安部雅延のグローバルワークス Masanobu Abe Global Works

国際ジャーナリスト、グローバル人材育成のプロが現在の世界を読み解き、グローバルに働く人、これから働く人に必要な知識とスキルを提供。

フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当する安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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 人種のるつぼといわれてきたアメリカで、この数カ月、密かに語られてきたのが、新型コロナウイルスの感染死亡者と人種や少数民族との関係です。人口に占める黒人の割合が約30%の米シカゴでは、新型ウイルスの感染死者数では黒人が70%超だと報告され、ニューヨーク、デトロイトなどアメリカの主要都市でも同様な数字が報告されています。

 このような報道は、多文化社会の国では極力控えられています。なぜなら、人間の心の闇に潜む差別意識を刺激するテーマだからです。白人至上主義者は「やっぱり野蛮な人種は免疫力が弱い」とか、「やつらの衛生観念が低いからだ」、極端な場合は「もっと黒人が死ねばいい」とSNS上で露骨な差別の言葉が飛び交ったりしています。

 疫病は人種や宗教、男女、国、民族、豊かな国、貧しい国、果ては善人か悪人かも一切関係なく襲いかかるものです。それも未だに正体が正確には分かっていないために押さえ込むこともできていません。正体不明のテロリストによる無差別テロと同じです。イタリアでカトリックの神父も多数亡くなりました。

 実は世界は多文化、多宗教の国の方が単一民族(特定の人種が圧倒的多数を占める)の国より多いのが現実です。例えば、フランスではアラブ系フランス人が約600万人に上り人口の1割を占めています。3代さかのぼれば、3割が他国のルーツを持っているといわれる多人種、多文化社会です。

 英国全土では統計上は白人が87.2 を占める英国のイングランドとウェールズの人口に占める黒人およびアジア系、インド系などの少数人種の割合は14%となっています。英集中治療全国監査研究センターの統計によると、イングランド、ウェールズ、北アイルランドで新型ウイルス感染の重篤患者の35%が、黒人もしくは他の少数人種だったとしています。

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      リシ・スナック英財務相はインド系

 特にイングランドとウェールズの人口全体の3.3%を占める黒人の重篤患者は人口の13.6%を占め、最も多い人口の7.5%を占めるインド系の重篤患者は人口の13.8%です。ところが、これだけでは感染者と人種の関係を紐づけることはできません。まず、感染者がロンドンに集中し、ロンドンの黒人やインド人の割合は4割に達しています。

 これはアメリカも同じでニューヨークなど黒人割合が高い地域での特徴といえますし、職業別の死者数との関連もあります。ニューヨークでは市民生活支える公共部門で黒人が多く働いているため、ロックダウン後も仕事の継続を強いられていることは無視できません。

 ロンドンで感染者から唾をかけられて最近死亡した女性は、ロンドン・ヴィクトリア駅の職員で黒人でした。アメリカや英国、フランスの大都市では感染リスクの高い医療関係従事者にも少数人種が多いのが実情です。英国民保健サービス(NHS)の医師の割合では黒人や少数人種の割合がなんと44%に達しています。

 低所得者層が狭い自宅内で隔離生活が困難なことなど、大都市ならではの様々な経済格差要因も重なっています。今後も人種と感染率の関係は研究が進められるとは思いますが、その不毛さは一目瞭然です。このアプローチがもたらす結果は、憎悪と人種差別を引き起し対立を深めるだけです。

 人間は嫉妬深い生き物なので近年、経済的繁栄を欲しいままにしてきた中国がウイルスの発生源ということで、世界中に散らばる中国人たちがウイルスをまき散らしたとして、ここぞとばかりに中国人差別は世界中で強まっています。ついでに欧米人には見分けがつかない日本人も差別を受けています。

 今でも民族主義、種族主義を国是のように振りかざす中国、韓国は野蛮というしかありません。この考えは他の民族や人種との優劣を争う不毛な対立を生むだけです。自分の国や民族を誇るのは人間の自然な感情ですが、虚勢による優劣の比較、憎悪や差別が始まると話は別です。

 それは心の闇に火を付けるものです。むしろ弱者に被害が拡がっていることに心を痛め、何が自分にできるかを考えるのが正しい姿勢だと思います。

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 誰もがコロナショック後の景気回復がどうなるのか気になるところです。2月、3月には多くのエコノミストや金融関係者が、V字回復を予想し、短期間に新型コロナウイルスのパンデミックを押さえ込めば、危機前の水準を超える支出でGDPが跳ね上がるZ字型はないにしても、回復は早いと予想されていました。

 丁度、イスラム教のラマダンの断食明けのように、人々はせきを切ったように空腹を満たすために元の日常に戻ろうとする現象が起きると信じられていました。ところが、新型コロナウイルスで受けるダメージは予想以上に傷が深く、それも長期化で経済活動が一挙に活発するのは難しいと見られています。

 5月11日に外出制限措置が大幅に緩和されたフランスで、ようやく開店に漕ぎ着けたパリの美容室のオーナーが「フランスは1年以上黄色いベスト運動が続き、その後はストライキが何度も起き、今度は新型ウイルスでもうボロボロ。最近は生きているのが奇跡と思うようになった」と苦笑いしていたのが妙に印象的でした。

 今回の新型ウイルスは人から人への感染力が非常に強く、中国・武漢や韓国、ドイツのように完全に押さえ込んだかに見えたにも関わらず、数カ所で再びクラスターが発生し、長期化は避けられないと誰もが感じるようになりました。

 それも世界的感染の拡がりには時差があるため、経済を支える「人と物の移動」が長期的に制限される可能性が高く、ダメージの大きさは計り知れず、景気回復が容易でないことが確実視されています。

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、コロナ禍終息後の景気回復はV字ではなく、スポーツ関連商品を扱うナイキのロゴのような「大幅な落ち込みに続く、痛ましいほど遅々とした回復」のスウィッシュ型になるかもしれないと予想しています。

 具体的には「欧米など西側諸国の国内総生産(GDP)が2019年の水準に戻るのは来年の終わりか、それ以降になるとみられている」と書いています。根拠は「今春に入り統計に表れた景気収縮の深刻さ」「失業者の急増」「世界における何カ月あるいは何年にもわたるソーシャルディスタンシング(社会的距離の確保)が、来年のかなり先まで経済活動を押し下げる気配」だとしています。

