安部雅延のグローバルワークス Masanobu Abe Global Works

国際ジャーナリスト、グローバル人材育成のプロが現在の世界を読み解き、グローバルに働く人、これから働く人に必要な知識とスキルを提供。

フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当する安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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 保釈中に日本から違法脱出した日産自動車のカルロス・ゴーン前会長が逃亡先のレバノンで、日本の司法の後進性を、いつもの饒舌さで世界に訴え、日本は揺れています。これは日本の司法制度に致命的欠陥があるという話ではなく、国際社会に向かって十分で適切な説明ができていないという問題です。

 まず、20年以上取材を続け、日産での社内研修に関わってきた私の見立てでは、今のゴーン被告は裁判で勝ち目がないと判断し、国外逃亡して国際世論を味方につけて逆襲しようと動いているとしか見えません。「日産社内の陰謀と不公正な司法の犠牲者」というストーリーを世界にアピールし、刷り込もうとしています。

 今、彼が主張している内容の中で、弁護士が取り調べに同席できない問題、人権を無視した長期拘留、そして特に妻に長期会わせない問題は、彼が同情を買うための考え抜かれた戦略です。そこには彼が倒れ掛けた日本代表する大企業の日産を再生してやったのに恩を仇で返すのかという怒りが日本の司法に向けられていることは明白です。

 逮捕、起訴理由をまったく受け入れられず、消化できない中で追い詰められ、逃亡を決意したと見られますが、彼の今の主張は後付けであり、本当は裁判で勝ち目がないことを悟ったからだと私は見ています。無論、逃げたゴーン被告の代償は大きいわけですが、逮捕、起訴された時点で自分で築いた城を全て失った彼に取っては、これ以上失うものがないと判断したといえそうです。

 後は高額の弁護士と世界的に知られたフランスの広報会社「イメージ7」を使い、世界に自分が不当な扱いを受けた被害者というイメージを刷り込むために全力で取り組む決意なのでしょうが、ゴーン被告は日本の発信力の弱さも折り込み済だと思います。

 日本の司法としては、重大犯罪者がどんな手口を使ったとしても国外逃亡されたのは歴史的汚点です。この問題は私が何度も指摘してきた日本人が信じる性善説のナイーブさからきている問題として、完全に改めるべき問題だと思います。

 そもそも日本は島国で国境を挟んで地続きに大国が存在しないために本来逃げ場はなく、逃げても必ず捕まるという認識がどこかにあります。ところが現実には国外逃亡は可能です。それが今回証明されてしまった形です。それに保釈中の被告への監視が甘かったことも非難されるべきでしょう。

 それは今後、早急に完全がされるでしょうが、最も深刻な問題はゴーン氏が世界に訴える日本の司法制度の後進性です。

 まず、日本の司法制度について世界はおろか、一般日本人でさえ、詳しくは知らないのが実情です。今回指摘されている自白の強要や冤罪を生むと批判される日本の人質司法は国際的に見て人権問題として度々議論されてきたことです。しかし、欧米と異なる社会的背景は無視されがちです。

 日本ではまず、逮捕された時点ですでに社会的制裁が課され、起訴されると本来無罪な人間でも決定的ダメージを受ける「世間体」という文化があります。アメリカのように逮捕されても弁護士を雇い、無罪を勝ち取るまでは罪人いうレッテルが貼られにくい社会とは違います。

 アメリカでは起訴に至る過程で大陪審があり、フランスなど欧州では予審手続きがありますが、日本の場合は起訴は非常に慎重に行われています。99%といわれる有罪率の高さばかりが指摘されますが、そもそも起訴率が低いことは強調されていません。

 逆に言えば、日本ではやたらと起訴しておらず、被疑者の人権は被害者の人権以上に守られているという側面は知られていないということです。人権弁護士は被疑者の人権擁護には熱心ですが、本来尊重すべきは被害者の人権とのバランスを欠いているといえます。

 さらに妻との接見禁止措置は、妻、キャロル容疑者がゴーン被告の重大犯罪である特別背任に深く関わっていたからです。そうでないケリー被告は東京で現在、妻と暮らしています。人権ではなく妻との接見禁止は当然の司法判断です。

 つまり、ゴーン氏が批判したことに同調して欧米の識者やメディアが批判する人質司法の背後にある事実は、ほとんど知られていないし、妻の接見禁止理由も報道されていません。このことを見ると日本は日本独特の歴史と文化からくる制度や手法がグローバルスタンダードに照らし、後進的という批判は当たりません。

 たとえば、日本人の働き過ぎへの国際的批判の中に会社や組織に搾取され、奴隷化しているという批判があります。ところが日本人が働くこと自体に大きな価値を置く民族だという側面は知られていません。しかし、日本人は海外に向かって、その事実をうまく説明できていません。

 これが今回の問題同様、深刻な問題に繋がっていると私は見ています。国際社会に向かって相手が分かる言葉で説明することは非常に重要です。それができなければ誤解を生み、国際社会で孤立します。それぞれ国によってコンテクストは違い、自分が当然と思う論理だけで説明しても相手は理解しません。

 日本人は欧米と違い普遍思考でないため、説明が非常にヘタです。この異文化対処の未熟さが国家を危うくすることを何度も経験しながら、改善されていません。日本が1933年に国際連盟を脱退した時もそうですし、私が実際に取材した1980年代後半のアメリカのジャパンバッシングの時も、日本は国際社会に向かった説得力を持つ論を展開できませんでした。

 今回も同じで、日本を熟知するゴーン被告は、日本人が国際社会で正当性をアピールするスキルが非常に低いことを知っているはずです。今はSNSという新しいツールが世論に大きな影響を与える時代です。正当かどうかより発信力の強さが勝負を決める恐ろしい時代です。間違えば袋叩きに遭います。

 日本の司法は「正しいことは理解してもらえるはず」という考え方を完全に捨て、客観的証拠と論理性を持って世界の誰もが理解できる言葉で発信する必要があります。すでに国外逃亡を選択したゴーン被告は捨て身です。あとは強烈な発信力で国際世論を味方につけることしか考えていないでしょう。

 確かに良識を持つ日本人なら、ゴーン被告の主張は無知と矛盾に満ちたものと映るでしょうが、それを国際社会に理解してもらう作業は別の問題です。日本は「どうして理解してもらえないのか」というモードに入り、ヒステリックになり理性を失って戦争に突入した過去が日本にはあります。

 日韓関係の悪化も同じようなモードに入りかけています。この場合は相手もハイコンテクストで、どうして韓国人の心を分かってくれないのかと思わせていますが、今は国際的コミュニケーション能力が自国の評価と行方を大きく左右することを知るべきです。

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 アメリカのトランプ大統領の打ち出す政策は支離滅裂と指摘されることは多い。特にプロと呼ばれる外交専門家やエコノミストは、悪い予想を繰り返しながら、結果は逆の場合も少なくありません。米中貿易戦争は今月15日、貿易交渉を巡る「第1段階」の合意に両国がようやく署名しました。

 一部関税措置を取り下げるほか、中国はアメリカからモノとサービスの輸入を拡大させることを決めたわけですが、アメリカが仕掛けたこの戦争は、多くの専門家が批判しました。

 たとえばアメリカの追加関税に反発する中国が報復関税をアメリカの農産物に課したのに対して、アメリカの農家は甚大な被害を受けると批判されましたが、アメリカ政府は補助金で農家を支え、支持を失っていません。

 トランプ政権発足の2017年以降のアメリカの雇用統計の推移を見ると失業率は4.8から3.5%に確実に下降しました。特に製造業の中心地、中西部では長期失業者が仕事に復帰する現象が続いています。トランプ氏がどこを向いて政治を行っているのかといえば、ワシントンやニューヨークではなく、伝統的なキリスト教の価値観を守り、真面目に働く労働者が住む中西部です。

 最近、興味深いニュースがありました。それは、世界の航空機史上を2分する欧州航空機大手エアバスが昨年、8年ぶりに米ボーイング社を抜いて首位に立ったというニュースです。エアバスは2019年に863機の民間航空機を99の顧客に納入し、前年度比の生産記録7.9%増だったことを明らかにしました。

 同社によれば、17年連続の生産増で、総受注機数は36%増の1,131機と、増加率は過去6年間で最高を記録したとしています。ボーイング社の苦戦の主な理由は、主力機の737MAXが事故続きで信頼を失ったことです。ライアン・エア610便墜落事故とエチオピア航空302便墜落事故を受け、737MAXは昨年12月に生産停止を発表しました。

 当然、競合機のエアバスA320 には追い風になりました。受注が増えたエアバスは大量受注残を消化するため、21年に世界で月間63機を生産する計画を明らかにしました。これだけ見ると、アメリカの航空機産業は大きなダメージを受けたように見えますが、そうともいえません。

