安部雅延のグローバルワークス Masanobu Abe Global Works

国際ジャーナリスト、グローバル人材育成のプロが現在の世界を読み解き、グローバルに働く人、これから働く人に必要な知識とスキルを提供。

フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当する安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

leadership

 今回の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、放置されてきた様々な問題が浮き彫りになり、まるで江戸末期に黒船が到来したように、あるいは予測できない衝撃的出来事のブラックスワンが放たれたかのように、大きな試練の中にあります。

 金融システムを試すストレステストが形を変え、世界中に分け隔てなく試され、公衆衛生だけでなく、国民と政府の信頼関係、経済システム、意思決定のあり方、リーダーシップ、マネジメントが公的機関のみならず、民間企業でも大きなテストを受けている状況です。

 中でも危機に対して最も重要なのは、リーダーシップです。リーダーシップとマネジメントを混同する人もいますが、マネジメントはある目標を具体化するための適切な管理を行うことなのに対して、リーダーシップはヴィジョンを提示し、意思決定し、最初から最後まで一貫性を持って目標達成に全体を向かわせることです。

 特に危機に対しては、過酷な状況を乗り切り、人々を危機から救い出し、組織に活力を与え、鼓舞するのがリーダーに求められる要件です。そこには明確な思想と信念が必要です。しかし、ともすれば、重要なリーダーシップより、現実への対処に追われ、マネジメントの方に重心が移りがちです。

 安倍政権の対応が後手後手に回っている印象を与えているのは、もマネジメントが肥大化していることの現れです。もとも手段が目的化しやすい日本の文化風土は、細かいことが気になって肝心なことがおろそかになりがちです。75年間も戦争の有事から離れ、平和ボケしている日本は、無差別テロに近いコロナウイルスの襲来に、頭の中では経済ばかりを心配している状況です。

 まるで東西冷戦の時代に敗戦の教訓で作られた不戦の誓いを理由に、アメリカの核の後ろに隠れ、商売にいそしみ漁夫の利を得てきた習慣を、今も持ち続けているかのようです。そこには経済発展が全てという考えのみで、国家観や思想もそれを守ろうとする信念も本当は大してないように見受けられます。

 リスクマネジメントの基本原則は、最悪の事態を想定し、日頃から対応に関わるシミュレーションを徹底して行うことです。世界は確かに今回、想定をはるかに超えたウイルスの脅威に晒されています。しかし、日本はフランスのようにホワイトプランやブループランのような危機への備えはありませんでした。

 なのにフランスでは2万人を超える感染による死者を出しているじゃないかという人もいるでしょう。その最大の原因は世界保健機関(WHO)の不正確な政治的に操作された情報にあったといえます。人の移動の自由が国境を超えて行ってきたヨーロッパでは、初動の遅れは致命傷です。基幹産業の一つである観光でヨーロッパは大量の中国人旅行者を受け入れてきたのも仇になりました。

 危機が発生した後の対応として注意すべき点の一つは、リーダーは個別案件への対応に追われ、マネジメントに気を取られる傾向があることです。実際に医療崩壊を起こさないためには感染者数を増やさないための人と距離を取ることから、ベッド数や人工呼吸器の数の確保、PCR検査の促進など、多伎に渡ります。

 それぞれが組織的に動くしかない性格のもののため、リーダーは個別案件に振り回され、視野を狭めてしまうリスクがあります。これは戦争と同じで指揮官は、現場から一歩退いて全体を俯瞰しながら、優先順位を決める責任があります。時には部隊を見殺しにする判断も迫られます。

 対応が後手後手に回る印象を与えるのは、優先順位を決める思想がないからです。リーダーは危機的試練に対して、危機を押さえ込み、組織を目標に向かわせるための信念が必要です。国難ともなれば、どのような国をめざすのか明確な国家観が必要です。

 つまり、リスクマネジメントは短期に対処することではなく、危機の経験から学習し、組織の目標達成をさらに強靱にするものでなければなりません。言い換えれば、全体を俯瞰する視野の広さだけでなく、何年も先まで見通す長期的視点が必要です。

 誤解のないようにいえば、リーダーシップを発揮するというのは権力を集中させることという意味ではありません。中国の武漢の失敗は、恐らく権力を集中させすぎた独裁システムが原因だったと思われます。専門知識を持たないリーダーは方向づけをし、優先順位を決め、関係者が自発的に取り組める組織的秩序を構築することに専念すべきです。

 もう一つはリーダー自身が組織の役に立つための行動を常に意識していることです。上から命令するだけで実際に行動には関わらないと現場と遊離した決定を下す恐れがあります。学校の休校解除にあたり、首相や文科大臣が自ら学校に足を運び、教室の消毒や机の配置に関わってみれば、現実的でない判断は下さないはずです。

 日本の今回の危機対応が欧米と最も異なるのは、人間の扱いです。無症状の陽性者をホテルに隔離する措置で、非常に狭い部屋に2週間も閉じ込めるというのは、人間性を無視したやり方です。そのためホテルを選択せず、自宅に留まる人が圧倒的に多いといいますが当然です。リーダーは人間を人間として扱う意識がなければ、指導者としての資格はありません。

 この強烈なストレステストで、リーダーシップはどうあるべきか、本質的な改善がされれば、危機に強くなるだけでなく、国家も企業も強靱になるのは確実だと思います。

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Paris RER
 このような状態に戻ることが懸念されている(パリRER)

 フランスのフィリップ首相は28日、新型コロナウイルス対策の外出制限を含むロックダウン(都市封鎖)を5月11日から段階的に緩和する具体的プランを議会で明らかに大多数の議員がこれを支持しました。11日以降、これまで義務づけられていた外出目的証明書の携帯が必要なくなることから、実質的には外出制限令は解除となります。

 これまで営業が許可されていた生活必需品を扱う店舗以外の店や市場も、5月11日から営業を再開できることになり、町に人が繰り出すことが予想されます。無論、これを聞いた市民の中には6週間に渡る外出制限のが解除の解放感とともに、感染拡大の第2派を心配する声も多く聞かれます。

 11日からは、店の入店では客にマスク着用と1メートルの間隔の保持を要求する権限が店側に与えられます。公共交通機関の利用が本格化するわけですが、マスク着用が義務づけられます。ただ、密集、密接、密閉が予想されるバーやレストランの再開は認めない方針です。美術館や劇場は閉鎖されたままで、文化・スポーツイベントも再開は夏以降で観光業は依然、苦戦を強いられる状況です。

 市民にとっては、働けることと子供の養育が課題でしたが、保育施設も再開する一方、各施設の受け入れ人数は最大10人に制限。幼稚園、小中学校は教室の人数を12人から15人に制限し、教室内の生徒同士の距離を保ちながら週ごとに段階的に授業を再開する方針です。