 ワクチンができるまではソーシャルディスタンシングは継続する可能性は高く、消費生活やオフィス活動、生産活動など、あらゆる稼働が制限され、例えば「航空会社は旅客数がコロナ前の水準に戻るのは早くとも2022年になる」との見方が強まっています。

 地価の高い日本のように狭い空間にどれだけたくさんの人を詰め込めるかがビジネスの採算に大きな影響を与えるビジネスモデルは致命的です。生産性をあげる要素から「空間」を取り除かないといけない事態です。

 WSJは「消費財メーカーは、買い物客が割安な商品に切り替えて、ぜいたくを控え、ロックダウン(都市封鎖)が解除されても相当長い間生活を切り詰めるとみている」と書いています。結果、人員削減は不可避で高い失業率が長期化する恐れもあるというわけです。

 ロックダウン解除のスピードも当初の予測よりは遅く、ヨーロッパではどの国もサッカーなどの大規模イベントの再開は夏以降になりそうです。それも幾つかの大規模イベントは中止が決定しています。フランスではスタジアム周辺のレストランや商店は客が戻らないと悲鳴を上げています。

 フランスのパリに続く観光名所の島の僧院、モンサンミッシェルは入島解禁されましたが、外国人観光客が訪れるのは夏以降かも知れず、地元のお土産品やレストラン、宿泊施設は不安を抱えたままです。

 「秋から冬にかけてウイルス感染が再び増加しかねないと懸念されていることから、一部アナリストは回復が頓挫する可能性を警告している。スウッシュ型回復は滑らかではなく、凸凹だらけの線になるかもしれない」と予想しています。

 リーマンショックの時も大型解雇が相次ぎ、なんとか政府が下支えしましたが、今回は経済活動の要の貿易も減速状態で、人が移動できないために多くのビジネスが前に進めない状況です。特に移動に関わる航空業界、自動車業界の打撃の大きさは想像できない規模です。

 それに何より消費の落ち込みが致命傷を与えそうで、多くの企業が持ちこたえるためのビジネスモデルの大幅な変更を迫られています。ビジネスの前提条件が共倒れ状態にある中、この危機を正面から受け止め、これまでにないビジネスモデルを考え出し、先手を打つ以外に方法はなさそうです。

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  台湾・桃園市

 これまでアジアのシリコンバレーを豪語してきたのは中国の深圳。ところが今、新型コロナウイルスでチャイナリスクが浮上する中、コロナ対策優等国として注目される台湾に熱い視線が向けられています。IT機器のパーツ供給や組立で高い評価を得てきた台湾のハイテクインフラはアメリカIT企業も魅了しているようです。

 フォーカス台湾というニュースチャンネルは「米アップル社が台湾に工場を新設する方針であることが分かった」と報じました。場所は「すでに同社が拠点を設けている北部・桃園市の龍潭サイエンスパーク(科学園区)の2期エリア内」として、すでに今年2月に新工場開設の認可を同社は受けていたことも同パークを管轄当局に確認済としています。

 報道によれば、アップルは桃園市郊外に位置する同パーク総面積約76ヘクタールの1期エリアにすでに拠点を構えており、今度は2期エリアに工場を建設する方針。1期エリアには半導体受託製造大手の台湾積体電路製造(TSMC)や液晶パネル大手などが入居しているといいます。

 台湾政府は「アジア・シリコンバレー計画」を着々と進めており、特にアジアを代表するハブ空港の1つ、桃園国際空港のある桃園市は交通機関の整備が進んだことで首都の台北市と生活圏を共にし人口成長率は同国トップです。台湾はすでにPCやスマートフォン、プリント基板、液晶パネルなど、様々な高品質の情報通信技術(ICT)製品で知られています。

 台北市の仏系金融機関で働くフランスの大学の私の教え子は「コロナ禍で中国投資規模縮小の動きが始まる中、コロナ対策で得点を稼いだ台湾は世界のIT企業から注目を集めている」とメールを送ってきました。彼はフランス生まれの中華系カンボジア人難民2世です。アジア・シリコンバレー計画は、IoT分野で様々なイノベーションを起こしていこうというプロジェクト。

 現地の報道では、桃園市内には新幹線駅前の「アジア・シリコンバレーセンター・イノベーションセンター」、桃園・亀山工業区エリアの「IoTイノベーションセンター」、その他ベンチャー企業の創業支援・イノベーションを行う「国際青年起業ビレッジ」の拠点づくりが進められています。

 電子機器の受託製造サービスでは世界最大手の鴻海精密工業が近く最新の業績発表をする予定ですが、新型ウイルスで中国の工場閉鎖などで厳しい報告が予測されています。ただ一方で最悪期は過ぎたとの見方が大勢を占めています。同社は日本の家電メーカー、シャープの親会社。

 台湾は新型ウイルス感染拡大を抑え込んでいる国として注目を集め、例えば中国製マスクに欠陥品が多いとの批判が高まる中、台湾製マスクの評価が高まっています。世界各国で防疫物資が不足する中、防疫物資を台湾から購入したいとの問い合わせが数十カ国の行政機関や民間機関から寄せられているとの報道もあります。

 台湾は中国が国連で独立国家として承認しないために、世界保健機関(WHO)から加盟国としての情報が得られず、世界的にも問題視されています。その台湾は中国が影響力を増すWHOを頼らずに感染押さえ込みに成功したといわれ、アメリカのWHO批判を後押しています。

 アメリカのIT企業の台湾投資拡大は、中国にとっては看過できないことでしょう。再選された台湾の蔡英文総統と良好な関係にあるアメリカのトランプ大統領は現在、米中貿易戦争の最中にあり、新型ウイルスのパンデミックの中国責任追及の先頭にも立っています。台湾には追い風が吹いているといえそうです。

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 ここ数カ月のテレワークで仕事の生産性が落ちていると感じる人は非常に多いといわれています。特にチームで働くことが多い昨今、職場なら臨機応変に手短に済ませられる上司への質問や同僚との会話が容易でなくなっているという人も少なくないでしょう。

 今は様々なコミュニケーションツールがあり、身体的距離があっても結構、簡単な会話はできるようになっているので、うまく使いこなせば自宅にいても仕事はできるという人もいます。同じオフィス内でもメールのやりとりをするのが習慣化しているケースは非常に増えているので、その部分では問題ない人も増えています。