 エアバス社は今年1月9日、2021年に向けた経営方針の1つとして、主力小型機A320シリーズ増産のため、米アラバマ州モビールにある生産施設に格納庫を増設するなど、総額10億ドル(約1100億円)規模の投資を行う方針を発表しました。

 理由の一つは、アメリカ政府が欧州連合(EU)の航空機補助金が世界貿易機関(WTO)協定違反だとして、欧州産の航空機に10%の報復関税を発動したことで、アメリカ国内生産を増やすことでアメリカで売る航空機の関税を回避しようというわけです。

 エアバス本社のあるフランスでは、雇用が伸び、関連部品メーカー1万社も潤っています。しかし、関税回避のためアメリカでの生産を増やさざるを得ないというわけです。アメリカにとっては自国のボーイング社が劣勢にあるのはよくないことですが、勝った相手のエアバスもアメリカで雇用を増やさざるを得ない結果を産んでいます。

 2017年アメリカ大統領に就任したトランプ氏は異例尽くしで選挙に勝利しました。当初は政治経験のないビジネス界出身のトランプ氏は、泡沫候補といわれ独立候補でした。共和党は選挙選の動向で泣く泣くトランプ氏を共和党候補に認め、結果、人気の高かったクリントン候補を打ち破り大統領になりました。

 この3年間、岩盤支持層といわれたのは、中西部を中心とした白人労働者階級、農業従事者、そしてキリスト教福音派の保守層です。何があってもトランプに付いていくという層といわれてきました。

 彼らの多くは、金融とITが牽引するグローバル化に取り残され、生産拠点が中国に移動し、失業に苦しんできた人々でした。中間選挙では共和党は中西部4州で支持を失い敗北していますが、大統領選ではどうなのか注目されるところです。

 中国だけでなく、欧州や日本にまで牙を剥いて、関税圧力をかけているトランプ大統領ですが、自分を選んだ支持層に答えるためなら、専門家に馬鹿にされても、どこ吹く風という印象です。興味深いのは、世界の誰もがグローバル化に乗り遅れないように必死だったところに、グローバル化にブレーキを掛けるような政策を連発しながら経済が好調という現象です。

 この結果を受け、国際協調主義を最重視するフランスなども、マクロン大統領が国益重視を口にするようになりました。世界が一つになるという耳障りのいい理想主義とは裏腹に恐ろしい勢いで勝ち組と負け組の格差を生んだグローバル化は、手に負えないモンスター化し、負け組はごみ箱に放り込まれる事態になっているとも言えます。

 いずれにしろ、トランプ大統領は、大統領選で支持層に何らかの成果を早い段階で示すために、日本に自動車関税のカードをちらつかせアメリカの兵器購入を迫ったり、サイバー攻撃をやめない中国に対して圧力をくわえ、中国がさらにアメリカ産の農作物や製品を購入するよう迫ったりすること可能性もあります。

 ただ、この3年間でトランプ大統領が世界の経済環境を大きく変えたことは事実でしょう。ビジネス界出身者がグローバル化にブレーキを掛け、軌道修正したというのは興味深いところです。

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 某日系大企業がアメリカの企業と提携したことで、アメリカ人との会議が増えた結果、議論が白熱することが多くなり、困っていると相談を受けたことがあります。よくある話ですが、そもそも日本人は議論が苦手です。

 無論、日本人は無意識に対立を避けて生活しているわけですが、いわゆる常識の共有度が高いハイコンテクスト社会で空気を読むことが重視されているとこととも関係しています。中には空気を読みながら、ギリギリ炎上しないレベルで他の人とは違った意見を述べて評価されようという人もいます。

 日本独特のコンテクストを持っていない外国人からすれば、ユニークな意見に見えますが、しっかり空気を呼んだ上で発言していることには気づかれません。

 和を持って尊しとする日本では、対立そのものが悪という風潮がありますが、アメリカの大衆的なテレビドラマを見ていると、夫婦を含め、ほぼ全ての人間関係に対立があるのが普通です。すると日本人はアメリカ人は不幸な人たちと映るわけです。

 実は日本人と会議をするアメリカ人にストレスがないかというと、日本人と変わらないレベルでストレスを感じています。会議中1度も発言しないで黙っている参加者に疑問を感じ、誰かが仮にリスクを冒して会議の流れを買えてしまうような反対意見をいうと、なぜかその場を収拾しようとする人が出たりします。

 米中貿易戦争は日本ではネガティブにしか取り上げられませんが、アメリカ人は相手とディールするのに対立が起きるのは正常と考えています。たとえ対立がある程度エスカレートしたとしても、その中から生産的な要素を引き出せればいいと考えているわけです。

 欧米人にとって最悪なのは、会議で意見をいわずに後でコソコソと少人数の話し合いが行われ、知らないところで物事が決められ、動き出すことです。それと自分と対立する意見を述べた人間に対して個人攻撃と受け止め、根に持つのは、もっと最悪です。

 無論、会議は勝負の場でもあります。相手を論破し、より優れたアイディアを出せれば、その人間は確実に評価されます。世界で優れたリーダーと呼ばれる人で論が立たない人間はいません。日本でも説得力のある論を展開する人間に全体が引っ張られる例は少なくありません。

 では生産的議論に最も必要なものは何かといえば、当然ながら目的を明確化することです。強いて言えば手段が目的化しやすい日本では、この目的観念を保つこと自体が大変です。特に会議が紛糾すると目的意識より、人間的戦いに陥り感情に支配され、冷静な議論ができなくなることも多々あります。

 とはいえ、まずそれ以前に反対意見を述べやすい雰囲気づくり、つまり自由に意見がいえる環境づくりが必要です。たとえば、日産自動車は会議のルールで「意思決定者は最初と最後のみ出席する」というルールを導入したそうです。

 つまり、意思決定者の発言は非常に影響力が大きく、反対意見を言い出しにくくなってしまう傾向があるため、参加者が意思決定者の顔色をうかがわなくてすむように意思決定者に退席してもらうというものです。

 さらに人間同士の感情的対立を避けるため、発言者が無記名でホワイトボードに意見を並べることで参加者が安心して積極的に議論に参加できるようになったというわけです。これは日本人がグローバル化する過程で導入されたものです。

 なかなか自分の意見をいわない日本人従業員に対して、自分の意見を組織内の人間関係などに左右されずにいえる環境づくりをしたという話です。実はこれだけではグローバル環境では闘えません。匿名性を高めなければ自分の意見をいえないというのでは話にならないからです。

 多分のこの方法は自分の意見をいわないタイ人とか東南アジアの人々にも有効かもしれませんが、会議も基本的に個人評価の対象という点では限界のある話です。西洋人のようにギリシャ、ローマの時代から議論することが当然の文化ではなく、下の者は上の者の事情や心情をよくくみとり推察する斟酌文化では、目的だけを共有する議論は困難が伴います。

 しかし、イノベーションが至上命題である今のビジネス界では、議論を活性化することは絶対に必要なことです。会議は説得力やプレゼン力を習得し、相手の論理の矛盾や不完全性を論破するスキルを身につける訓練の場です。特にグローバル環境でのリーダーシップには欠かせないスキルです。

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 2007年のフランス大統領選の決選投票で、初の女性候補、セゴレン・ロワイヤル氏を破って大統領に当選したニコラ・サルコジ氏は、従来の伝統的な大統領でないところが国民の支持を集めました。当時、国民は長期不況と高止まりしたままの失業率、治安悪化などを抜け出すため、従来の伝統的指導者ではないサルコジ氏を選びました。

 日本では当時、押しの強い自信タップリのサルコジ氏を嫌う人が多かったのですが、当時の彼は、レバノン逃亡中のゴーン被告と共通点が多い人物です。大統領就任まもなく、支持者の富豪が提供したプライベートジェットに乗り、地中海マルタで豪華ヨットに乗ってみたり、最初の夏期休暇を当時のブッシュ米大統領のアメリカの避暑地で過ごしたりして国民の批判を浴びました。

 彼が国民に示したヴィジョンは「努力する者が報われる国」でした。他の大統領やエリート政治家、高級官僚が国立行政学院(ENA)の卒業生、通称エナルクで埋めつくされているフランスで、官僚的ではない彼は普通の大学しか出ておらず、しかも父親はハンガリー少貴族の血統、母親はユダヤ系ギリシャ人という変わり種でした。

 つまり当人自身は人生を出発するにあたり、様々なハンディを抱えていたわけです。ゴーン被告はビジネスエリートを生むグランゼコールのポリテクニークやパリ国立鉱業学校の卒業生ですが、出生はブラジル生まれのレバノン移民のアラブ人でした。フランスには「レバシリ」というレバノン人、シリア人に向けられた蔑視用語があります。