 幼稚園は11日に再開し、感染者数が少ない地域の中学校は5月18日からの再開が認められ、高校は5末の再開を予定しているということです。11〜15歳の生徒はマスク着用が義務づけられ、学校内の消毒も徹底するよう指針が出されています。

 政府は引き続き、企業にはテレワークを推奨する一方で、公共交通機関の通勤利用者の急増を懸念しています。時差出勤の奨励、短時間労働などを推進していく流れです。フィリップ氏は、感染の第2波も懸念しており、1日あたりの新たな感染者数が3,000人を切らない場合は、11日からのロックダウン緩和はないと念を押しました。この2週間の1日あたりの新規感染者の平均は2,162人です。

 同首相は「ロックダウンにより国内で1カ月間に推定62,000人の命が救われた」と述べ、対策は効果をあげたことを強調しています。同時にワクチンが開発されるなど予防ができるようになるまで「このウイルスと共存する方法を学ぶ必要がある」との考えを示しました。

 仏保健省によれば、29日(現地時間)朝時点で新型ウイルスの死者は23,660人、感染者は168,935人に達しています。しかし、英国の死者数が26,097人とフランス、スペインを抜き、世界3番目、欧州でイタリアに次ぎ2番目になり、英国の深刻さが伺えます。

 ただ、英国の数値は、病院で新型ウイルス陽性の検査結果が出た人のみを死者数として集計していたのを、高齢者施設や自宅で死亡した人数を加算したことで急増した面もある。その意味では日本でも死者へのPCR検査を徹底していないので実際の感染死者数は、英国同様一桁以上違うかもしれません。

 フランスでは入院患者と集中治療室にいる患者の数は減少しており、政府が制限緩和に踏み切る根拠にしています。来月11日以降、1週間に70万件の新型ウイルス検査の実施を目指す方針も明らかにしており、感染実態の正確な把握に努める方針です。

 5月は、フランスを初め、イタリア、スペイン、ドイツなどでロックダウンの本格的解除が始まります。正体不明の新型コロナウイルスとの戦いは第2フェーズに移るわけですが、感染力が非常に強く無症状者が他の人に移すことや陽性だった人が再び陽性になるなど、懸念材料は山のようにあります。

 実はフランスの最新の失業率が急上昇し、2017年のオランド前政権末期に戻ってしまいました。フランスは給与補償や休業補償があるので大丈夫ということはなかったことを如実に表しています。マクロン氏の最大の使命だった失業率を抑制の努力は、無残にもコロナで打ち砕かれた形です。経済活動再開にはそのような背景もあるわけです。

 しかし、リスクは変容する性質を持ち、ウイルスも同じです。癌は叩けば叩くほどあちこちに転移するようにウイルスが変異し、第2波、第3波が起きる最悪のシナリオへの備える必要でしょう。

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 30年に渡ってヨーロッパを見つづけてきた私にとって、今、目の前で展開していることは、見たこともない風景と言わざるを得ません。それは欧州連合(EU)加盟国間で、新型コロナウイルスの脅威に対して、これほどまでに協力関係が見られない事態はなかったからです。

 つい最近でいえば、ギリシャの財政危機に対して、ユーロの信頼回復のためにEUはギリシャ救済に必死になりました。イスラム過激派のテロの脅威に対してもテロリストの行動について情報を共有し、合同捜査を行い、いくつものテロ計画を事前に潰すことに成功しました。

 もともとはEUは、アメリカ、日本に対抗し、経済統合によってヨーロッパの世界に対するプレゼンスを高めるのが目的でした。そこからEUは旧中・東欧にまで拡大し、第2次世界大戦で東西に分断され、ロシアの脅威に晒されていた中・東欧を取り戻すことにも成功しました。

 しかし、敵を選ばない今回の正体不明の疫病は無差別攻撃を世界に浴びせ掛け、グローバル化の脆さが露呈し、EUも結束して対策に取り組む姿勢を打ち出せずにいます。イタリアでの感染拡大に隣国フランスは手を差し伸べず、公衆衛生対策は自国の問題と傍観しました。

 公衆衛生の専門家の医師でドイツの国防大臣だったフォンデアラエン欧州委員会委員長の初動の遅れは明らかで、EU域外からの入国者、域内の移動も放置した結果、EUとしての対策の遅れが11万人以上の死亡者数を出す惨状を産みました。

 イタリアに感染拡大が確認された2月、フランスではリヨンでサッカーの試合があり、イタリア人サポーター数千人が応援に来ていました。無症状感染者の人から人への感染が知られていない時期でした。在パリのイタリア人記者が「ウイルスは雲と同じで国境など簡単に乗り越える」と懸念の声をあげたのが忘れられません。

 イタリアで医療崩壊が始まった時に医療資材や専門家の医師をEU全体としてイタリアに大量投入することもありませんでした。人命に関わる安全保障という観点でEUは協力機能が働きませんでした。つまり、EU域内でも隣の国が助けてくれるということはないことを印象づけました。日頃、人権だ人命尊重だヒューマニズムを掲げるヨーロッパらしくない態度でした。

 戦争の時の安全保障は、北大西洋条約機構(NATO)などで備えはあっても、スペイン風邪の流行からたかが100年しか経っていないのに疫病には無防備でした。

 しかし、ここまでEU及びブレグジット中の英国を破壊した本当の原因は何だったのかが問題です。そこに今、欧州では大きな注目が集まっています。それが初動の遅れを招いた2つの要因です。

 一つは中国・武漢で発生した新型コロナウイルスについて、中国が昨年12月時点から情報隠蔽があったことです。すでに人から人への感染が確認されていたにも関わらず、世界に知らせなかったことで人の移動が放置されました。その後の情報提供でも正確なデータを世界が手にするのは困難でした。

 一党独裁という異常な政治体制を維持する中国の透明性のない超内向きの国で起きた疫病発生は、改めて共産党一党独裁体制が世界に不幸をまき散らしたことを印象づけました。ウイルス拡散が中国製による意図的なものであったかどうかは確認の取りようはありませんが、中華思想をベースにした覇権主義の中国型社会主義の正体が暴露された形です。

 もう一つは、その覇権主義の一環として途上国を借金漬けにする中国の債務トラップ戦略外交で国際機関もコントロールされていることです。特に世界保健機関(WHO)への中国の影響は多大なものがあり、中国への多額の債務を抱える「アフリカの中国」とまで呼ばれるエチオピア出身のテドロス事務局長は習近平国家主席のいいなりになっています。