 通勤時間がない分、プライベートな時間が増えて喜んでいる人もいるし、逆に無限に仕事が流れ込んで長時間労働を強いられている人など様々です。日本の外資系企業で部長を務める英国人の友人は、今までも職場で部下からの大量メールに悩まされていたのが、今はテレワークをする部下から数倍のメールを受け取り「自分はいったい、いつ自分の仕事ができるのか」と嘆いています。

 仕事に取り組む姿勢にはその国の文化が影響を与えるものです。では、多文化チームではどんな姿勢が重要なのでしょうか。日本では20年前から「コミットメント」、すなわち責任を持って仕事に取り組む姿勢が強調されました。きっかけは倒れかかった日本の自動車メーカー、日産にフランスから送り込まれたカルロス・ゴーン氏がしきりに使った言葉だったからです。

 最近、欧米のビジネススクールでは、個人と組織が一体となり、双方の成長に貢献しあう関係を構築する「エンゲージメント」の重要さが指摘され、研究も進んでいます。これは会社への忠誠心や愛社精神という意味では日本で語られてきたことですが、違いは個人と組織を平等に扱い、ウィンウィンの関係にするという部分です。

 組織のための個人という考え方の日本と個人を生かすための組織という欧米の考えを合わせたようなニュアンスもあります。もう一つは30年以上前から日本でいわれるようになった「モチベーション」です。部下の仕事へのモチベーションをいかに高めるかというのは今でも大きな課題です。

 想定外のテレワークなどで、仕事のやり方を変える必要に迫られる中、この環境変化の中で最も求められるのは生産性です。そのための「コミットメント」や「エンゲージメント」強化であり「モチベーション」を高めることです。そこで重要さを増すのは、誰がやらなくても自分がやるという主体性と、自らが率先してやるという自発性です。

 主体性も自発性も状況に応じて自分が何をすべきかを考え、判断し、自ら行動できることを指しますが、主体性は自分の意思や判断に重点が置かれます。どちらかというと自分の城は自分で守る的な性質のもので、主体性の強い人の傾向は自己陶酔に陥りやすいことです。結果に正当な評価がないと強い不満を持つ場合もあります。

 自発性は「自ずから発する」と書く通り、自分の内部から発した衝動で行動するという意味で、上司に命令されなくても、状況を判断し、自ら積極的動くことを意味します。チームの目標から自分の役割を悟って自発的に行動を開始し、主体性を持って仕事を進めるというわけです。

 日本人は責任感は強い方なので残業しても仕事をやり抜こうとする人は多いのですが、主体性や自発性によるものとはいえません。テレワークは、この2つがないと結果は出せません。どちらも自分自身の「意志」が明確であることが重要です。

 テレワークは自分と仕事との関係を見つめ直すきっかけを提供しています。過剰に空気を読もうとする日本人は、異常なまでに人に気を使って生きています。それは自分の主体的意志というのではなく、義務のニュアンスが強いわけですが、テレワークではまず空気は読めません。

 生産性の追求が長らく日本でされなかったのは、働く人間が会社中心に動き、長時間労働が問題にならなかったからです。家庭を犠牲にしてでも会社に尽くすのが当り前と考えられていたからです。ところが終身雇用も保証できず、社員に犠牲的に働くことを強いられない環境変化の中で、働くことの意味は大きく変わっています。

 そこに今度はテレワークの推進となれば、働く目的を問い直さざるを得ません。欧米諸国で生産性が強調され、進化させた理由の一つが、働く側も働いてもらう側も、いかに短い時間に少人数で効率よく最大限の利益を上げるかに集中してきたからです。会社側にとっては利益追求と労働コスト、働く側にとっては会社の利益とプライベートの生活の充実が目的です。

 今は日本でも生産性に注目が集まっていますが、これは頭だけで進めるものではなく、会社側も働く側も少人数で短時間に最大限の成果を上げたいという湧き出る欲望がなければ、推進されません。男性なら仕事もおもしろいけど、家族と過ごす時間などプライベートの充実にも満足感を得たいという気持ちがなければ、生産性を上がりません。

 仕事のスタイルを変えるには大胆な発想転換と大きなエネルギー、時間も必要ですが、今回の転換は社員の主体性、自発性を強化し、会社を強くすることに繋げる方が得策です。そのための評価のあり方も根本的に変える必要があります。多くの欧米の専門家が、ビジネスの世界も完全に元の状態に戻ることはないと指摘しており、この際ポジティブな変革に取り組むのが正しい選択だと思います。

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 もう30年以上交流している韓国人の知人の行方が、3月に入り分らなくなっていたのが、ようやく電話が掛かってきました。電話口の彼は「私は今、アメリカです。われわれ夫婦は永住権を取るため滞在している」と驚きの状況を伝えてきました。

 親は北出身でソウル大卒のいつも冷静な知人の驚きの行動、それもかなりの高齢の夫婦のアメリカ移住は何を意味しているのかと、電話を受けた後に考え込んでしまいました。要職を歴任し、引退後もソウル市内の富裕層が住む地区で何不自由ない生活を送っていたのに、今になってなぜと思いました。

 知人は数人の子供がアメリカに住んでおり、実は韓国の新規感染者数がピークに達した2月に在米の子供からアメリカに逃げるように強くすすめられ、アメリカに行ったそうです。そこで今度は帰国が困難になる中、前々から考えていた韓国脱出計画を実行に移すことを決めたというのです。

 それにしても高齢夫婦のアメリカ移住は無謀ではと思ったら、韓国では珍しくないというのです。よりよい生活を求めて海外移住するのに年齢は関係がなく、1980年代から増加し、アメリカ、カナダ、オーストラリアには子供の家族が移住して経済基盤ができたら、親を本国から呼び寄せるパターンは一般的だとうのです。

 移住を決めた友人曰く「もう今の韓国にはうんざりだ。特に文在寅政権のでたらめさに堪えられなくなった」と失望感を露わにしました。もともと保守で「北朝鮮は金一族が全員死ななければ分断問題は解決しない」という持論を持つ知人ですが、韓国人では私が出会った尊敬できる数少ないひとりでした。そういえば数年前、北欧で韓国大使を務めた他の知人もアメリカに移住してしまいました。

 私は「でも、アメリカは韓国以上に感染者が多いし、危険ではないのか」と聞くと「確かにニュヨークは酷いけど、うちの息子家族が住む東海岸のウエスト・ヴァージニア州は安全だし、医療もしっかりしている」というのです。