 サルコジ氏は大統領就任後、妻のセシリアと離婚し、イタリア富豪の娘でトップモデルのカーラ・ブルーニーと3度目の結婚をしました。最初の妻、マリーは、コルシカ島の寒村の薬局の娘、2番目のセシリアは作曲家イサーク・アルベニスのひ孫でモデルや元老院議員秘書していた人物でした。

 野心の固まりのサルコジ氏は自分の出世に応じて、相応の妻を手に入れ、生活もセレブ化していったわけです。サルコジとゴーンの共通点はそれだけではありません。結果を出すためならどんな努力も惜しまないハードワーカーだったことです。ゴーン被告のあだ名はセブンイレブン、朝7時にはオフィスにいて夜11時前には帰宅することはないいわれていました。

 サルコジ氏は大統領時代、「サルコジは2人いる」といわれていました。朝、パリを経ちポーランドに立ち寄ってからモスクワに向かい、その後、セルビアに寄ってパリに同じ日に戻ってくるというようなスケジュールです。時にはアメリカ訪問の途中で、仏西部ブルターニュのレンヌに立ち寄り、抗議デモを行う漁業関係者の説得に当たったこともあります。

 人一倍の野心と努力を惜しまないワードワーカーで、のんびりゴルフを楽しんだり、執務室で部下の報告を聞くような仕事はしていませんでした。だから、まじめに働く人の努力が報われる国を作りたいということで、閣僚にも個人的野心が強く努力家の女性や移民、若者を閣僚に起用し、フランス国民を驚かせました。

 しかし、個人的野心の強さは諸刃の剣でした。サルコジもゴーンも頂点に君臨し、賞賛されたにも関わらず、2人とも転落が待っていました。2007年の大統領選挙でリビアのカダフィ大佐から5,000万ユーロに及ぶ違法な政治献金を受けた疑いが浮上。2018年には汚職、違法な選挙資金調達、リビアからの公金の隠匿の容疑で訴追されたました。

 左派のオランド候補に敗退した2012年の大統領選で広告代理店を通じて不正会計処理を行い、法定上限を超える政治活動費を使った疑惑での捜査が続いています。本人は妻、カーラ夫人の強い要求もあり、政界を引退していましたが、司法の追求を受け続けています。

 一方、日産、ルノーの、三菱自動車のトップに登り詰めたゴーン被告は、日産会長就任後の2010年に最初の妻リタとの関係が終わり、不倫関係になったキャロル現夫人と再婚していています。リタは地味だが多忙な夫を支え、家族を守り、内助の功は高く評価されていました。

 しかし、頂点に登り詰めたゴーン被告は、ニューヨークのレバノンの上流階級に出入りするキャロル現夫人と出会い、猛烈なアプローチを受け、セレブの世界に引き込まれました。結果、アメリカの経営トップの報酬と自分の報酬を比べるようになり、高額報酬を要求するようになり、別荘やクルーザーを買い漁る成り金と化していきました。

 アメリカのような高額報酬を出す文化のない日本で、有価証券報告書未記載や会社の資金の私的流用など、姑息な違法手段を使ったことが裏目に出て、逮捕、起訴され、全ての地位を追われ、今は国際指名手配を受ける犯罪者に転落し、再起の道はなくなったようにも見えます。

 どこで、この2人は人生を間違ってしまったかといえば、強烈な野心と人並み外れたた努力で手にした財産と女性が自分の人生を狂わしたということでしょう。つまり、両者に欠けていたのは、フランスでいうノブレスオブリージュ(高貴の義務)です。特権を持つ者は見返りを要求しない奉仕を行う精神です。

 サルコジもゴーンも「俺たちはここまでやったのだから、それなりの報酬を得て当り前だ」というでしょう。しかし、ここが資本主義の限界です。個人の欲望を満たすのが原動力の資本主義からはノブレスオブリージュは守れないようです。私はゴーンをレバシリと呼びたくはありませんが、社会的弱者への感性は持ち合わせていないように見えます。

 努力は報われるべきでしょうが、それは報いる方が決めることで、自分で決める者ではないはずです。もし、日産の復活に無心で取り組み続ければ退任する時に予期せぬほどの報いを受けたはずです。それに報われた者が、それを社会に還元することこそ持続可能な発展を遂げられるという原理を逸脱したことで身を滅伍したともいえます。

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 ヘンリー英王子夫妻が主要公務から退くと表明した衝撃のニュースは、何よりもエリザベス女王ら英王室トップとの相談がなかったことが、英王室に怒りと戸惑いを与えているようです。13日に行われた女王を中心として対応を話し合う家族の集まり「家族サミット」の結論が注目されます。

 エリザベス女王の声明では、ヘンリー王子の経済的自立と王室の公務から退くことを認めるとして、移行期間に入る旨が伝えられています。今後、さらに具体的な結論を出すには時間が掛かりそうです。

 君臨すれども統治せずの英女王ですが、世界最年長で最も長く女王の座にいるエリザベス女王は、何度も王室の試練を乗り越えてきました。近くはダイアナ妃がチャールズ皇太子と離婚し、さらには事故死した時の対応を巡って、対処を間違い、国民からの強い批判に晒された事例があります。

 BBC放送は、主要王族の「引退」は異例の事態であり「家族サミット」は王室の伝統や在り方を変え得る「歴史的」なものとなりそうだと報じました。東部ノーフォークにある女王の邸宅で開かれた「サミット」の参加者は、女王のほかヘンリー王子本人(妻メーガン妃はカナダから電話で)、王子の父チャールズ皇太子、兄ウィリアム王子だったとしています。

 ヘンリー王子夫妻が表明している「主要公務から退き、働いて金銭的に自立する」との夫妻の意向を受け、今後の夫妻の英国での地位や役割、財政問題などについて話し合われたとされる家族サミットですが、制度が違う日本であれば天皇家が集まって、皇室の伝統やあり方を議論するなどありえない話です。

 警備費用などの経済支援については宮内庁と政府が協議する問題ということで、英国の場合の結論を英政府がどのように処理するかも注目されるところです。

 王室引退はメーガン妃が王室内から受けたいじめや、英国のイエローペーパーによる人権を無視したパパラッチ報道で精神的に追い込まれたことが報じられていますが、問題なのは王位継承順位6位という高位のヘンリー王子に引退をどう受け止めるかという問題です。

 議論は、王室としての公務はしないが、地位は保持し、警備を含め、税金を使った経済支援を続けるというのも国民が受け入れにくい一方、王室から完全排除し、民間人としてしまうのは、高位王位継承者を減らすだけでなく、人気の高いヘンリー王子を完全追放し、黒人の血を引くメーガン妃を排除する人種差別との批判も免れません。

 エリザベス女王は日本人が理解しやすい王室の役割と義務を最優先に考える人物で、個人の本音を超えた公人として、国体保持と英連邦の君主としての役割に徹していることは日頃の言動からも伺えます。

 しかし、その子供のチャールズ皇太子はダイアナ妃と結婚しながら、カミラ女史との交際を続けた過去があり、アンドルー王子は児童売春疑惑で公務を退いています。

 夫妻の「爆弾宣言」に、12日付サンデー・タイムズ紙によると、ウィリアム王子は友人に「悲しい。人生でずっと弟と支え合ってきたが、もうそうすることはできない。僕たちは離れた存在になってしまった」と胸中を吐露しています。ダイアナ妃に共に育てられ、苦労を共にしてきた兄としては正直な感想と言えるでしょう。

 エリザベス女王の意向を受け、公人としての義務を果す王室メンバーは今、減る一方です。伝統やしきたりという形だけで形骸化が進めば、英王室の存続は危うくなることが予想されます。それはお金の問題だけでないはずです。

 フランス的にいえば、個人の自由がノブレスオブリージュ(高貴の義務)の意識を上回るという話です。階級社会を続ける英国では労働者階級の通俗的好奇心を満たすイエローペーパーが盛んで、王室はしばしば、その犠牲者になるわけですが、メーガン妃には到底消化できないものなのでしょう。

 そこには彼女の無知もあったでしょうし、個人の自由最優先のリベラルなアメリカ文化の中で育ち、英王室の目的である英国の威信と発展という公的目標を理解し、共感することができなかった部分もあったと思われます。ただのシンデレラストーリーと受け止めていた可能性もあります。

 ようやくブレグジットの実現が見えてきた英国ですが、今回の問題で英王室並びに英国民は、国体に関わる重要な選択を迫れていることだけは確かと言えそうです。

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 このブログで何度か、高度技能人材にとって日本はアジアで最も働きたくない国に選ばれたことについて書きました。実は高卒がほとんどの日本が受け入れる外国人技能実習生についても、受け入れた会社からの逃亡や自殺を含め、厳しい実態があることも無視できない問題です。

 今月12日、日本企業や地方自治体など1,000人を超える関係者を率いてベトナム訪問中の二階俊博自民党幹事長がフック同国首相と会談し、日本でのベトナム人の就労拡大で一致したことが報道されました。同時にベトナム人の働きやすい環境整備のため、両国政府が悪質業者の徹底排除で協力することも確認したといいます。