 EUの初動の遅れの主因は、WHOの見解に100%従ったからでした。私はフランスにいて、これほどWHOを信じるのかと驚いたほどです。それも中国が背後で力を行使する実態など何も知らなかったのがヨーロッパです。テドロス氏は言い訳を繰り返していますが、極左政治家である彼の習近平に対する信頼は揺るぎないものがあります。

 アメリカのトランプ大統領がWHOへの拠出金を停止し、WHO改革を主張していますが、今ではフランスのマクロン大統領も同意しています。それに「中国のいうことをまともに信じるのは馬鹿だ」とまでいっています。これだけの犠牲者を出し、経済的ダメージはリーマンショック以上という状況の中、ブラックスワンと呼ばれるコロナの終息の先に見えるのは、世界vs中国の構図です。

 今後、中国、北朝鮮に残る一党独裁の異常体制を世界が許すのか、それともその中国に飲み込まれるのかの非常に危険な均衡ゲームが待ち受けているといえます。経済は政治とは別物などと呑気なことはいっていられない状況です。そんな中、経済優先しか頭にない日本はどうするのか。コロナ禍後の世界では根本的な国の姿勢が問われるのは間違いないと思います。

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 世界の耳目は新型コロナウイルスに集中しているために、今年最も注目すべき11月のアメリカ大統領選挙に対する関心は遠のいた感があります。地元アメリカでは、米ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「トランプ大統領再選の最善策は中国叩き」というオピニオン記事を掲載しています。

 その記事によると「ドナルド・トランプ大統領の再選につながる可能性が最も大きい道は、北京経由の道だ」と指摘しています。理由は世界最多の感染犠牲者を出すアメリカで国土の荒廃が現実化する中、国内問題では希望を与える材料が乏しいからです。

 WSJの「グローバルビュー」欄担当のコラムニスト、ウォルター・ラッセル・ミード氏によると、大統領選を「中国責任追及の国民投票」にすれば、大半のアメリカ国民から共感を得られる土壌ができているというのです。

 「新型コロナウイルスが武漢から噴き出され世界を震撼(しんかん)させる以前の2019年の段階でも、既にアメリカ国民の57%は中国政府に不快感を抱いていた。2020年2月のギャラップによる最新世論調査ではその割合は67%に達している」の指摘しています。

 さらに「アメリカ国民の中国政府に対する反感は、不信感どころではなくなっている。シンクタンクのピュー研究所が最近行った世論調査では、中国のパワーと影響力はアメリカにとっての主要な脅威と考えているのは共和党員の68%、民主党員の62%に上った」とあり、民主党員でさえ中国脅威論には過半数が支持を表明している。

 もう一つの理由は、そもそも前回の大統領選挙の序盤ではトランプ氏は共和党選出候補ではなく、独立候補でした。小泉元首相の言い方を借りれば「ホワイトハウスをぶち壊す」という政界エスタブリッシュメントの構築した伏魔殿を壊すことを公約したことで選ばれた経緯を指摘しています。

 そのトランプ氏の強みからいえば、今回の大統領選では「ビジネス界のエスタブリッシュメント層が長年、中国と親密な関係だったことで、トランプ氏は戦うべき相手ができた」というわけです。つまり、トランプ氏は、中国政府が米国との経済競争で、ずるいやり方をしてきたことを容認してきた政界エスタブリッシュメントと、生産拠点を中国に移してきた企業を「正す」使命を持つことになる。

 中国の知的財産の窃取やアメリカの大学やIT、金融業界への浸食を長い間黙認してきたエスタブリッシュメントの基本的考えは、経済発展すれば中国の民主化が進み、世界のルールを守るようになるというシナリオでした。蓋を開ければ世界を制覇し、ルールは中国が決めるというとんでもない戦略が見えてきたため、トランプ政権になって中国封じ込めに舵を切ったわけです。

 中国から生産拠点を引き揚げれば、アメリカ国内の雇用に繋がるわけですから歓迎しない国民はいません。グローバル化で起きた産業の国内空洞化を大きく修正できれば、置いてきぼりになったブルーカラーには朗報です。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、高まる中国の工場依存度のマイナス面が露呈した形で、工場引き揚げを企業に迫れば得点が稼げるというものです。

 無論、単純化しすぎるトランプ氏の反中強硬姿勢は、けっして専門家らを満足させるものではないし、特に欧州首脳は眉を潜める場面も多いわけですが、今回の新型コロナウイルスの中国が正確な情報を隠蔽した中国の責任追及では、欧州首脳もオーストラリア首相も支持しています。

 翻って日本の安倍政権は、中国責任追求に加担する可能性は限りなく低いのが現状です。もともと自らの正当性を証明するために敵を明確にするという発想がない日本は、とにかく敵を作らず八方美人的に立ち回るのが正しいという商人的態度です。特に戦後はそれ一色です。

 日本商工会議所の三村会頭はNHKの番組に出演し、日本の疫病対策について「他の国がロックダウンなど経済活動を止めて対処する中、日本は唯一経済とのバランスを保ちながら感染を抑え込んでおり、安倍政権の懸命な判断は高く評価されるだろう」と発言しました。裏を返せば安倍政権は経済界の言うことに従っているということです。

 しかし、世界が対中責任論モードに入る中、日本が中国に異常に気を使う態度をとり続ければ、東西冷戦で表面化しなかった日本に一貫した思想が存在しないことが暴露され、大きく信用を失うことになりかねません。対立する米中間の媒介になるのが日本の使命などと呑気なことはいっていられない状況に陥るかもしれません。

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  3つ密をどう避けるかが課題 パリ・リヨン駅のレストラン、トラン・ブルー

 自宅で自炊が当り前になった外出自粛要請やロックダウン(都市封鎖)が世界中で長期化する中、世界的に知られるフランスの料理人、アラン・デュカス氏が、自宅で自炊するよりはレストランの方が安全だという発言が飛び出し、注目を集めています。

 イタリア、フランス、ドイツは感染拡大がピークを過ぎつつあることから、封鎖解除を段階的に行う動きを見せていますが、飲食店の場合は密集のリスクのあるため営業再開には慎重です。食材を定期購入する飲食店の休業は、最も大きな得意先を失った農業、漁業関係者を直撃しており、農作機械や船のローンが払えないと悲鳴の声が上がっています。

 アラン・ディカス氏は、レストラン格付けで知られるミシュランガイドで、これまで計17個の星を獲得した世界屈指のフレンチのシェフ。彼の発言は常に注目を集めていますが、今回、デュカス氏は、買い物に出かけて自宅で料理する方がはるかにリスクが高いと主張し、注目されています。

 理由は「人々との接触が避けられない場所で果物に触り、全員がマスクをしているわけでもない近くの小さなスーパーで買い物をした後に自宅で食事を作るより、予防措置がすべて講じられているレストランで食事をした方が安全だ」というわけです。