 ついでに、ここ数日、韓国で新型ウイルスの感染が再び拡大していることについて聞いてみると「そりゃそうでしょ。政府はでたらめな数字を並べてきたわけだし、私は驚きませんね」といい捨てました。感染対策の模範国という国際的評価についても「そんなのは、これから消えるでしょ」と否定的です。

 韓国人にしては、まったく激情した姿を見たことがなく、反日感情もなく、何でも前向きな知人の言葉に驚きました。同時に10日ほど前、ソウルに住む他の友人と電話で話した時も「コロナ模範国なんておかしいでしょ」といっていたのを思い出しました。

 韓国は今、政府による緩和措置が裏目に出て、ソウル市内繁華街・梨泰院のクラブを訪れた男が感染源と思われる40人の感染が確認されました。感染封じ込めが成功したはずの韓国では、再び増加に転じた感染者数を前に緊張が走っているようです。ソウル市はクラブなど市内すべての遊興施設に対して集合禁止命令を出しましたが、1時的な現象かどうかは不明です。

 フランス上院の報告書が「韓国はコロナ模範国」と賞賛したばかりですが、経済破綻も指摘される韓国では、喜んでいるのは政府だけで国民には複雑な思いがある事を垣間見た思いでした。実際、知人のように海外移住できる富裕層はいいにしても逃げ出せない中間層、貧困層の韓国人は複雑な思いです。

 半島に住む人間は大陸や島国の人間とは違うといわれています。今ではフィリピンやベトナムなどに住む韓国人も増えています。マスコミで報じられているような新興国から先進国へ邁進する韓国とは違った側面があることは無視できないことです。

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 人間はいつかは時間と空間を超越したいと考えている。ドラえもんの「どこでもドア」は空間移動に時間を要しないし、映画「バック・ツー・フューチャー」のようなタイムスリップの物語も数知れず、コロナ禍で身動きが取れない中、その欲望はさらに強まりそうです。

 南米ペルーの秘境マチュピチュの遺跡を訪れることは世界中の人にとって容易なことではありません。ルーヴル美術館を本格的に回ろうと思ったら何日も掛かります。ダヴィンチの「モナリザ」の絵の裏側はどうなっているのか見ることはほとんど不可能です。

 これまで歴史的文化遺跡や美術館は、デジタル化の流れの中でその場をヴァーチャルに自由に歩ける工夫がされ、単に押し付けの映像紹介でなく、まるで自分の足で歩いているように自分の意志で映像を動かすような仕掛けも工夫されるようになりました。詳しい作品説明、作家のプロフィールから、表面的ではない深い体験も可能です。

 例えば、2015年に公開されたGoogleが世界中の芸術作品を集めたギャラリーアプリ「Arts & Culture」が進化し、世界に散在する巨匠の作品を芸術家ごとに検索したり、テーマや色ごとに検索し、画面に一同に並べることも自宅でできるようになりました。

 世界中の有名な美術館を訪れ、ヴァーチャル体験するだけでなく、紀元前からの人間の文化の営みをバーチャル空間で俯瞰することもできます。アプリを起動するとホーム画面はデフォルト状態で「芸術」「歴史」「史跡」タブがあり、そこから自分に関心のある画面に移動できます。

 美術館ではGoogle360°ストリートビューを使って館内を自由に移動し、作品に近づくこともできます。実際に美術館に行っても難しい、絵の細部に近づくこともできます。今後、VRや5Gの高画質が普及すれば、リアル感はさらに増すでしょう。

 昔、広告業界に信じられないような才能を持つ人物がいて、海外取材で撮る絵柄を実際に鉛筆で描いて見せて指示する人がいました。彼の頭の中には世界の名所旧跡が映像として頭の記憶されており、いつでも絵にすることができる信じられない人物でしたが、今はスマホで簡単にその現場を探索できるようになったわけです。

 美術館だけなら、ヴァーチャルミュージアムというウエブサイトがあります。世界中のミュージアムを訪れることができます。自宅待機の子供たちと世界中の美術館を訪れる家庭も増えているでしょう。

 数年前、イタリア・フィレンツェで日本人十数人のグループ旅行者に出会いました。「今どこに行ってきたんですか」と聞いたら「覚えていない」といい、「これから、どこに行くんですか」と聞いたら、「さあ」という答えが返ってきました。実際に高額の旅行代金を払っても文化は身近にはなっていないといういい例です。

 でも、子供時からヴァーチャルで美術館や遺跡体験していると、実際に行った時の感動はひとしおでしょう。今はベルリンフィルなどの名コンサートも高音質でヴァーチャル体験できます。有料、無料の様々なサービスが次々に登場し、デジタル化で時間、空間を超える体験が増えています。

 無論、これは視覚、聴覚を中心とした話です。これだけでは人間の想像力を発達させるのは限界がありまする。例えば文学作品の映画化は難しいのと同じように文字の行間から人間が思い描く想像の世界はもっと豊かといわれています。デジタル化が文字離れに繋がるのも注意が必要です。

 いずれにしてもデジタル化で、世界中の豊かな文化が身近になるのは素晴らしいことです。自宅で免疫力を高める一助にもなっているでしょう。この分野は、この数年で飛躍的な発展を遂げてきましたが、まだまだ入り口の段階に過ぎないかもしれません。

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 コロナショックは、世界中でライフスタイルを根底から変えているようです。フランスでは超おしゃれなマスクが売り出され「これからのファッションのトレンドはマスク」というほどで、一切マスク着用の習慣のなかったフランス人の意識の変化は驚きです。

 ここにきて、子供がいる家庭もいない家庭も封鎖措置で家で過ごす時間が圧倒的に長くなったことで、住んでいる家そのものへの意識も変わりつつあるようです。フランスは、もともと別荘所有率が高く、最新のデータで国民の18%が別荘を所有、最も高いスペインで27%です。所得が低くても別荘を持つ人は少なくありません。

 大都市のアパートで生活し、週末は別荘で過ごすというパターンは完全に定着しており、4週間のヴァカンスを別荘で過ごす人もいるので別荘で過ごす時間はかなり長いといえます。それも理想は大自然に囲まれ広い庭がある癒される一軒家を持つことで、私の周りには30代で別荘を所有している人も少なくありません。

 パリに住む妻の甥っ子夫婦は、なんと3月中旬、ブルターニュ地方ヴァンヌにある別荘に滞在中、外出禁止令が出され、実は今も別荘にいます。夫婦とも建築家で別荘にいても仕事はできるというので、ウイルスに対して比較的安全な田舎に滞在し続けています。甥っ子は38歳です。