 日本が受け入れる外国人技能実習生が国内で行方不明になる問題は何年も前から常態化し、いわゆる言い方は悪いのですが、最初に受け入れた企業から無断で「逃亡する」実習生問題は大きな問題となっています。その状況は深刻化し、日本のベトナム人コミュニティーでは、自殺者の増加も指摘され、本国ベトナムでも悲しいニュースとして報じられています。

 厚生省のホームページによれば「外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う”人づくり”に協力することを目的とする」とあります。

 バブルの時代から外国人労働者受入れをしてきた日本が2017年に施行した新しい外国人技能実習制度は、日本の労働者不足という事情とも重なり、受入れ人数は増える一方です。しかし、その影で多くの悲劇が起きていることも無視できません。

 今回のベトナムでの合意の中にある悪質業者の排除というのも、実習生を日本の企業へ仲介する団体であるベトナム側の「送り出し機関」と日本の管理団体である「協同組合」に忍び寄る実習生を食い物にする犯罪組織の摘発が念頭にあります。不法就労を含め、移民、難民を標的とした悪質な人身売買組織は世界中に存在し、日本では反社会勢力の収入源にもなっています。

 実習生の多くは高卒で農家出身者。親の田畑を担保に渡航に関わる費用を捻出しているわけですが手数料も発生しています。その手数料は主にこの送り出し機関に支払うもので、ベトナム政府は上限を3,600ドルと規定していますが、実際には違法なブローカーに多額の手数料を払うケースが多く、実習生は日本到着時にすでに1万ドルの借金を抱えている例も少なくないと言います。

 しかし、逃亡や自殺問題は借金と犯罪組織だけの問題ではなく、受け入れた日本企業の問題も検証する必要があります。日本の実習生の間では日本は来る前はバラ色、来てからはブラックという言葉が共感を受けているといいます。理由は来日前は日本は「夢の国」というイメージしかなく、実際の職場は非常に厳しく、差別もあり孤立感も深刻だからです。

 多額の借金で人質にされ、逃げ場がなく、それでも生活をギリギリまで切り詰め家族に送金し続け、結果、無断逃亡や自殺が起きてしまうというわけです。受け入れる日本企業が知るべきは、まずはベトナムの事情です。8割が農業従事の第1位産業のベトナムでは産業化社会は都市部だけで、人々は大量生産で質の安定した製品を供給するなどの経験はありません。

 私の友人はベトナム中部ダナンの日系企業の管理職ですが、定時出勤そのものでも苦労しています。日系建設会社では、何度も支持し確認しなければ柱を垂直に立てるのも難しいといっています。もっと深刻なのは、身につけた技能を将来に役立てるという考えそのものがないことです。

 つまり、日本側は技術供与しているつもりでも、本人たちはお金になれば、まったく異なった職種に簡単に転職しようとし、プロ意識は育たないという問題もあるわけです。性格は8割が仏教徒なので日本人に似て温和ですが、非常にナイーブです。日本でのカルチャーショックは想像できないものがあります。

 ところが、グローバルマネジメントの知識もなく、丁寧なコミュニケーションを取らない企業も多く、本来、日本人に似て本音を喋ろうとしないベトナム人たちは、自分の中に溜め込み、限界が来てしまうというわけです。労働者不足が企業の死活問題というなら、来てもらえる外国人に対して感謝こそすれ、上から目線は大きな間違いです。

 まず、外国人が日本人と同じように働くという観念は棄てるべきです。金を稼ぎ、技術を身につけるために来日したのに借金の重圧も加わり、異文化の中で生き抜いていくことは容易なことではありません。結局、彼らを戦力として活かせなければ企業自体がダメージを受けるわけですから、どのような育成方法が有効か考える必要があるということです。

 中でもコミュニケーション問題が最も根幹にあるといわれますが、それもベトナム語や日本語という言語の問題だけではありません。彼らからのフィードバックにどこまで真剣に耳を傾け、職場を改善していくかがもっと重要なことです。受け入れる側も根本的な意識改革が必要です。

 働き方改革は日本人だけでなく、外国人受入れが後押しして施行されたものです。ベトナム人実習生からブラックといわれないためにも徹底した改善がなければ、悲劇は起き続け、アジアの人々が日本を敬遠する日も来ると思われます。

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 恵まれた環境に育った優等生は、一般的に嫉妬に敏感ではないといわれます。なぜなら、小さい時から嫉妬を感じるシティエーションが少なく、少々努力すれば目標に到達できる能力を先天的に備えているからです。負けず嫌いで競争心はあっても嫉妬には鈍感です。

 実は日本人は相対的に能力が高く、世界30カ国以上で取材やコンサルの仕事を経験してきた私からみれば、特に日本人のトータルな能力のボトムラインは、世界一といっても過言ではありません。某日系電機メーカーのフランスの日本人工場長が「日本なら地元のおばさんたちが1週間で覚えてくれる仕事を3カ月経ってもマスターできない」と私に苦言をていしていたのを思い出します。

 日本は長年、欧米諸国を日本より進んだ先進国と仰ぎ見てきた経緯がありますが、階層性の強いヨーロッパの労働者階級の質はけっして高くなく、移民で構成されるアメリカは教育面で様々な問題を抱えています。昨年亡くなった中曽根康弘元首相が30年以上前に、アメリカについて「この国では黒人とかがいて平均的な国民レベルが低い」と発言し、顰蹙を買ったことがあります。

 私は何回かこのブログに書きましたが、日本人はバブル経済の1980年代を頂点に衰退が進み、失われた20年を取り戻せないでいるという悲観論に反対しています。どこの国でも経済成長率が非常に高い時期が永遠に続くことはなく、日本は成熟期に入っただけのことで、中国がアメリカに次ぐ世界第2位の国になったからといって、日本はもう駄目どということは何もありません。

 中国共産党一党独裁で突出した人口の中国は、われわれ自由世界が信じる価値観とは相いれないところで成長しており、日本が社会主義国家にならない限り、参考にも手本にもなりません。日本で欧米からの観光客が増えているのも、今となっては上から目線で日本を見る欧米人が激減したからです。

 日産の前会長のゴーン被告の国外逃亡で世界の耳目が集まっていますが、たとえば、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、ゴーン被告と並び、アメリカ人の日産のケリー前代表取締役が起訴されている事情もあり、日本の司法に批判的な面もある一方、トップの報酬が青天井のアメリカからすれば、会長の公私混同も大した話ではなく、社内で解決すればいい程度の問題というスタンスです。

 しかし、その日産で過去に社長を務めた故辻義文氏は公私混同を徹底して排除したことで知られています。会社の管理監督をいう前にトップのモラルの高さがあったわけで、大企業トップがモラルのない守銭奴というのはありえない話です。個人欲望を全肯定しない公人としてのモラルの高さが日本を支えてきたといえます。

 先天的な能力、道徳観念の高さは、簡単に手にできるようなものではありません。つまり、その2つを持っている国は、羨望の眼差しで見られ、同時に半世紀以上、極端に衰退することなく高い水準で国を保っていることは、国際的には非常に高く評価され、同時に嫉妬の目で見られていることも知るべきです。

 嫉妬は当然、非建設的ですから、たとえばゴーン被告が逃れた遠いレバノンの地から日本の司法の不公正さが連日叫ばれていることについて、彼の主張に同調するような海外メディアもあったりします。日本を下げしめる論調の背後には日本への嫉妬もあることを知るべきだと私は思っています。

 それと今はネット時代で日本に特派員を置かなくても日本の報道を鵜呑みにした報道も海外ではよく見かけます。つまり、日本が自虐的で自己批判的な報道をすれば、それがそのまま海外でコピーされ、報じられる可能性もあるということです。

 ゴーン被告が強烈に批判する日本の司法の後進性や人権無視、外国人差別、さらには政府が日産クーデターを後押ししたという主張を利用して、長期政権を続ける安倍政権を打倒した左派系メディアや人権弁護士がネガティブ報道をしているケースもあります。

 これはまさに自殺行為であり、自ら世界に醜態を晒し、評価を貶めているというしかありません。その種の報道は、日本に嫉妬する人たちを元気づけているのに優等生の日本は嫉妬に敏感ではないためにそのことに気づいていません。

 どんなビジネスマンとして商才があり、結果を出したとしても、公人としてのモラルを持ち合わせていないリーダーは日本では尊敬されません。自家用ジェットを乗り回し、世界中に別荘を持ち、贅沢三昧を見せつけるリーダーに憧れる風潮も日本の若者の間にはありますが、それは日本の伝統文化とはいえないものです。