 たしかにスーパーなどの日用品を扱う店は、入店数を減らすなどの措置をとっても、店員も客も素手で果物などを手で触り、カートも不特定多数の人が取っ手を握って使用しています。今は無症状感染者が人から人にウイルスを拡散させることが確認されており、自覚症状のない感染者が巷には多くいると言われています。

 フランスなどはマスクの習慣がもともとなかったこともあり、2万人以上の感染死者を出しているにも関わらず、マスクをしないで買い物する姿を見かけます。自宅での衛生管理も人それぞれでプロのようにしかり管理ができているわけではないので、それを義務ずけられてレストランの方が安全というのがデュカス氏の主張です。

 これを聞いて外食を促そうとしているだけでは?という声もありますが、自炊の危険性を警告した点にも意味がありそうです。ソーシャル・ディスタンシング(対人距離の確保)の徹底が感染拡大を抑え込むのに友好という科学的な助言が、現在、世界中のレストランが営業停止している理由です。

 レストラン側は長期休業のダメージを避けるため、テイクアウトや配達に切り替えるレストランも多く、フランスでは持ち帰りができる店が出ています。高級レストランが医療従事者や高齢者施設に食事を供給したりもしていますが、農家や漁業関係者からすれば消費量は持ち直してはいないと言います。

 実は3つ星レストランをいくつも経営するデュカス氏など、高級料理を提供するレストランもテイクアウト用の高級料理を提供しています。そんな高級料理を家に持ち帰って食べてみたいという人も少なからずいますが、無論、出来たてを食べるのが基本のフランス料理なので、レストランと同じというわけにはいきません。

 段階的な封鎖解除を検討中のマクロン大統領は24日、レストランも段階的かつ責任ある営業再開の原則を主張し、その発言に呼応する形でデュカス氏は安全性に関しコメントしています。今の見通しではカフェやレストランは6月2日から20日の間に営業を再開できるとしていますが、密集をどう避けるかという課題は残っています。

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  このような光景にいつ戻るのだろうか パリ15区の小中校

 現在、フランスの小中高、大学の授業は国の新型コロナウイルスの封鎖措置で休校中です。5月11日からの「段階的な学校の再開」について、ブランケール仏教育相が4月21日に基本的考えを明らかにしています。まだ、確定ではありませんが、5月11日から3週間かけて学年によって授業を再開し、6月頭には全学年の授業再開を目指すというものです。

 具体的には1クラスの人数の上限を15人程度とし、それ以上の人数のクラスは半々に分けるのが基本です。上限人数は学年によって異なる可能性があるとしています。全国一律に施行するのが基本方針ですが、地方によっては5月11日以降も自宅待機が続くケースも考えられるとしています。

 通常登校、在宅学習、自習、自由の4つの形態の中から状況に合うものを適用し、市町村の首長との相談の上、スポーツ、健康、文化的活動を提案するとしています。マクロン大統領はネットを通じた学習実施でネット環境がない地方で教育の不平等が生じているため、その解消も急務と指摘しています。(フランスには地域に行って、未だネット環境が整っていない所がある)

 具体的には、まず、5/11の週にGrande section(幼稚園児5歳)、CP(小1)とCM2(小5)の授業再開を1クラス15人以下のクラスで行う。これらの学年で、もともと15人以下のクラスは、5月11日以降完全に授業再開できる。特に優先的学区内の学校のCPとCE1(小2)の約29万人はすでに1クラスが12人までと定められているため、問題なく再開される。クラスが15人未満の地方の学校(約)65,000人も5月11日から通常授業再開の見通し。
 
 次の5/18の週には、中学校の6eme(中1)、3eme(中4年/最終年)、高校のPremiere(高2)、Terminale(高3/最終学年)の授業再開。5/25の週には1クラス15人を守りつつ、学校全体を再開させる。6月には、幼稚園なども10人未満のクラスで授業再開を目指すとあります。

 なお、学校に子供を通学させたくない親がいる場合、自宅学習をする選択肢もあるとしています。ただし、その場合、在宅で学校の授業をネットで受ける義務があるとしています。さらに基本疾患があり病気にかかりやすい教員は、在宅勤務も可能としています。

 フランスでは当初、今のままでいけば、6月下旬に通常夏休みに入るので、授業再開は9月の新年度ではという懸念も拡がり、勉強の遅れの不安が拡がっていました。教育に力を入れるマクロン大統領は、学校授業再開には非常に意欲的です。

 そこで授業再開の検討課題の一つは生徒のマスク着用を義務化するかどうかの問題で、カスタネール内相はマスクの有効性について科学的根拠が不明確として義務化に消極的です。一方でマスク不足も深刻で着用義務が課せられた場合、入手できるかどうかも不明です。

 フランスでは基本的にレストランやカフェはしばらく休業を続ける他、文化スポーツイベントも8月一杯は禁止する可能性が高く、カンヌ映画祭、テニスのフレンチオープン、自転車レース、ツールドフランスが全て延期になっており、サッカーの試合も開催目途が立っていません。

 個人的に今回の授業再開に向けた基本方針を見ながら感じるのは、基本的に少人数の授業が日頃から定着していることが再開を容易にしているということです。この方針は数十年前から推進されてきたことで、それが今回は功を奏している印象です。

 アジアでは狭い空間に詰め込むケースが多いわけですが、ヨーロッパ人の空間感覚、身体的距離感はアジア人より広いことが研究で分かっており、そういったことが3つの密を避けることに貢献しているともいえます。

 フランスは死者が2万人を超えている一方、集中治療室に搬送される人数が減少していますが、サロモン仏保険総局長は「終息宣言をするには程遠い」という認識を示しています。世界的には子供の感染や死者も出ているため政府は慎重ですが、封鎖解除の具体策は5月頭には正式に発表される予定です。

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 今、世界で供給が極端に不足しているのはマスクと言われています。マスクは医療用防護服など医療関係者だけが必要とするものでないため、今では巷では自家製マスクのオンパレードです。フランス人にはまったくマスクをする習慣がなかったので、全国民がマスクを必要とするとなれば供給が追いつかないのは当り前。

 数年前、日本でインフルエンザが猛威を振るう中、フランス人の友人が羽田空港に到着し、東京都内に入ると多くの通行人がマスクをしているのを見て、この国には恐ろしい疫病が蔓延し、多くの人が病人なんだと思い、戦慄が走ったと話していたのを思い出します。そのフランス人やイタリア人、ドイツ人がマスクを着用しているわけですからいかに世界の認識は変わったかということです。