 多くのフランス人が南フランスでの生活に憧れ、パリやリヨンといった大都市の本社勤務よりは、南フランスの支店への転勤を希望します。人生を楽しむことが中心のフランス人にとっては都会生活は苦痛でしかありません。そこに新型ウイルス到来で、ますます地方のゆったりとした生活を望む人は急増中です。

 特に子供がいる家庭では庭は非常に重要。これまで外出制限令で動けない家庭でも庭がある家庭は子供を庭で遊ばせることでストレス解消ができていました。アパートではせいぜい狭いベランダで子供を遊ばせるのが精一杯です。それに大人も庭があれば随分違います。

 パリ郊外の一戸建ての家に住む義理の妹夫婦は、この7週間は天気がよければ1日のうち少なくとも4から5時間を庭で過ごしています。朝食、昼食は庭のテラスで太陽を浴びながら食べ、夫婦で毎日1時間は庭で体操し、この期間の庭の手入れで驚くほど美しい庭に変身しました。

 彼らはもともとパリ・ヴァンセンヌの森近くのアパートに住んでいましたが、20年前に今の家を探す時、自分たちが一軒家に住めるとは思っていませんでした。ところがたまたまスイス人が別荘として使っていた一軒家が売りに出ていて値段も手頃だったので購入を決めました。今回のコロナ禍で「アパートに住んでいたら精神をやられたかもしれない」といっています。

 そんな彼らもコロナ禍が収まり、もうすぐ訪れるリタイヤになれば、今の家を売って南フランスに引っ越す計画を着々と進めています。とにかく庭を含めた家のゆとりあるスペースを求める動きは、今後、世界中で加速しそうです。

 もう一つ、コロナ禍で生活に変化を及ぼしているのは、自宅での料理が増えたことです。欧米のメディアではコロナ禍が終息しても、自宅での料理の頻度はあまり減少しないかもしれないと予想されています。無論、この期間、料理の宅配も急増しましたが、料理の楽しみが拡がっているのも確かです。

 子供と一緒にケーキづくりをする新たな習慣は日本でも拡がっていると報道されています。これも狭いキッチンではなかなか実現しません。フランスと日本のライフスタイルの違いは何ですかと聞かれたら、まずいえるのは自宅で楽しむ時間がフランスの方が圧倒的に長いということです。

 季節ごとにカーテンを変え、週末は親戚や知人らと食事を楽しむのも自宅です。食器類も大量に所有し、気分を変えています。花で部屋を飾り、逆にテレビを観る時間は日本より短く、家の中で楽しく過ごすことが圧倒的に多いといえます。

 コロナ禍がもたらす生活スタイルの変化は、もう元には戻らないともいわれています。可能ならば地方の田舎暮らしを実現したいと考える人も増えるでしょう。コロナ禍感染率も地方は大都市比べ倒的に低いのが現状です。都市型タワーマンショ暮らしへの憧れは減少していくかもしれません。

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 コロナ禍で大手を含め、事業の先行きが見通せない企業は増える一方ですが、欧州連合(EU)は域外からの直接投資、とりわけ中国が欧州企業買収に乗り出すことを警戒しています。そのためEUは外資規制に本腰を入れる動きを強めています。

 EUがが守ろうとしているには、発電施設など重要インフラや国が守りたい高度な技術で、安全保障にも関係する重要産業です。規制強化に動いている背景には、世界への影響力を強める中国が経営に行き詰まった欧州企業の買収の機を伺っていることへの警戒感があります。

 欧州委員会のホーガン委員(通商担当)は4月の貿易相会合で「経済的な脆弱性は重要なインフラや技術の売却につながる」と警告、利益を出せず株価が下落し苦戦を強いられる企業に中国が食指を伸ばしていることに強い警戒感を示しました。

 実は、この数年、中国による高度な技術を持つ欧州企業の買収や加盟国の大型インフラプロジェクトへの中国の資本参加は問題視されています。キャメロン政権下で進められた中国企業とフランス電力による英ヒンクリー・ポイントの原発計画に同国の会計検査院がハイリスクを理由に異議を唱えたのは3年前のことでした。

 外資への懸念は中国に対してだけではありません。今や世界中が新型コロナウイルスのワクチン開発に凌ぎを削る中、アメリカのトランプ大統領がワクチン開発で有望なドイツのバイオ医薬品企業、キュアバックに多額の資金提供をする見返りにワクチン独占を画策した疑惑が3月に浮上し、EUは慌てて同社への8000万ユーロ(約92億円)の支援を決め、引き留めました。

 無論、最大の懸念は中国国営企業による買収です。すでに財政危機に陥ったギリシャは港湾施設や観光拠点の島などの中国による買収を許しています。イタリアは昨年、中国の広域経済圏構想の一帯一路への参加を受入れ、重要湾岸施設で巨額の融資を受けていますが、コロナ禍で苦しむイタリア企業が中国の買収標的になる可能性は極めて高いといえます。

 欧州委はコロナ危機を受け、戦略産業への潜在的リスクが高まっているという認識を示し、特に医療分野の域外からの直接投資の審査の厳格化を各国に通達しています。すでにドイツ政府がEU規制に基づく外資規制強化の法令改正を承認しています。

 中国に無防備だったイタリアも今回ばかりは買収制限強化に動いていますが、経済的打撃が大きいイタリアが中国資本をブロックできるかどうかは、EUの支援に掛かっているともいえます。欧州委員会は昨年来、域外からの直接投資の審査で加盟国間の情報共有、相互監視の新規則を導入しており、特に基幹産業、需要技術を守る動きを強めています。

 問題は、今回のコロナ禍で予想されるリーマンショックを超える世界的景気後退の中で、どこまで外資を規制して企業が持ちこたえられるかです。7人に1人が自動車産業で働くドイツでは、操業を停止していたフォルクスワーゲン社の小型車の生産ラインが稼働再開しましたが、輸出先が不況で買い手がない状況での不安を抱えています。

 今後、世界で倒産が相次ぐことが予想され、買収価格も下落し、外資による企業買収は活発化することも可能性も高まっています。特に政治と経済を分離しない中国が高度な技術取得や外交的メリットを理由に先進国の優良企業に対する買収攻勢を掛けてくる可能性は否定できません。