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 日産自動車は20年前から日本企業であると同時に、フランス政府が筆頭株主の自動車メーカー、ルノーの傘下に入ったグローバル企業です。資本提携といえば同格なように見えますが、日産の43・4%の株を所有するルノーに対して、議決権を持たず15%しか株を所有しない日産はルノーの連結子会社に甘んじる立場です。

 日本を違法脱走したゴーン被告が、メディアに対して潔白を主張していますが、100歩譲ったとしても、やっぱり金融商品取引法違反及び特別背任罪で逮捕、起訴したことに無理があったと思った日本国民はいなかいはずです。彼は自分のプライドを傷つけられたといいますが、日産のプライドは傷ついていないなどとは到底いえません。

 日本で20年前に2万人の従業員解雇を起こった再建屋のゴーン被告は、ルノーの副社長時代にもベルギーにある最新鋭の工場を彼の計算上では不要という判断で閉鎖しました。3,000人のベルギー人が職を失い、ベルギー政府を激怒させたことがあります。

 ブラジル生まれの移民3世のゴーン被告は、最終的にフランスが誇るエリート校、ポリテクニーク(理工科学校)と鉱山学校というフランスのスーパーエリートしか持ち合わせない学歴を手にし、最終的に世界トップの自動車メーカー、アライアンス企業のトップに這い上がり、ヒーロー扱いされました。

 持ち前の優れた頭脳と強靱な精神力、強烈な闘争心と自信、生い立ちから得た異文化耐性と、グローバル企業を率いるリーダーとしての条件を完璧に備えた希有な存在でした。その実績からもフランス人は誇りに思っていましたが、今、彼が期待するような同情と支持の声はフランスからは聞こえてきません。

 私は自分の専門であるグローバルリーダーシップやグローバルマネジメントの観点から、今回の事案を冷静に見てきました。このブログで昨年1年間、何度か指摘しましたが、ゴーン被告が自覚なしに身を滅ぼすような違法行為に走った原因を単にガヴァナンス問題で片づけて欲しくないと考えています。

 ゴーン被告が持つ頭脳や強靱な精神力、闘争心、自信、グローバルマインド全てを持ち合わせた人間は見つけることは容易ではありませんが、全ては諸刃の剣です。なぜなら多くの人が知らない世界に彼はいるため、誰もコントロールできないからです。

 議論すれば頭をフル回転させて凄い勢いで理路整然と反論し相手を圧倒する彼は危険性もはらんでいます。特別な能力を持つ者の常ともいえるもので組織で管理できない存在です。そのような人間に強力な権限を与えた場合、一時的に結果を出せたとしても私物化し、独裁化するリスクがあります。

 リーダーシップやマネジメントの観点からいえば、カルチャーダイバーシティのデメリットが出てしまったともいえます。日本は基本的に御神輿経営で国策会社といわれた日産のような古い大企業には、まだまだその体質は残っています。忠誠心と愛社精神、長幼の序に支えられ、トップや上司を担ぎ、目一杯忖度しながら自分を評価してもらうために働く体質は、むしろ美徳とされてきました。

 一方、フランスは欧米トップクラスの中央集権的体質を持つ国で権限を集中させ、そのトップが決めることに従う国です。国際機関のトップにフランス人を送りたがるのも主導権を握るためです。この異常なまでのトップ権限へのこだわりが、経営統合を諦めないルノーとフランス政府に現れています。

 彼らにとってゆるやかなアライアンスなど何の意味もありません。「私がやるか、あなたがやるか」で「私たちで協力してやる」という選択肢は、フランス人にはありません。その協調性のなさが、北大西洋条約機構(NATO)を出たり入ったりし、イラク戦争に反対したことにも現れています。

 つまり、御神輿経営で上に従順で忠誠心を重視する日本と、意思決定の権限を集中され、強力なリーダーシップを特徴とするフランススタイルが合わさったのが日産・ルノーのアライアンスだといえます。メリットは互いにないものを補完し、うまくいけば強力なグローバル企業を生み出せることです。

 一方、強力な権限行使スタイルのリーダーが、日本の御神輿経営で担がれれば、リーダーは独裁化し、制御不能に陥るリスクもあります。ゴーン被告の日産の後半の10年は、そのデメリットが表面化し、もはや日本側の経営幹部では制御不能なほど私物化が進み、モンスター化したと見えます。

 つまり、元から、このアライアンスはゴーン氏の性格だけでなく、フランスの体質と日本の企業文化の融合に爆弾を抱えていたということです。20年前、ルノーに救済を依頼した日産の塙会長にフランスのリーダーシップの特徴や日本企業との親和性への理解があったとは到底思えません。

 逆に女性的体質の日本は、家族を建て直すために強力なリーダシップと能力を持つ男性を夫に迎えたものの、再建と共に異常な支配欲と過信が鼻についた妻は、過去の再建に感謝の言葉もなく、保身のためにヒステリックに無情な追い出しにかかったといえそうです。

 無論、日産の経営統合を迫ったフランス政府のマクロン経済相が、2017年に大統領に就任したことで、ゴーン被告への経営統合に対するプレッシャーが決定的に強まったことが想像されます。経営統合は避けたい日産にとってはゴーン追い出しの動機となったのも事実でしょうが、不正はそれ以前から恒常的に存在しており、独裁体制は確立していたといえます。

 ガヴァナンス強化が今の日産の至上命題といわれますが、日産を復活させた最初の10年で、新たな人材をトップとして立てられなかったルノー・日産双方の責任もあると思います。ベイルートで記者会見を行ったゴーン氏を見て、フランス人の私の妻は「彼は法の上に立つ神のように振る舞っている」「あれでは弱腰の日本人幹部は一溜まりもないでしょう」といいました。

 無論、ゴーン被告が自分の実績を自画自賛するのも大きな間違いです。彼は本来、自分の国際的評価を高めてくれた日産の社員に感謝すべきでしょう。彼らの優れた技術、勤勉さ、同僚社員の首を切ったゴーン前会長と会社に対する献身的に尽くした社員あっての復活だったことを無視べきではありません。

 しかし、御神輿の上に担いで神にしたのは日産側だともいえます。国の経済レベルも企業実績も上の日本の日産が、いつまでもフランス・ルノーの軍門に下っている不自然な状態を、モンスター化したゴーン被告の強権の元で放置したことは両者にダメージを与えたと考えられます。

 日本では日産幹部が手に負えない案件で、政府や司法の力を借りたことは当然という論調もあります。しかし、外資呼び込みに積極的な日本政府としては、今回のことで外資に嫌われるのは避けたいとか、司法もゴーン被告に逃げられただけでなく、さんざんこき下ろされ、名誉回復が喫緊の課題です。

 そんなことを心配するのは勘違いもいいところです。技術を不当に盗まれる中国から外資が引き上げた話はありません。今の日本は欧州諸国からは羨望と嫉妬の目で見られていることを知るべきです。むしろ、日本は国家主権と尊厳、アイデンティティを強化する方が、グローバル化では大切なことを知るべきだと私は考えます。

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 英国議会下院は今月9日、政府が欧州連合(EU)と合意した国際条約「離脱協定案」を実行に移す関連法案について賛成330票、反対231票で紛糾することなしに可決しました。2016年6月の国民投票以来、3年半に及ぶ政治議論は終止符を打ち、上院での可決で今月末をもってEUから離脱し、移行期間に入りることになりました。

 一方、同じ英国でもう一つの離脱が明らかになりました。それは同国のヘンリー王子とメーガン妃夫妻が今月8日、高位王族の地位から退き、北米で過ごす時間を増やすと発表したことです。アフリカ系の血をひく米国人女優のメーガンさんとの結婚は世界的に注目され、英王室にも歴史的インパクトを与えました。

 その夫妻が高位王族としての地位から離脱し、経済的独立に向けて取り組むと宣言したことは、英王室にとっては打撃でないはずがありません。ただし、宣言の中で引き続きエリザベス女王を支援する旨が表明され、慎重に移行期に入るとしています。

 英国はようやくブレグジットの移行期に到達したと同時に、王位継承権6位でシニアメンバーと呼ばれるヘンリー王子夫妻が、高位王族から離脱するための移行期に入るということで、今年は離脱と移行期の年になるわけです。

 離脱といえば、アメリカのトランプ大統領が2017年1月就任以来、離脱を連発してきました。まずは復帰も噂される環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、さらに温室効果ガス削減のパリ協定、対ロシアでは中距離核戦力(INF)廃棄条約、イラン核合意などから次々に離脱しました。

 国を超えての経済的依存度が高まり、地球規模での解決が望まれる解題が増え国際協調の重要度が増すことに反比例して、国際合意からの離脱現象が、この数年続いています。背景には多くの合意が関係国の国益を十分尊重していないことや、履行自体に問題があるからとされています。