 そもそも鼻の高い西洋人にはマスクは不向きで、フィット感を得ることや隙間をなくすためには東洋人とは異なる形状が求められます。政府が配布したアベノマスクを装着した在日の友人のフランス人は日本人妻と腹を抱えて可笑しくて死ぬほど笑ったそうです。

 まず、マスクの必要性が急増する状況の中、世界中の政府はマスク調達に奔走中です。英国では未だに中国に発注する状況に批判が集中し、政府は国内企業でマスク生産に協力する企業を募集したところ、8,000社も手を上げたそうです。経済先行き不透明な中、確実に政府が買い上げてくれるマスク生産は魅力がある話です。

 フランスでも最近も1,000万枚以上の中国製マスクが届いたのですが、不良品が多く、あちこちで批判されています。医療関係者や薬局では、ゴムがすぐ取れてしまうなど劣悪なマスクが手元に届き、不快感を露わにしています。今、中国では認可されていない基準を満たさないもぐりの業者がいい加減なマスクを生産しているというニュースが公共放送、フランス2で報道されました。

 実はフランス西部ブルターニュ地方には、マスクを生産してきた企業がありました。中国の台頭で経営が行き詰まり、ある企業が買収する時に政府は注文を約束したにも関わらず、実際には実行されず、数年前に倒産し、工場は閉鎖されました。この事実も政府批判に繋がっています。

 フランス西部アンジェにあるマスクの製造を行うコルミ・オペン社(カナダのメディコム社の子会社)の工場が、24時間稼働体制で作業員を追加雇用しても受注生産が追いつかないという話を今年2月のブログに書きました。年間1億7,000万枚以上のマスクを生産する同社は2月初旬時点で5億枚の注文を世界から受けているということでした。

 医療用マスクは日本でも年間13億枚必要とされているそうですから、人口半分のフランスで少なくとも病院関係だけで6億枚は必要ということです。これまでマスクの8割が中国と台湾から供給されており、例えばコルミ・オペン社の親会社が中国・武漢にも工場を持っているのが現状です。

 世界中のメーカーが中国でマスクを製造している構図なため、今も世界中に中国からマスクが供給されているわけですが、2月などは中国が輸出を止めたために一挙に供給量が下がってしまいました。マスクは中国が世界の工場として生産拠点の依存度が異常に高いことを見せつけた典型例です。

 これは日本でも未だに市場にマスクが流れていない根本的理由です。コルミ・オペン社に注文が集中したのは、同社では基本材料の調達から生産完了までフランス国内で自己完結しているからです。今は全ての製品がグローバル化で材料や部品調達のサプライチェーンが世界に拡がり複雑化しています。

 そのサプライチェーンが寸断されると途端に生産工程はストップし、製品は市場に供給されなくなります。今日本でもテレワークなどで需要が増しているパソコンの生産拠点が中国に集中しているため、供給が追いつかない状況です。スマートフォンも同様です。

 生産自体が単純で難しくないマスク、しかし人命に深く関わる製品が供給問題で中国依存度をなんとか終わらせようという動きは加速しています。この流れはもとには戻らないかもしれません。フランス人や英国人の怒りは「マスクさえも自分の国で作れないのか」というものです。

 中国は実は世界の工場を卒業して生産拠点依存度を下げ、最終需要依存度を高めているとはいえない状況です。そこに疫病危機で外資が撤退すれば中国経済はダメージを受けざるを得ないかもしれません。逆に自国に生産拠点を戻す動きは加速するでしょう。世界は疫病後にマスクがきっかけで過去にない変化をもたらすことが予見されます。

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 新型コロナウイルスに感染し、療養中だった英国のジョンソン首相が公務再開に向けて動きだしています。21日にトランプ米大統領と電話で首脳会談を行い、段階的に代理を勤めてきたラーブ外相から仕事が移行され、意思決定の中心に戻る流れです。英国では自身が感染経験者になったことで、どんな政策を打ち出すかが注目されています。

 その英国では新型コロナウイルスの感染死者数が政府の発表より4割以上多いことが英国民統計局の統計で明らかになり、不安が拡がっています。病院での死者のみを数え、自宅などで亡くなった人を対象外としていたためで。犠牲者はすでにフランスのように2万人は超えているであろう実態がが浮かび上がりました。
 そんな中、英国も世界中の国々同様、経済への懸念が深刻さを増しており、年末までの完全なブレグジットに向けた交渉にも暗い影を落としています。ラーブ外相はそれでも「人命が第1であり、経済は2番目」と記者会見で明確なスタンスを語っており、これはフランスのマクロン大統領やドイツのメルケル首相も同じです。

 南欧及び北アフリカ・マグレブ諸国の治安情報分析を20年以上行ってきた私は、日本のリスクマネジメントも東日本大震災以降、かなり変化してきたと見ています。一般的にリスクマネジメントは危機が起きる前から起きた時とその後全体を管理することを指し、日本では過去に「危機管理」という概念は起きた後の対応だけを指す認識が主流でした。

 「備えあれば憂いなし」というのがリスクマネジメント基本的姿勢ですが、その原型である保険の考え方でも分かるように、危機が起きなければ、単なる出費に終わる可能性もあります。日本が海外でリスクマネジメント専門の担当者を置いていないケースが多いのも、無駄な非生産的出費という考えが未だに残っているからです。

 しかし、今回の新型コロナウイルスの危機は、多くの教訓を残すことになりそうです。もし、英国のワクチン開発チームを主導するオックスフォード大学のサラ・ギルバート教授が指摘するように、新型ウイルスに繰り返し感染する可能性があるとすれば、コロナとは長い付き合いも予想されます。

 そのリスクマネジメントを支えるマニュアルづくりで重要なのは一貫性です。筋が通っているということです。逆に失敗する例は、場当たり的に対応してしまうことで、日本政府の対応はその例かもしれません。具体的には価値観がはっきりしているということで、そこから優先順位も決定されるわけです。

 最近、日本ではロックダウンはしないものの、要請が強制に近い形で行われています。政府は閉店要請に応じないパチンコ店などの名前の公表をちらつかせていますが、さすが村社会、法的措置が取れなければ、世間が袋叩きにしてくれるという社会制裁の習慣を使おうとしているようです。

 そこで聞こえてくるのは、閉店する店の店主が「断腸の思いで」という言葉を頻繁に口にしていることです。経営的には当然の言葉ですが、閉店しないと風あたりが強くなるのか、短期間で危機を乗り切るためには選択の余地のない判断なのか、動機はさまざまでしょう。

 短期間で封じ込められる見通しがあるために世界ではロックダウンも行われているわけですが、ここで重要なことは関係者全ての共感を得る説得力のあるリスクマネジメントを実行しなければならないことです。リスクマネジメントそのものは犠牲を伴う非生産的ともいえるものだからです。