 コロナウイルスの発生源で世界拡散の原因を作った疑惑を持たれる中国を批判する声が高まる中、EUは過去のいかなる時代よりも中国への警戒感を強めています。欧州諸国の旧植民地を債務の罠に掛け、荒らした中国への苛立ちも高まる一方です。

 とはいえ背に腹は変えられない状況に追い込まれれば、中国資本選択も問題解決策として受け入れるしかない状況も考えられます。フランスでは経済とウイルス対策の葛藤の中、ポジティブなマクロン大統領と国家経済崩壊の危機を懸念するフィリップ首相の対立が伝えられています。今後、リスクを厳しく監視ながらも外資導入は避けられないと思われます。

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 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、すべての人に例外なく先行きが見通せない前代未聞の不確実性をもたらしています。中国では封鎖解除後の5月1日のメーデーからの5連休で1億人が移動したとされる一方、観光地は通常の半分程度で、未だ市民の恐怖心が消えていないことを物語っているようです。

 封鎖措置で大手、中小問わず、倒産や閉店に追い込まれるケースは数知れず、経営者だけでなく、失業する人々、失業のリスクを抱える人々を含め、先行きをまったく見通せない不確実な状況に不安や恐怖を抱える人は世界中にいるはずです。

 国民文化特性を指数化したことで知られるオランダの社会心理学者、ホフステード教授の6次元モデルの中に、不確実性の回避というのがあります。6つの次元の中には権力格差や個人主義か集団主義か、時間感覚などがありますが、それらは国民性として一般的にも指摘されるものです。しかし、不確実性の回避度は私にとっては最も興味深いカテゴリーです。

 まさに今の状況は、不確実性が全世界を覆い尽くし、様々な分野の世界中の専門家たちが、世界が新型ウイルスのために、過去にない大きな変化をもたらすと指摘しています。それも今のところ、どう変化するかを予想することさえできない状況です。

 この変化はリーマンショック以上の景気後退をもたらし、これまで努力して得てきた全てを失う恐れもあり、人々は萎縮し、精神を病み、ネガティブ志向が蔓延する恐れもあります。当然、免疫力も落ち、ウイルスに勝つことが困難にもなりかねません。それも家で一人で悶々としていたら、なおさらです。

 ホフステードの長年の調査研究では、アメリカ人や中国人、英国人は比較的に不確実な状態に強く、逆に日本人、フランス人、ドイツ人などは不確実な状況に弱いとされています。英国人がブレグジットで3年半も迷走したにも関わらず、失望せず、常に楽観的だったのは不確実な状況をあまりストレスに感じないという側面もあったと思われます。

 中国も今回、新型ウイルスの発生源となり、世界に先がけて感染拡大しましたが、自殺者が続出するようなことはありませんでした。血で血を洗うような闘いを繰り返し為政者が何度も変わってきた歴史を持つ中国では、不確実な状況への免疫力があるのかもしれません。

 日本人は不確実な状況に対する免疫力はあまりなく、極度の不安を感じ、海外旅行で現地でも買えるようなものまでスーツケースに詰め込み、ガイドブックを読み込み準備に余念がありません。これはドイツ人なども似ています。日本人は安心、安全が第1といわれ、裏を返せば不確実な状況に極度の不安感があるともいえます。

 とはいえ、世界中の誰もが先を見通せない状況に、何らかの不安を抱えているのは事実です。ウイルスは自然災害同様、人間が完全にコントロールすることは不可能です。仮にワクチンができても、そのウイルスが変異すればワクチンは効きません。次々に新型ウイルスが生まれるインフルエンザがそれを証明しています。

 今では世界の嫌われ者になっている日本から違法逃亡した日産のカルロス・ゴーン前会長は、逃亡先のレバノンでのインタビューで、かつて日産を建て直した英雄が犯罪者扱いにまで転落した状況に対して「人生、山あり谷あり」といいました。常人でないメンタルの強さを持つ同氏は落ち込む気配はありませんでした。

 世界的に知られるフランスのビジネススクール、INSEADの戦略論の専門家、ネイサン・ファー教授は、不確実性にはフラストレーションがつきものだが、不確実性に意味を与えることによって、それに対処できるようになるという対処法をハーバードビジネスレビューで取り上げています。

 行動科学の研究では、フレーミングと呼ばれ、不確実で絶望的状況を意味づけること(あるいはどう受け止めるか)は大きな助けになるというわけです。例えば、悲劇に見舞われても「もっとひどい状況に追い込まれた人もいる。自分はなんと恵まれているか」と思えば感謝の心が生まれてくるという具合です。

 「この試練は自分をさらに強靱にするためのものだ」と意味づければ対処の仕方も変わるということです。ファー教授は中でも不確実な状況の中にいる自分自身をヒーロー化することの有効性を説いています。逆境を乗り越えるのはヒーローだからです。

 旧約聖書に登場するモーセは、イスラエル民族を率いてエジプトを脱出し、砂漠を彷徨い、幾多の試練にも負けなかったヒーローです。歴史上、尊敬を集める人間は何人もいますが、自分とそのヒーローを重ね合わせることで、悲劇的状況を超えられるというわけです。つまり、自分に指針を与える師を持つことが重要だということです。

 しかし、私は、それにもう一つ付け加えるとすれば、クリエイティブマインドと人と喜びを共有することを挙げたいと思います。現状を破壊する自然災害や疫病は、実は新たな創造の機会を提供してくれます。私はもともと絵描きなので、例えばキャンパスに何時間も何日も掛けて描いた油絵を気に入らなければ、ナイフで削り取ったり、キャンパスを張り替えて描き直します。

 つまり、困難な状況は、よりクリエイティブな機会を与えてくれます。それだけでなく、その新たな創造の目的は喜びです。その喜びは自分だけのものではなく、より多くの人が喜んでくれた時に大きな力が生まれます。免疫力を高めたければクリエイティブであり続けることだと思っています。

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 新型コロナウイルスで世界最長の封鎖措置を行ったイタリアは今、段階的緩和に動き出している。学校閉鎖を学年末の9月まで継続されることを決めたイタリアでは、数人単位での保育所利用や屋外での少規模サマースクールの開催の検討に入っていることが伝えられています。

 前代未聞の半年の学校閉鎖は、戦争さながらの様相ですが、夫婦共働きが当り前のイタリア社会で子育てを行う多くの世帯からは悲鳴の声が上がっています。教育の遅れをどのように穴埋めするのかも課題です。乳幼児を抱える親は身動きがとれない状態です。