 同時にデジタル革命時代の本格到来とグローバル化の加速で、われわれを取り巻く環境が急激に変化しているため、様々な合意の妥当性の再検討が必要になっている面もあります。世界のパワーバランスも大きく変わりました。今は大国アメリカのいうことにどの国も従う時代ではなくなりました。

 国益や国際合意に大きく左右されるグローバルビジネスは、この離脱や移行期間の動向に敏感になるべきですが、ビジネス界でも新たなテクノロジーにより業態そのものの変更を迫られ、さらには巨額の資金調達のための資本提携や他業種同士のM&Aなど、企業再編の動きも加速しています。今後も過去に無いレベルで変化が起きることが予想されます。

 つまり、日本人が大好きな安定、安心ではなく、激動の時代にわれわれは生きているということです。これまで当り前だったことが、当り前ではなくなり、現状維持が命取りになる可能性もあるということです。そんな時代に必要なのは変化に対するポジティブマインドです。

 結婚、離婚を繰り返す欧米人は、次の結婚にはさらなる幸せが待っていると超ポジティブ思考です。アメリカ人の友人は長年住んだ生まれ故郷を離れる時、もっと素晴らしい人生が待ち受けていると思うといいます。ヨーロッパを脱出し、自分たちの信仰信念を貫き、より良い暮らしを求めた彼らの歴史が垣間見えます。

 彼らは離脱や離婚のリスクはあまり考えないということです。何事もやってみないと分らないというわけです。歴史の古い日本や大陸ヨーロッパには、その精神は希薄です。人間、悪い経験が重なればリスクを恐れるようになります。変化への耐性がないともいえます。しかし、今は変化を楽しみ、ポジティブの取り組むことが求められています。

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 日本から違法国外逃亡した日産自動車のゴーン元会長のベイルートでの8日の記者会見について、日本、レバノン、フランスといった当事国がどう動くかなど、見えない部分もありますが、今の時点での私なりの印象をメモしておきたいと思います。

 第1印象は、ゴーン被告が自ら無罪とする具体的反論は示されなかったことで世界的注目度の高い事件なだけに肩すかしをくらった印象でした。日本の報道機関はテレビ東京だけが会場入りを許され、十分な質問もできず、ゴーン被告が支援を期待する欧米やアラブメディアの報道が今は先行しています。

 ゴーン被告が終始一貫主張する日本の不公正な司法に苦しめられたという主張は、自分の体験を話しているわけですが、2018年暮れの逮捕は、自分を追い出すために日産幹部が日本政府に泣きついて実行されたクーデターだという主張は、当人の想像の域を出ない抽象的な反論に終始しました。

 世界中で高額の弁護士を雇っているゴーン被告としては、まだ、係争中事案なので、公にできないこともあると考えているのか、あるいは問われている金融取引法違反や会社法違反について裁判で勝てる説明を本当は持っていないのか、日産クーデターの決定的証拠もないのか明確にならない会見でした。

 第2の印象は、ゴーン被告は自分が法律の上にも立てると勘違いしていることです。合法か違法かは自分が決めるという想像できないほどの傲慢な態度です。フランスの国営TVフランス2は「自分を賞賛するための会見だった」といっていますが、日本の司法への怒りはフランスにまで向けられました。

 ベルサイユ宮殿で行われたド派手は結婚パーティーの資金の出所について、「ボロボロだったベルサイユ宮殿を、この私の金で再建してやったのに」と、フランス人もあっけにとられる発言をしました。さらに自分を追い出した後の日産もルノーもボロボロだともいいました。

 今のところ、世界には国際司法裁判所や国際商業裁判所あるものの、1国で有罪になりそうなので自分に有利となる他の国に逃亡して、そこで裁きを受けるという行動には無理があります。無論、転んでもただでは起きないゴーン被告の行動は要注意です。

 それでもゴーン被告は、たまたま巨額の財産があったので億という金を費やし日本を違法脱出できたわけで、それが三権分立もない北朝鮮のような国ならともかく、先進国の日本から金の力で強引に違法脱出した時点で、彼は自分の正当性を訴える場を放棄し、どんな主張も説得力を失っています。

 もし、日本の司法のあり方の問題ではなく、彼が一貫して主張する無罪の決定的証拠を示せれば、多少事態は動くかもしれませんが、会見を見る限り、本当に証拠を持っているのか疑問です。レバノン政府に迷惑をかけたくないので関与した日本の政治家の実名は明かさないといいますが、その政治家が関わった決定的証拠を名前をふせて公表することも本当は可能なはずです。

 今回の問題は、ゴーン被告が身を持って体験した取り調べに弁護士が立ち会えないとか、罪を認めなければ保釈されない、妻子にも会えないという人質司法への強烈な批判と、実際に無罪を主張している起訴された罪状や、違法国外逃亡したことについては分けて考える必要があるということです。

 国外逃亡は国家主権を脅かす罪です。私自身はゴーン氏が無罪を主張し、裁判で争うとした主張に結果的に騙され、逃亡を許した日本の司法にも問題はあるし、取り調べ方法や保釈中の監視、出入国管理強化をどうするのかなど改善点は多いと思います。しかし、それとゴーン被告の有罪、無罪は同じ土俵で論じられる問題ではありません。

 ゴーン被告の記者会見を見ながら、彼の強権的リーダーシップに音を上げていた日産幹部を想像するに文化の違いも含め、彼らに同情の余地もあります。米英のような民主的統治体制ではなく、権限が集中する中央集権的フランスで身につけたゴーン流リーダーシップは、倒産寸前の企業再生では有効でも成長拡大フェーズでは限界があったと見えます。

 今回の記者会見は、倒れかけた日産の救世主として日本に乗り込み、奇跡の再生を果たしたゴーン元会長に対して、邪魔になると不公正な日本の司法の場に晒したことへの恨みつらみの感情が渦巻いたものでした。それも自国民にはそんなことはしないのに、外人差別と排除が裏にあると理解しているようです。

 ならば余計に日本の司法の場で持ち前の闘争心で闘うべきだったでしょう。自尊心が傷つけられたといいますが、その前に彼は独裁者で法律の上に立つ神になっていたということです。

 ただ、世界に同時中継された記者会見の場でゴーン被告に強烈に批判された日本の司法は、なんらかのメッセージを世界に発信すべきでしょう。それにかつて田中角栄を逮捕し、司法の独立性を示した日本で、なんらかの政治的意図が司法に影響を与えたとすれば、それは明らかな日本の劣化として受け止められるべきでしょう。

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    パリ11区シャルリー・エブド本部のあった現場(写真奥右側の建物)

 今から丁度5年前の2015年1月7日午前11時20分頃、パリ11区にある風刺週刊紙、シャルリー・エブド本部をカラシニコフ銃で武装した2人の男が襲撃し、周辺に住民は30発以上の銃声を聞き、背中が凍りついたと証言しました。

 2人は玄関口にいた警備員を殺害し、上階に駆け上がり、その場にいた編集者、風刺漫画家、コラムニストなどを皆殺した上で逃走し、その場に駆けつけた警官を含む計12名が犠牲になりました。殺害された中には世界的に有名な風刺漫画家もいてアメリカのメディアの仕事もしていました。

 テロはそれで終わらず、翌日、パリ南郊外の私が30年近く前に短期間住んだことのあるモンルージュで別の男によって女性警官1人が射殺され、その翌日にはパリ東郊外のユダヤ食品スーパーで立て籠もり事件が発生しました。特殊部隊が強行突入したものの4人が殺害され、一連のテロの容疑者が全て繫がりを持ち、計画的に実行されたことが明らかになりました。

 その年の11月には、死者130名、負傷者300名以上という史上最悪のパリ同時多発テロが起きました。その年だけで、ほぼ毎月小規模なテロが発生した一方、フランスはシリアやイラクの紛争地域に向かうイスラム聖戦主義過激派の戦闘員の最大の供給国になりました。

 実はシャルリー・エブド襲撃テロ7周年の追悼の日を前にして、今年に入り、すでに2件のテロ事件がフランスで起きています。1つはパリ南郊外ヴィルジュイフで今月3日、男が刃物で通行人を襲い、1人を死亡させ、2人が負傷した事件で22歳の容疑者の男は現場に駆けつけた警察官によって射殺されました。

 捜査当局は、男には深刻な精神疾患があったことも認めている一方、容疑者が所持していた鞄の中からイスラム聖戦主義思想に関する本が見つかったことから計画的犯行と断定、テロとして事件の背景の捜査を開始しました。

 容疑者の男は、大型スーパー、キャルフールの駐車場付近で散歩中の夫婦やジョギング中の女性を襲い、犯行当時に「アッラー・アクバル(アッラーは偉大なり)」と叫び、その場で自分はイスラム教徒だと叫んだいった通行人だけは襲わなかったとそうです。男は2017年にイスラム教に改宗していたことも確認されています。