 例えば、再起不能なほどの経済的ダメージを与える措置も実行しなければならないこともあります。人工呼吸器が不足し、高齢者より若者を優先して治療する決断も下さなければなりません。イタリアの医師は「道徳的には問題があってもやるしかない」と苦しい胸に内を明かしていました。

 しかし、危機は繰り返し、変容し、さらに高まるという性質があります。今回は人命と経済が天秤にかけられているように見えますが、最初から同列に論じる話ではありません。日本には「命あっての物種」という諺があります。優先順位は最初から分かっている話です。しかし、日本政府は企業活動を人命以上に心配して失敗した感があります。

 つまり、リーダーの日頃の価値観が出てしまうということです。物事の優先順位が付けられない、あるいは本末転倒してしまうことは、もっともリスクマネジメントでやってはいけないことです。その順位を誰もが共感できる基準で決められるのがリーダーです。

 価値観や目的が明確であれば、筋の通った一貫性のある対策を打ち出せるはずで、場当たり的になったり、後手後手になったりはしないはずです。官僚が「前例がないから」などというのは、そもそも目的を忘れ手段が目的化してしまっているからにほかなりません。

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 業種によっては、この疫病危機でデジタル化が一挙に進み、働き方が大幅に変わる企業もあるでしょう。テレワークから見えてくるのは、誰も見ていない環境でも自ら積極的に仕事に取り組む自発性マインドと、そのマインドを支えるすエンゲージメントをもたらすリーダーシップです。

 日本では下が上を支える独特の文化や愛社精神があるので、それをエンゲージメントと勘違いしたりしますが、終身雇用や家族的経営が消えるの中、その文化も頼りにはなりません。特に危機的状況に追い込まれた時は、リーダーの判断力や決断力が大きく状況を左右するので、リーダーが有能か無能かによって会社や組織の運命も決まります。

 さらに危機の前に縮こまり、何の手も打てず、保身に陥るリーダーや、長年会社に忠誠を捧げてきたような人間を容赦なく冷たく切ってしまうリーダーを見て、その人間の本性を目の当たりにし裏切られた気持ちで会社を去る人もいるでしょう。

 日本の企業は、随分長い間、社員の勤勉さ、真面目さ、忠誠心、職人気質の従順さに支えられてきました。その上にあぐらをかいてきた会社がほとんどかもしれません。部下としてどうあるべきかは、嫌というほど教育されていても、リーダーとしてどうあるべきかという指導者教育は手薄でした。

 前にも書きましたが、トヨタ自動車の豊田章男社長が問題視したのは、若い社員が将来なりたい、自分が目標にするようなリーダーが社内に見当たらないということです。これは私が長年、研修を担当したトヨタと双璧をなす自動車メーカーでも同じことがいえます。これが日本企業の深刻な問題です。

 これは新しい問題ではありません。高度経済成長下の1960年代から、サラリーマンがなぜ毎日のように仕事帰りに酒を飲むかといえば、そこで上司への不満を吐き出すためだったというのは当時、よく説明されたものです。社員は上司が有能、無能に関わらず、従順に従うことの方が重視されました。

 しかし、今は無能なリーダーは淘汰される時代です。今後、確実に押し寄せる世界恐慌の危機的状況を乗り越えるのには絶対に有能なリーダーが必要だからです。それも多くの人が疫病蔓延で心に痛手を負っている状況の中でポジティブなマインドを維持し、危機を切り抜けなければなりません。

 では、有能なリーダー像は何か。的確な状況判断をして先手を打って危機を乗り越える能力だけでなく、誠実さと謙虚さを備えるなリーダーが必要です。メンバーに強いエンゲージメントを抱かせ、危機的状況の中でもメンバーが自発的に仕事に取り組み生産性を高める人物が必要です。

 個人的に実績は出せても人間として傲慢であったり、パワハラに近い高圧的態度を取るリーダーは組織にとっては有害です。今は先がまったく見通せない不安が蔓延している状況です。近親者にウイルス感染で亡くなった人がいるメンバーもいるでしょう。人間の心は繊細でもろいものです。

 自分はメンバーのために何が出きるのか、どうサポートすべきかを常に考えられるリーダーが必要です。そう考えると自分がいかに無力かを思い知らされ謙虚になるものです。人に敬意を払う人間は相手にも伝わります。有能なリーダーはメンバーに強い信頼とエンゲージメントを抱かせるものです。

 リーダーシップとマネジメントは、非常に複雑にできた人間を一つの目標に向かわせ、メンバーのエンゲージメントをもたらし、彼らを管理し結果を出すことです。エンジニアやIT系出身の人間は、一定の法則で動く自然相手の科学分野出身者で合理性が全てです。ところが気持ちや気分で動く人間は合理性だけで動かすことはできません。

 それに激しい競争を生き抜いてきた仕事面で実績を出してきた有能な人間は、常に人との優劣意識が頭の中にあるものです。一般的には自信のある人間を有能なリーダーといいますが、過信は有害です。トータルな人間力が問われるリーダーシップには、自分の限界を知り、日々、複雑な人間と対峙する必要があります。

 日本ではリーダーを堕落させる御神輿経営のようにリーダーを担ぐ習慣があります。結果はリーダーは裸の王様になり、自分が正しく見れなくなります。周囲の部下が自分に対して全員忖度する状況はリーダーを傲慢にしてしまいます。部下の嘘や不正確な情報も見抜けなくなります。

 世間では優れたリーダーは大抵、ナルシストだといいます。東京都の知事にナルシストを自称する人もいました。確かに多くの場面で人よりずば抜けた才能を持っていることを経験したことで、自己愛が確立したのでしょうが、自己愛の強い、自分を過信する人物は危険ではあっても有能とはいえません。

 当然、自己愛の強い人間が傷ついた人の心を癒せるとは思えません。不可抗力の自然災害や疫病蔓延に対しても切り抜けられないのは本人の能力がないからだと自己愛の強い人間は思うはずです。そんなリーダーが部下のエンゲージメントを高めるはずもありません。

 共感が重要な時代、政治家や役人の的外れの決定は状況共有ができていない証拠でしょう。自分は超安全な場所にいて危機を感じていないということです。誠実なリーダーであれば夜も寝られないはずです。前代未聞の世界的景気後退局面に入ると思われる状況の中で、先を見通し希望を与え、メンバーがポジティブでいられるようにする有能なリーダーを選ぶことは極めて重要です。

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 英国の失業保険申請件数は3月に増加し、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は労働市場にも深刻な影響を及ぼし始めています。英政府統計局(INS)の発表によれば、3月の申請件数は前月比1万2200件増、失業率は3.5%と、2014年以来の高水準です。