 世界何処も同じ事情を抱えていますが、全国紙コリエレ・デラ・セラは今月2日、政府が6月から幼稚園と保育所を利用する0〜6歳児の超少人数保育を認める方針であることを伝えました。

 同計画では、定員は3〜6名で時間交代制で通園、園内に入る際に検温し、徹底消毒されたおもちゃしか使用できないようにし、園児はマスクを着用しないが、教師や保育士は着用が義務づけられる。9月までは使用していない小・中等学校の校庭や消毒を徹底すれば体育館の使用も可能。重要な点は子どもたちが、できるだけ長く野外で過ごせる環境を整備することとしている。

 さらに9月からの授業再開についても、学校の再開方法を検討する専門家委員会のパトリツィオ・ビアンキ委員長は、学校制度の大変革が必要になるとの見解を明らかにし、老朽化した校舎の修繕と各家庭で学習が可能なインターネット環境の整備を進めることを推奨。さらに、多くの授業を屋外で行うことも提案しています。

 これはコロナ禍との付き合いは長期化するとの認識がベースにあり、感染終息で元の状態に戻すのではなく、向う5年間に渡り、3,000億円以上の予算を投じて教育政策の大変革を実行するという明確な意思が示されたものです。

 フランスでも、12人から15人の少人数を前提に段階的に5月11日から授業を再開する流れですが、フィリップ仏首相が「コロナとは長い付き合いになる」という認識を示しており、マクロン仏大統領も教育には強い思い入れがあるため、今後、大胆な教育改革が打ち出されることが期待されています。

 イタリアの教育改革では、長期的に密を避ける意味でも、多くの授業を野外で行うことを提案、教室も、従来型の生徒20人が机を同じ方向に並べて授業を受けるのではなく、最大10人を限度とする少人数クラスで机を半円形に並べて座る形式に変え、時差登校も提案しています。

 つまり、これは数カ月の臨時措置ではなく、コロナとの長い付き合いを前提にしたもので、世界で2番目に多い感染死者数を出したコロナウイルの恐ろしさを知るイタリアならではの後戻りしない決意を表した取り組みともいえ興味深いものがあります。

 翻って日本を考えると、未だ出口戦略が政府から示されない中、緊急事態宣言を5月末まで延期することだけが明らかになっていますが、専門家も長期戦(日本では戦争アレルギーなので”長丁場”)との認識を示していますが、国家や社会、教育のあり方を抜本的に改革するチャンスとは受け止められていないように見受けられます。

 日本の教育のあり方の課題は、集団教育から個別教育への切り替えといわれながら、集団教育で育った世代が教育界を覆う中、改革は進んでいません。今回のコロナ禍で自宅での遠隔授業が世界では進んでいますが、日本は自治体の予算では遠隔授業を整備するためのタブレットの配布などもできず、まったく進んでないようです。

 遠隔授業は個別授業でもあり、教師の生徒に対する個別の丁寧な対応が鍵を握ります。私自身も教育に関わる現実からすれば、個別に学習内容の理解度を教師が確認することの重要性は痛いほど分かります。人間の成長は個人個人で異なるので、極端にいえばフランスのように、その学年でマスターすべきものが基準点に満たなければ、留年させるぐらいの丁寧さが必要です。

 密という意味は、少子高齢化で廃校になった学校が日本全国にあるはずです。そのスペースを活用して超少人数クラスを運営することも可能でしょう。日本は悲しいかな弁当に象徴されるように箱の様な小さなスペースに詰め込む文化があり、いい面もある一方、余裕はありません。密を避けるという意味では詰め込みは絶対回避すべですが、逆にスペース確保は人間に余裕を生む利点もあります。

 これからは校舎の設計にもコロナ禍対策は影響を与えるでしょう。広い開放的空間、風通し、外とのアクセスの良さなど、様々な工夫が生まれるはずです。コロナ禍で人口が集中する大都市の弱点が露呈したことで地方で余裕を持って子育てしたいという動きも出てくるでしょう。

 同じ状態には戻れるという甘い考えを排し、コロナ禍を期にリスクに強いだけでなく、より教育効果を上げる教育政策の抜本的に改革の検討をスタートさせるべきではないでしょうか。

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     メネシー市が導入したセルフサービス診療ブース (cVille de Mennecy)
  
 フランスで新型コロナウイルスで外出禁止制限措置が発令され、人と人との距離を取ることが迫られる中、最も懸念されたのが感染者急増による医療崩壊でした。そこで注目されるのが、最初の入り口である健康相談窓口にAIチャットボットを導入することや初期診療の無人化、遠隔治療などです。

 フランスでは新型コロナウイルス感染症の電話相談窓口「Allo Covid」が先月27日にサービスを開始しました。このサービスはAIチャットボットがオペレーターに代わって対応する全自動型サービスです。フランスでは私が口座を持つクレディ・アグリコールなど大手銀行は、すでに問い合わせ電話にチャットボットが導入されていますが、医療現場にも導入された形です。

 AIチャットボットのオペレーターは、症状や体温、年齢、身長、体重などについて質問し、その答えに応じて質問を変えながら、最終的に新型コロナウイルスの感染の可能性について判断を下し、「自宅待機」、「係りつけ医師の診断を受ける」、「救急ダイヤルに電話する」の3種類のアドバイスをします。

 15歳以上であればサービスを受けられ、5月11日の外出制限緩和後には「感染の疑いが高いので、検査センターに行ってください」というアドバイスも加えられます。AIチャットボットは学習能力も高いので、時間と共に対応能力も向上すると言われています。窓口は同時に1000本の通話に対応できるとしています。

 フランスではネット上で、同様なサービスを行っていましたが、重篤化しやすい高齢者の中にインターネットが使えない、そもそも自宅にネット環境がない、スマホを持っていないなどの事情があり、最も彼らが慣れている電話相談の公設サービスが追加された形です。

 同サービスは、医学分野の公的研究機関INSERMとパリ大学医学部が、民間企業の仏国鉄(SNCF)のデジタルサービス子会社、ベンチャー企業のAllo-Mediaと協力して実現しました。ネットでの相談同様、「Allo Covid」で集められた情報は取得した郵便番号で居住場所を特定し、分析機関でクラスター早期発見にも役立つとしています。