 2件目は、フランス北東部モゼル県メスでは今月5日正午頃、ナイフを持った30歳代の男が警察官らを襲う事件が起き、男は国内治安総局(GDSI)の危険人物リスト、Sファイルに載っていた人物でした。現場に駆けつけた警官に「アッラー・アクバル」と叫びながらナイフを振りかざし、その場で逮捕され、その後、仲間と思われる人物も身柄を拘束されました。

 当地担当検事によれば、男は精神疾患を抱えている一方、イスラム聖戦思想に傾倒し、過激な行動を取る可能性があるとして監視リストSファイルに掲載されていたといいます。Sファイルにあるからといって24時間監視するのは不可能なので特に少人数で実行されるテロを未然に防ぐのは至難の技です。

 フランス内務省は仏国内で約2万人弱が過激思想に何らかの影響を受けていると見ており、昨年10月には、パリ警視庁内で聖戦思想に傾倒した職員が庁舎内でナイフを振り回し、同僚警官ら4人を殺害する事件も起きています。この事件を受け、公務員や公共サービス部門にも聖戦主義が拡散している実態が浮き彫りになりました。

 ルドリアン外相は昨年秋、トルコ軍がシリア北部のクルド人支配地域を攻撃した時、イスラム過激派、イスラム国(IS)について「ISは再び台頭する機会を伺っている。ISは根絶などしていない」との認識を示しました。特にIS指導者トップ、バグダディ容疑者が潜伏先のシリア北西部で米軍の急襲により10月26日に死亡して以来、ISは報復の機会を伺っています。

 今また、アメリカとイランの関係の急速な悪化に伴い中東が不安定化する中、ISは再起の機会を得ているともいえます。となるとフランスに潜伏する聖戦主義の共感者らがテロを計画する可能性は高まっていると見るのが妥当でしょう。

 貧富の差の拡大するフランスでは、差別や貧困、家庭崩壊の社会の闇の中で暮らすアラブ系移民や自分の価値を見出せない白人の若者が、聖戦思想に心を奪われる例は少なくありません。ネット上では彼らに被害妄想を植えつけ、西洋を敵とする聖戦に加われば、アッラーが最高の価値を与えてくれると煽動し、孤立した若者は聖戦思想を吹き込んでいます。

 逆にイスラム教やユダヤ教を嫌う極右思想も拡散していており、昨年10月にはフランス南西部バイヨンヌで、84歳の男がイスラム礼拝所モスクを襲撃し、午後の礼拝の準備をしていた70歳代の男性2人が発砲を受け、重傷を負う事件が発生しました。聖戦主義と極右思想の衝突も懸念されています。

 グローバル化で日本を逃げ出したゴーン前日産会長に象徴されるような拝金主義がますます拡大し、恵まれた者が弱者を支えるという考えそのものが失われつつああります。社会の隅に追いやられた負け組の1部が危険な過激思想に生き甲斐を見出すケースは、むしろ増える一方で、彼らは野蛮な怪物と化し、残虐行為を繰り返す結果を生んでいます。

 個人の自由を否定し国民を強権で支配する社会主義には、まったく賛同できませんが、恵まれた者が社会的義務を果すことは非常に重要だと思います。本当はその心をもたらす宗教も社会の隅を追いやられ、影響力を失っていることは深刻といわざるを得ません。

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Dictator vs Democracy

 国境を越えたビジネスが当り前になりつつある時代、グーグルのような検索エンジン運営会社やフェイスブック、ツイッターなどネットコミュニケーションサービス、さらには映像のストリーミング配信を手がけるNetflixなどは、国境を簡単に越えられては困る言論統制された国にはやっかいな新ビジネスです。

 アメリカとイランの対立で第3次世界大戦が勃発するとまでいわれるほど中東に緊張が走っていますが、実はイランを初め、イスラム諸国はアメリカとはま逆の言論統制の厳しい国です。数年前から反政府デモが起きているイランでは、Netflixのサービスが3年前に開始した一方、2018年にはメッセンジャーアプリを巡る新法が成立し、インターネットの検閲が強化されています。

 言論統制が厳しい国から報じられるニュースは、様々な政府の制限が掛かっているために客観報道は難しく国民の本音を知ることも困難です。許された映像だけで判断するしかありません。今回、イラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官をアメリカが殺害したことに強く反発するイラン国民の怒りが同司令官の国葬の様子で伝えられていますが、実態は分かりません。

 イラン政府にしてみれば、今回の事件で国民の目がアメリカに向けられることで、政府の失策を批判する反政府運動を鎮静化できる効果もありそうです。イランの反政府運動もSNSと無縁ではありません。運動を押さえ込みたい政府が検閲を強化すると、反政府側は新しいハイテクツールで検閲をかいくぐるというパターンを繰り返しています。

 イランと対立する親米のサウジアラビアでもNetflixのコメディ番組が2019年初旬、『ハサン・ミンハジ:愛国者として物申す』という番組で、同国の皇太子ムハンマド・ビン・サルマンを批判し、配信禁止になりました。検閲の長い歴史を持つ同国で問題のコメディ番組の配信禁止命令の根拠は、2007年に制定された反サイバー犯罪法違反ということでした。

 サウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏がトルコで殺害された事件も、サウジの裁判所はサルマン皇太子の関与を否定しましたが、政府に都合の悪い言論人や人権活動家が政府によって拘束され、姿を消した例は枚挙に暇がありません。

 Netflixやグーグルなどコミュニケーションに関わるビジネスは、言論統制と直接向き合うことが多く、場合によってはその国から撤退を強いられることもありますが、他のビジネスでも多かれ少なかれ影響はあります。

 実は表現の自由でいえば、たとえば最もそれが保障されているアメリカでは、コマーシャルや会社案内、学校の教科書などにモデルに白人だけを起用することはできない規制があります。差別を禁止した平等原則があるからです。

 言論や表現の自由といっても、その国の宗教、国家理念、統治体制によって様々な規制があるのは普通のことです。タイでは国王批判は不敬罪で逮捕されます。しかし、言論統制の各国の正当性を全て認めることはできません。最悪なのは言論が封じられるだけでなく、政府に批判的な人々が身柄を拘束され、闇に葬り去られることです。

 デジタル時代の到来で国境を超えた言論の自由空間が生まれたことは素晴らしいことですが、一方でフェイクニュースが流され、ある政治的意図で多くの人を煽動する現象や、言葉の暴力が横行しているのも事実です。韓国のように言論の自由空間でも袋叩きにされ、自殺に追い込まれる国もあります。その意味では単純な自由信奉も考えものです。

 日本人は言論や表現の自由に対して、敏感とはいえません。それは「自由は勝ち取るもの」という意識が低いこととも関係しています。だから、中国が強力な言論統制下にあることに対して、欧米は正面から批判していますが、日本からはその批判の声はあまり聞こえません。

 私は某大手日系企業の生産拠点の閉鎖を手伝った時、あまりに企業側はメディアに対して無神経だったために、企業評価を下げた事例に遭遇しました。SNSがない時代で助かった面もありましたが、ビジネスも言論に敏感でなければ失敗もするということです。

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 昨年盛り上がったラグビーのワールドカップ日本大会の日本代表チームの活躍については、何度かこのブログで触れました。理由は多文化チームで結果を出すためのリーダーシップやマネジメントで学ぶべきものが多かったからです。

 今回は、これまで触れなかったメンタル面について考えてみたいと思います。それはリーダーのリーチ・マイケル選手が日本選手に欠如していると指摘した「自信と闘争心」についてです。これは海外に出た日本人アスリートの多くが感じていることで、10代でアメリカに渡ったテニスの錦織圭選手も強く感じ、葛藤したと語っています。

 2019年の日本は人手不足の中でもグローバル人材の不足が指摘された年もありました。企業はこれまで新卒採用で帰国子女や海外留学経験者、国際結婚の両親から生まれたハーフ、あるいは海外駐在経験のある転職者を採用し、試行錯誤を繰り返して来ました。

 その採用根拠は、異文化耐性という文化の違いに対して極端なストレスを感じない耐性がすでに身についていることと、外国語がある程度できることです。確かに海外赴任先で赴任鬱に陥る例が増える中、異文化耐性があるかないかは重要です。

 しかし、グローバル人材に求められる要素は複雑で多様です。耐性があっても多文化チームの中で、うまく協業することやカルチャーダイバーシティからシナジーを引き出すマネジメントスキル、日本にはない意思決定スタイルの変更や多文化チームを率いるリーダーシップなど、様々なスキルが必要です。

 国内で多文化が日常化していれば、自然な形で習得できるスキルもありますが、日本はまず、そういう環境が望めず、愛社精神や組織への帰属意識、上司への忠誠心と従順、勤勉な国民性など日本特有の文化の中で運営されているため、海外というアウェイで仕事をするには、大きな飛躍が必要になります。