 一方、アメリカ労働省の今月16日の発表では、4月11日までの1週間に新たに申請された失業保険の件数は524万5000件で、非常事態宣言が出された3月中旬以降の4週間の申請件数は合わせて2200万件を超えています。自宅待機命令に対して「働かせろ」のデモが各地で起き、トランプ大統領は経済活動の段階的再開を示唆しています。

 雇用統計は米英では大きな経済指標ですが、ユーロ圏は事情が異なります。なぜなら雇用制度と社会保障制度が深く結びついており、雇用者は簡単に人を解雇できない仕組みになっているからです。例えばフランスは今回、一時休職保障として給与の84%が政府によって保障されています。

 それでも一時失業者の数は労働省が出した最新値で、約337,000社で360万人とされ、リーマンショック時の2009年を上回っています。せっかく昨年は8%代まで下がった完全失業率ですが、政府はなんとか給与補償で乗り切りたいところですが、持ちこたえられるか疑問視されています。

 とにかく、フランスのぺニコ労働相は、大企業が一時失業給付金制度を利用しないよう、経営者に働き掛けているほどで財政的に持たない限界に来ています。自動車の欧州の販売台数の大幅な落ち込みなど製造業の雇用維持は不可能な段階にあるといえます。

 その自動車産業が基幹産業のドイツは、同国連邦労働局が3月31日、3月の失業率(季節調整済み)が5%だったと発表し、11カ月連続での横ばいでしたが、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の影響が今後表れると予想されています。

 手厚い社会保障で知られるユーロ圏ですが、リーマンショック、ギリシャの財政危機、ブレグジットで痛手を被り、緊縮財政を強いられる中、豊かな北部と財政赤字に苦しむ南の対立が激化しており、南の福祉国家が危機的状況に追い込まれていることが伺えます。

 ドイツのシュパーン保健相は今月17日、新型コロナウイルス感染症の回復者数が新規感染者数を上回る日が続いていることを受け、国内の感染拡大は「これまでより制御可能な状態になった」との見解をを示しました。独自動車大手フォルクスワーゲン(VW)は、20日の週より同国東部ザクセン州のツイッカウとスロバキアの首都ブラチスラバにある工場の操業を再開する方針です。

 ただ、ドイツでも大規模な文化・スポーツイベントの秋までの開催禁止など、感染拡大の第2波が襲来することを警戒しており、経済活動が正常に戻るのは秋以降になりそうです。これはフランス、イタリア、スペインなど新型コロナウイルスの死者が2万人を超えている国でも同じことがいえます。

 問題は政府が手厚い保障をしている国々は財政が持ちこたえられない可能性があるということです。フランスの財務省に勤める友人は「誰もそのことを話したがらない」「しかし、手を打っておく必要がある」といっています。それよりも政府の危機感は完全失業率が、もとの10%前後に戻ることです。

 改革の旗手といわれたサルコジ元大統領は、リーマンショックに襲われたことで、失業率を抑えられず、不幸な終わり方をしましたが、今回はそれ以上の経済ダメージであることは確かで、マクロン政権には暗雲が垂れ込めています。

 日本では新型コロナウイルスによる緊急事態宣言で休業補償、給与補償など手厚い補償の例としてヨーロッパが取り上げられることは多いのですが、政府の台所事情は伝えられません。逆に言えば非常に厳しい財政事情の中でも国民を守ることを最優先に行動するヨーロッパと、ヨーロッパ諸国よりはるかに金のある日本が出し渋りで国民の不信感が強まっているのは皮肉なことです。

 今週23日、欧州連合(EU)首脳は、南北で対立が表面化している緊急経済支援の財源確保のためのユーロ共同債について話し合う予定ですが、イタリアが「こんなときこそEUはじゃぶじゃぶ金を出すべき、後のことは何とかなる」というのに対して、ドイツが「また、そんないい加減なことをいって財政を悪化させてユーロの信用度を落としてしまう」と反発するのが目に浮かぶようです。

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 中国赴任者アンケートで、中国には日本にはない様々な規制があるが、中でも最も顕著なものは何かという問いに対するトップは言論統制でした。北京で日本のNHKニュースを見ていても中国共産党に都合の悪い内容は画面が黒くなったりし、インターネットの検索も制限がかけられています。

 なるべく中国政府批判は国民の耳目に入らないようにしているからですが、本腰を入れて海外メディアが取材を試みると国を追い出されます。新疆ウイグル自治区でイスラム教徒の改宗収容所の人権弾圧の実態を取材しようとすると、最近では米ウォールストリートジャーナルの記者が記者証を剥奪され、国外追放されました。

 今回の新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)の最大の原因は、発信源である中国が情報の透明性より、政府の情報操作を先に考える国だったことです。日本以外の欧米首脳はこぞって、中国が当初から新型ウイルスが人から人に感染する正確な情報を世界に流さなかったことを問題視しています。

 一昨日はオーストラリア政府も「アメリカと考えは同じ」と中国情報隠蔽疑惑を支持しました。今や「世紀の大犯罪」の可能性があるとまでいわれています。

 かつてのペスト大流行やスペイン風邪の時代以上に人が激しく移動するグローバル化時代に、ウイルスが国境を超えるのはあっという間です。まるで無差別テロのようで、良心的な人も悪人も関係なく感染拡大し、情け容赦なく人の命を奪っています。頼りになるには発生源や治験から得られた科学的データなどの正確な情報のみです。

 全世界が協力しなければ抑え込むことができないパンデミックですが、その発生源についても正確な科学情報に政府がバイアスを掛けるとすれば、あるいは影響力の最も強い世界保健機関(WHO)に政治的操作が加えられたすれば、犠牲者の数が増えるのは自明の理です。

 戦争は情報戦という認識は、19世紀後半に欧米で定着したといわれ、英国のMI6で知られる秘密情報部創設は1909年に遡るといわれます。東西冷戦は諜報機関の戦いともいわれたほどです。今ではビジネスも情報戦といわれ、情報を制する者が世界を制するといわれています。

 民主主義では言論の自由が保障されているので情報を得るのも自由だし、余程の過激思想でなければ個人や団体が自由に自らの考えを主張し、議論するのも自由です。その根幹を支えるのはジャーナリズムです。政府や組織は都合の悪いことは隠蔽したり、捏造するリスクもあるので、その深層を伝え、国民に審判を委ねるのがメディアの使命です。

 無論、メディア自体が客観性や公平性を失い、特別な政治イデオロギーに偏向していれば、国民の正しい判断の障害になります。最近ではSNS上でのフェイクニュースが問題になり、100年前は共産主義者のプロパガンダが多くの人を動かしました。革命は印刷物からともいわれました。

