、フィナンシャル・タイムズ紙が興味深い社説を掲載した。

 同紙は社説の中で「国家に永遠の友なし。あるのは永遠の国益のみ」という大英帝国の首相、パーマストン卿の格言を紹介し、時代は違っても国益のためのスパイ行為は、どのような国家でもやっていることだと書いた。人権やプライバシー侵害が取り沙汰され、冷戦でもないのにと批判する論調が多い中、歴史的な見方を与えた。

 変化が激しく、先が読みにくい世界をどう読み解くかは、リーダーにとって命運を左右する大きな課題だ。それは日々行き交う表面上の情報の裏に何が潜み、どう読むかという問題でもある。安倍政権になって株価が急上昇した時、今後どうなるかで的確な予想をしたエコノミストは少なかった。事象の分析や解説はできても、行方を予想することは専門家といえども難しい。

 しかし、ビジネスの世界は、先を呼んで大胆な決断をすることが成功に繋がることが多い。今は特にリスクを負っても大胆な変革を行った企業が伸びている。その判断を下すには大局的な見方が必要だ。それはビジネスの知識だけでなく、もっと大きな見地からの見方が必要だ。

 だから、一見自分の仕事とは関係なさそうな分野であっても興味を持ち、日々、学ぶことが重要だ。欧米のリーダーたちのような多様な質の高い情報を集めながら、大局的な見地に立って目の前で起きる事象を見て分析し、物事を判断するスキルが今後はさらに重要になってくる。

186583_10アニエールのセーヌ川(船遊び)オーギュスト・ルノア ール 1875

 モネやピサロ、シニャックなど印象派の画家たちと縁の深いフランス北西部ノルマンディー地方では、「ノルマンディー印象派フェスティバル」(9月
29日まで)が開催中だ。未だに根強い人気を保つ印象派の画家たちの作品や生涯、彼らが描いた風景を紹介、夏にかけて多くの人々を集めそうだ。 

印象派に関する展覧会は、この欄でたびたび紹介してきたし、たぶんフランスで最も多く扱われるテーマの一つであり、最も集客力のある作家と作品群に恵まれた美術運動だったと言える。21世紀に入ってもその人気は落ちることを知らない。 

しかし、考えてみるとモティーフとなった風景や静物、あるいは人間たちは、ごく普通の日常生活の身近な存在であり、それだけなら安っぽい日曜画家の絵の範疇にでも入りそうだ。しかし、それがそうでない理由は、印象派の画家たちが、人や自然からくみ取ったものが、人間の本性に芸術的な刺激を与え続けているからに他ならない。 

今回の展覧会が注目しているテーマの一つは、水に映し出された風景だ。ルーアンの川に映し出された空や建物、舟、対岸の森は、その時々の太陽の光や波によって、さまざまな様相を見せる。ルーアン美術館では「まばゆい反射」と題する展覧会を開催中だ。 

モネ、ルノワール、マネ、カイユボット、シニャック、セザンヌ、ゴッホなどの水を扱った作品が紹介され、印象派絵画の一つの原点を見るようである。彼らが目を奪われた水に映し出された風景は、もっと古くから芸術の中心にあったとも同展では指摘している。 

カーン美術館では「波打ち際の夏」と題された展覧会が開催され、特に夏のヴァカンスで賑わう海岸を題材にした作品が紹介されている。砂浜で日光浴する人々、砂遊びに興じる子供たち、沖ではヨットを楽しむ人々など、産業化、都市化が急速に進むフランスで、自然を求めてやってきた人々と風景が太陽の光とともに描かれている。 

ル・アーブルにあるアンドレ・マルロー近代美術館では、「ピサロと港」と題する展覧会が開催されている。印象派の長老ともいうべきピサロは、ルーアンからル・アーブル港の流れ込むセーヌ川の風景を見事に描いた。当時、大量物流の中心だった川は、港として急速な発展と変化を遂げていた。その活気も伝わってくる作品群だ。 

その他、ジヴェルニーの印象派美術館ではシニャック展の他、日本画家、平松礼二の「睡蓮の池・モネへのオマージュ」展も開催されている。21世紀を代表する日本画家の平松礼二が描く睡蓮などを紹介しながら、ジャポニスムと印象派の関係を探っている。

 

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 民主主義は時として、超不人気の大統領が打ち出す政策に従うしかないこともあるらしい。歴代最低の25%の支持率を記録する左派のオランド仏大統領が公約に掲げた同性愛カップルの婚姻と養子縁組の合法化法案が、議会で可決・成立した。 

 昨年来、反対派は何度も大規模な抗議デモを繰り返し、いかに国民の多くが強く反対しているかを示した。日頃、リベラルのイメージの強いフランスで、反対派の抵抗が予想以上に強かった背景には、野党による与党の弱体化を狙った動きも指摘されている。

 しかし、反対派の多くは、けっして同性愛差別主義者でもない。デモ行進に参加する多くのフランス人が「同性愛は認めるけど、同性カップルによる養子縁組合法化には、絶対に反対」と言っている。子供には父親と母親が絶対に必要というのが彼らの主張だ。

 議会では、大統領率いる賛成派の与党が多数派を占めているため、法案は成立した。その審議の最中でも、同性カップルが子供がほしいというのは大人のエゴではないかという意見が相次いだ。友人で同性愛者のグサビエは「別に今まで差別を感じたことはないし、子供がほしいと思ったこともない」「自分の経験では、子供には父親と母親が必要だよ」と困惑気味だ。

 同性愛そのものに反対しているカトリック教会の影響の強いフランスでは、反対派は根強い。パリ東郊外のノジャンの高校に通う義妹の娘によると、学校で露骨に法案に反対する先生や生徒の発言に反発する声はほとんど聞かれないという。反対派は今後の抗議運動を続けると言っている。