 特に中でもメンタル面では「自信と闘争心」は非常に重要な要素です。たとえば日本人にとってアメリカのトランプ大統領の態度は大仰で傲慢に映り、勝ち負けにこだわる闘争心むき出しの態度を嫌悪する人は多いでしょう。彼は極端な例ですが、自信を持てない人間は欧米諸国だけでなく、中国などアジアでも軽蔑の対象です。

 実は日本から無断逃走した日産のゴーン前会長は、かつてはグローバルリーダーの鏡といわれましたが、誰もが足元にも及ばない闘争心と自信にあふれた人物でした。

 たとえば日本では謙虚であることが重視されますが、トランプ大統領はシンガポールで望んだ最初の北朝鮮の金正恩労働党委員長との首脳会談前のインタビューで「会ってみないことには分らない。1年後には会ったことが失敗に終わるかもしれない。でも私は挑戦してみたい」といいました。これがアメリカ的謙虚さです。

 アメリカでは上司の前で自分のミスを謝罪する部下に対して「謝るのは弱さの現れだ。謝るぐらいなら次の解決策を持ってこい」というのを、よく聞きます。謝罪文化がないのは欧米だけでなく、中国も同じですが、「失敗して上司に謝っても解決にはならない、失敗から学んで前に進むべきだ」という考えです。上司に迷惑をかけてはいけないという考えは非常に薄いといえます。

 仕事の多くは結果を出すための執念に左右されます。目標を見失いがちな多文化のストレスの中では、この執念や勝ちに行く闘争心があるかないかが結果を大きく左右します。目標を設定しても共有するまでには多文化チームは時間が掛かります。ましてチームのために働くという思いを醸成するのは容易ではありません。

 この点についてリーチ・マイケル選手は「チーム一人一人が日本への愛国心を持つことが鍵だった」といっています。会社に置きかえれば愛社精神ですが、日本人でもない人間に要求するハードルは非常に高いといえます。いわゆるエンゲージメントを引き出すのも大変ですが、重要なことはリーダーがメンバー一人一人をスキルではなく人間として尊重することです。

 日本人の闘争心が弱いのは、和の精神と謙虚さと絡んだ問題です。逆にいえば和を乱す個人プレーを嫌い、調和を第1に考え「皆同じ」という状況を好む傾向があります。「出る杭は打たれろ」という諺もあります。さらに他人と優劣を争うことや自慢することはみっともないし、傲慢を最大の敵と考えている仏教文化も影響しています。

 しかし、欧米諸国の背景にあるキリスト教でも謙虚さは重視されています。新約聖書の愛について語られた有名な箇所「コリント人への手紙一第13章4節から7節」の中には「愛は自慢しない」「愛は高ぶらない」とあります。とはいえ日本人にはアメリカ人の態度には自慢や驕りがあるように映っています。

 そこでもう一つリーチ・マイケル選手が指摘しているのが「自信」です。日本では自信過剰などといってネガティブに使われることも少なくありませんが、自信がなければ何事も成し遂げられません。特に相手と勝負するのに自信がなければ最初から負けたも同然です。自信のないリーダーほど部下を困らせる存在もありません。

 リーチ・マイケル選手は「日本人選手は体の小さいことや力が弱いことにコンプレックスがあって、自信を持てない場合が多いが、それは強いメンタルで補えるし、トレーニングを積み重ねれば勝てる」と自信の重要性を強調しています。

 無論、そのトレーニングも正しい理論に裏打ちされたものである必要があります。同じことがグローバル人材育成にもいえることで、理論を学ばずして経験を積み重ねても結果は出ません。それも日本人上司が強調したがる精神論ではなく、科学的で合理的な理論です。

 とりあえず海外に赴任させれば自分で学習するだろうというのは安易な考えです。正しいマインドセットをせずに送り出すのは非常にリスキーです。無論、スポーツとビジネスには違いもありますが、闘争心と自信は絶対必要です。ただ、ゴーン被告のように、その二つを間違った方向に使えば身を滅ぼす諸刃の剣であることも知っておくべきでしょう。

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  レバノン・ベイルートのゴーン被告がいると思われる自宅(ARAB news)より

 日本を無断出国し、レバノン政府に保護されていると思われるカルロス・ゴーン被告の次の一手は、日本の司法の制約を受けずに思う存分、日本の司法の不当性と自らの無罪を主張することでしょう。国際世論を味方につけてしまえば勝算ありと踏んでいるかもしれませんが、読みは甘いといえます。

 2017年から2018年には自動車生産台数で、独フォルクスワーゲンを抜いて世界トップ(2019年上半期は3位に転落)に躍り出た日産・ルノー・三菱自動車連合を束ねていたゴーン前会長は、倒産寸前の日産を建て直し、20年に渡り、難しいといわれる国際アライアンスを継続させた押しも押されぬグローバルリーダーの鏡のような存在でした。

 ブラジル生まれのレバノン難民のゴーン被告は、フランスで高等教育を受け、世界トップ企業を率いるリーダーにまで這い上がった人物です。ブラジル、レバノン、フランスのパスポートを持って世界中を飛び回るグローバル時代の「時代の寵児」と持て囃されました。

 しかし、たたき上げのビジネスマンが読む世界には限りがあるようです。私は何人か彼に似たビジネスマンを知っていますが、彼らの金儲けに対する集中力は想像もつかないものがありますが、政治や他の社会状況には疎い場合は少なくありません。差別ではありませんが、特に恵まれない環境から這い上がってきたたたき上げの人間にある特徴でもあります。

 たとえば今回、レバノンの弁護士グループが、同国で禁止されている敵国イスラエルに出入りしていたとしてゴーン氏を訴えたニュースが流れました。事実かどうかは別にして、超過激な反イスラエルの過激組織、ヒズボラを抱えるレバノンでは、ビジネスであってもイスラエル渡航はできません。事実だとするとレバノンでは15年の実刑判決が下る事例です。

 さらにチュニジアのジャスミン革命で始まった民主化を求めるアラブの春はレバノンにも及んでおり、権力者の汚職を嫌悪する世論が高まっています。そのため企業経営者として汚職に手を染め、今回もなんらかの大金が動いてレバノン政府の協力のもとで日本から逃亡したゴーン被告への批判の声も高まっています。

 レバノンは、基本的にけっして安全な国ではありません。隣国シリアとの対立もあり、2007年には同国一部を占領するシリア軍の撤退を推進していたラフィーク・ハリーリー元首相がテロ攻撃で殺害され、2009年には爆弾テロで反シリア派の先鋒、ワリード・アイド議員らが殺害されました。

 南部にはイスラエルと対峙するヒズボラが存在し、1975年から1990年にかけて断続的に発生したレバノン内戦で疲弊した経済は、今でも復興したといえず、シリア内戦に深く関与した過激派組織、イスラム国(IS)戦闘員の逃げ場所にもなっており、治安もいいとは到底いえません。

 レバノンには18の宗派が存在し,各宗派に政治権力配分がなされ,バランスを保っています。しかし、各宗派内にも対立があり、ゴーン被告をサポートする側の政府も一枚岩と到底いえません。つまり、レバノンは腰を据えて世界に自らの正当性を発信する基地としては物理的に安全とはいえない国です。

 たとえば、妻のキャロルさんはレバノンの自宅から出入りする映像が報じられていますが、どんな護衛がついていたとしても、過激派組織が資金確保のために富豪の妻として誘拐し身代金を要求するかもしれません。腐敗を嫌い、民主化をめざす若者や反イスラエルの過激組織などゴーン被告も敵は少なくありません。

 だからといってフランスに逃げても、国民の支持は得られないだけでなく、ヴェルサイユ宮殿での超贅沢な結婚パーティーを同宮殿に寄付するルノーへの利益供与で賄った容疑で訴えられています。フランスのモンシャラン欧州問題担当副大臣は今月3日、ゴーン氏がレバノンに逃れたことについて「レバノン・日本間の問題でフランス事案ではない」ことを強調しました。

 ルノーの筆頭株主で日産との経営統合をめざすフランス政府としては、すで切ってしまったゴーン前会長が日本との関係を悪化させる問題を今になって持ち込まれたくないというところでしょう。それにフランスの世論は「ゴーンはフランスで高等教育を受けたが、レバノン難民の悪い面が出てしまった」と嫌悪感を露にしています。

 頼みとする中東も不当な資金が中東の外部コンサルタントに渡った背任罪で訴えられており、石油の上客である日本との関係を壊したくない中東諸国がゴーンを保護するとは思えません。

 つまり、なんでも金で問題解決してきたゴーン被告にとっては、金だけではどうすることもできない状況に取り囲まれている。国際刑事警察機構(ICPO)から国際指名手配を受けたゴーン被告は、持ち前の闘争心で生き残ろうとするでしょうが、身の安全を含め、金だけで安全を確保できる場所はないといえます。

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