 しかし、政治的情報操作が人々に幸福をもたらしたことはありません。嘘や作り話は社会を破壊することはあっても正しく機能することはありません。

 「嘘も百回つけば本当になる」とは、政治プロパガンダや広告心理で、よく使われる手法として知られていますが、一説によれば、ナチスドイツの国家情報戦略の天才と言われたヨーゼフ・ゲッペルスが「もし、あなたが非常に大きな嘘を頻繁につき続ければ、人々は最後にはその嘘を信じるだろう」と言ったことに由来するともいわれます。百回という言葉はありません、意味は伝わってきます。

 しかし、彼のその後の言葉はもっと興味深いといえます。「優れたプロパガンダは嘘をつく必要がない。むしろ嘘をつくべきではない。真実を恐れる必要はないのだ。大衆は真実を受け入れることが出来ないというのは誤りで、彼らは受け入れることができる。大事なことは大衆が理解しやすいようにプレゼンテーションしてやることだ」と。

 現代の広告理論やビジネスアプローチにも当てはまる明言のようです。つまるところ国民が最も嫌悪するのは、嘘によって「騙された」と感じることです。しかし、私はそれにさらに付け加えたいのは国民の思考停止です。国民が真実を求め、正しい判断を常に下すためには自分で考えることを封殺するべきではないということです。

 その考える自由を奪わえば、政府による洗脳です。人間は自由意志を持っており、それは最大の権利です。だから、人が考えるのに必要な正確で客観性を持った情報提供は必須です。それは疫病対策でも同じです。情報の透明性さえあれば、世界の専門家が同じレベルで対策を練ることができます。

 世界は今、情報共有が政治問題によってできない問題に直面しています。実は科学者は非常にナイーブです。自然科学は基本的に自然相手で科学で割り切れない人間の複雑な心理を読み解くのは苦手です。世界の根深い政治対立が疫病の蔓延阻止とワクチン開発の足かせになっています。

 ミサイルや原爆を使わなくても、世界の人々はバイオテロがいかにパワフルかを痛感しているはずです。すでに9・11テロの犠牲者の数をはるかに超えています。今回のウイルスの発生源ははっきりしていないし、意図的なのかも証拠はありませんが、未だに情報操作で政権を維持することに懸命は国が世界にあることは全ての人にとって不幸としかいいようがありません。

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Luc Montagnier
  HIV発見者でノーベル生理学・医学賞のウイルス学の権威リュック・モンタニエ博士

 フランスでは先週、新型コロナウイルスの起源について、ウイルス学の権威による指摘があり、衝撃が走りました。その指摘とは、2008年にノーベル生理学・医学賞を受賞したフランス人のリュック・モンタニエ博士によるもので、今回のウイルスは動物由来でなく、研究所で人工的に作られたという仮説でした。

 「お医者様教えて」というフランスのウェブサイトで同博士が主張したのは、新型コロナウイルス(Covid19)は、博士もよく知っている中国武漢のウイルス研究所で、何かのワクチン開発で偶然にできたのもので武漢の市場で売られているコウモリなどの動物を起源としたものではないという主張でした。

 世界中で新型コロナウイルスの正体の解明が急がれる中、ノーベル賞学者の前代未聞の指摘は、アメリカが主張するウイルス研究所からの流出事故という指摘とも繫がり、中国がウイルスを意図的か単なる不手際でばら蒔き、パンデミックを起したというストーリーに繫がり、欧米のSNS上では大騒ぎになりました。

 ところが他のフランスの専門家らが「ありえない」と反論し、深層を知りたい人々が当惑して先週を終えました。モンタニエ博士は「同ウイルスは、研究室でエイズの原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)のワクチンを開発中に、なんらかの偶然で生成されたものだ」という説を展開し、HIVの発見でノーベル医学賞を受賞した感染症の権威の発言だっただけに論争が起きました。

 ニュース・チャンネルの仏CNEWSがインタビュー番組を流し、SNSで世界に拡散し、炎上したわけですが、同時に仏メディアは一斉に感染症の専門家への事実確認を試みました。とにかく、この説が本当なら中国は当然、隠蔽したことになり、国際的な責任はあまりにも重いからです。

 仏パスツール研究所のウイルスおよび免疫部門の責任者であるオリビエ・シュワルツ博士は「研究室では、特定のウイルス操作で1部のコンポーネントを変更できるが、異なる種の2つのウイルスを混合して新しいウイルスを作ることはできない。HIVの要素と別のウイルスを使用してコロナウイルスを生成させることは不可能」とモンタニエ博士の主張を退けました。

 この問題ではモンタニエ氏の前にインドの学者が同様な指摘をしていました。フランスメディアは、他の数人の専門家にも意見を求め、新型コロナウイルスの人工生成に否定的意見が続出しました。SNS上、モンタニエ博士の衝撃的な指摘が拡散する中、ファイスブックは、掲載された動画に対して、ファクト・チェッカー(事実検証)により、視聴が制限される事態になりました。

 私は、確かに影響力の大きい発言ですが、極端に歪曲された部分は動画にないことから、個人的には外部組織による事実検証にも疑いを抱いています。というのアメリカの複数のメディアが、国家が外国に対する世論操作や工作活動などに使うシャープパワーに中国が本腰を入れていることが指摘されているからです。

 当然、中国に不利な言説が世界に拡がることを避けることも含まれるわけですから、グーグルの検索アルゴリズムやフェイスブックのファクトチェッカーにも入り込んでいる可能性があります。中国国内で言論統制しているわけですから、当然、世界にもその手段は適応されているはずです。

 アメリカのポンペイオ国務長官が「われわれは中国から知らされていないことがある」と述べ、武漢の研究所の徹底検証を今進めている最中です。マクロン仏大統領は、先進7カ国(G7)首脳の16日の電話会談後のインタビューで「起きていながら私たちが知らないことがあるのは明白だ」と述べ、中国の隠蔽を示唆する発言を行いましたが、モンタニエ博士の主張が背景にあったと見られています。

 中国が放った米兵が意図的に武漢にウイルスを持ち込んだという根拠のない中国の作り話の拡散が制止されなかったのに、権威あるモンタニエ博士の主張はファイスブックから抹殺されるのは不思議な現象です。専門家のいろいろな意見を聞きたい時に封殺された理由は、非常に危険な爆弾発言だったというわけなのでしょうが、科学的に検証すればいい話で視聴制限するのは疑問です。

 なお、モンタニエ氏とノーベル生理学・医学賞を同時受賞した同僚のフランソワーズ・バレ=シヌッシ博士(72)は現在、マクロン大統領が新設したコロナ対策の研究および専門家分析委員会の議長を務めており、彼女の意見も待たれるところです。

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