 初期的診療について最近、パリ南郊外メネシー市が導入したのが、セルフサービス診療。コロナウイルスの院内感染を恐れる人が増える中、数年前から準備が進んでいたテクノロジーを前倒しで導入。患者が様々な検査装置が設置されたブースに入り、目の前の画像に現れた医師の指示に従い、体温、血圧、心拍数、酸素濃度などを計り、自分でカメラを用いて喉の奥を撮影したりする。

 そのデータを元に診断結果がブース内でプリントアウトされて出てくる仕組みで、最初から最後まで誰にも合わず、診療を受けることができます。医師も患者に接することでの感染リスクがなくなります。感染が疑われる人の来院は世界中で警戒されていますが、これなら安全というわけです。

 さらに医療崩壊を防ぐ手段の一つとして考えられているのが遠隔治療です。マクロン仏大統領は2017年の就任当初、遠隔診療、遠隔治療など新しいテクノロジーを使った医療体制の整備を公約に掲げていました。医師不足という背景もあり、2018年にはアプリなどでネットを使った診療でも保険が適用されるようになりました。

 無論、診察費に関する保険適応には課題が残っていますが、今回のコロナ禍で遠隔医療は加速しています。今後、5Gの普及で画像がより鮮明になることから、遠隔治療の正確さが増し、医療体制の地域差解消にも貢献が期待されています。

 今回の新型コロナウイルスへの医療対応は、様々なテクノロジーの導入が一挙に進んでいるように見えます。とにかく3つの密を避けるためには従来型の診療や治療では限界があります。この流れからすれば将来的には家庭が診療所になる可能性も視野に入れられているといわれます。

 フランスでは、アプリ上で診療を行う医者の数をさらに増やす方針で、家庭医も遠隔診療が行える体制を整える方向です。設備が充実すれば、新たなウイルスの感染症が発生した時にも、医師不足を補えるだけでなく、感染拡大の早期防止にも役立つ可能性があります。

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 最近、欧米メディアを中心にコロナ禍後の世界は今までとはまったく異なるだろうという予測や、ヘタをすれば世界秩序は大混乱の中で崩れ、あちこちで戦争が起きると指摘する専門家の声も出ています。特にコロナ禍ですべての国が重い債務を抱え、景気後退局面に入るのは確実なため、人間の醜い面が露出するかもしれません。

 それはどこに現れるかといえば、関係性、すなわち人間関係、企業間の関係、国家間の関係などです。旧約聖書によれば、人類は神の意思に反し、天まで届く巨大なバベルの塔を建設しようとして神の逆鱗に触れ、神は人間同士がコミュニケーションを取れないように言葉を分けたとあります。世界が多言語になった起源と信じられています。

 現代のバベルの塔は、ITや高度な翻訳機械を駆使してコミュニケーションギャップを乗り越え、生産拠点を拡散させ、過去にない地球規模で貿易を促進化し、世界的金融システムを構築したグローバリゼーションかもしれません。今度は新型コロナウイルスに襲われ、言語ではなく身体的距離を強いられ、人間が夢見た世界を一つにする理想郷は致命傷を負いました。

 創世記に出てくる話は、神の意志に反した理想郷を建設しようとしたという話ですが、その意味では神や宗教そのものを否定する共産主義も同じです。日本人の多くはキリスト教徒ではないので、覇権主義の中国が社会主義理想を掲げていても一党独裁の危険性は警戒するものの、宗教弾圧はそれほど気にしていません。

 キリスト教的価値観を共有してきた西洋諸国にとっては、共産主義や中国型、北朝鮮型の社会主義は、神が望まない危険なバベルの塔でしかありません。しかし、肝心の神側と自認するアメリカもマネーゲームとエンターテイメント、薬物に興じ、本来の禁欲的なキリスト教の価値観からはほど遠い状況です。

 そんなアメリカが牽引してきた自由市場主義のグローバリゼーションは、先進国内でも極端な貧困を生み出し、その貧困者たちを尻目に世界中で超富裕層が増え続けています。同時に、その状況を利用して着々と覇権を強める中国を育て、世界はアンバランスの危険水域に入ってしまいました。

 コロナショックは、その事態をアメリカが気づき、世界が警戒を始める中で起きたことです。グローバリゼーションは一見、これまで実現できなかった安定した世界秩序に貢献すると見られましたが、見せ掛けでしかなく、勝ち組と負け組をはっきりさせる危険な方向に暴走を続ける結果を産みました。

 実は私自身も15年以上前までは、グローバル化の信奉者でした。しかし、9・11テロ、リーマンショック、ギリシャの財政危機、テロとの闘いの中、グローバリゼーションの欠陥と脆弱さに気づきました。さらにその推進者の多くがリベラル派か金の亡者、偽善者という点にも注目するようになりました。

 今から20年前、インターナショナル・ヘラルド・トリビューンの在パリのコラムニスト、故ウィリアム・ファフ氏とのインタビューで、しきりに先進国の巨大企業が途上国の安い賃金を利用し、その国の発展より搾取しているのは異常な状態だといっていたのを思い出します。

 コロナショック後の世界を地獄にしないためには、ビジネスも外交もグローバル化で鍛えられた異文化間のコミュニケーションスキルを生かすことが重要と私は考えています。文化が違えば考え方も違うのは当り前、その前提のもとに相手を尊重し共通の利益を探り、信頼関係を築き、対立ではなく、安定をもたらす努力が何よりも必要になるはずです。

 ある日本の保守系の医者は、今回のコロナ禍で日本や韓国の感染死者数が極端に少ないことについて、確かに数字のごまかしもあるでしょうが、その国の人間の免疫力の差を指摘しています。日本は移民の数も少なく、欧米に比べ、日常生活で常に身の危険から自分を守るために緊張し続ける必要がない分、免疫力が高いと指摘しています。

 私は日本人も常に空気を読み、欧米人より人間関係を気にしているという点や過重労働でストレスを抱えていると思いますが、身の危険を四六時中、心配する必要はありません。例えばフランスでは電車に乗ってもいかにスリに遭わないか、暴漢に襲われないかを気にする必要があり、リラックスはできません。

 多民族、多文化の国では、衛生観念が低く、危険な職場で働くマイノリティーが犠牲になっています。移民は愛国心も低いので国のルールになかなか従おうとしません。ユダヤ教やイスラム教は、そもそもその国の法律より、自分たちの教義を上と考えているので政府がコントロールするのは困難です。

 日本は多民族、多文化ではありませんが、この30年間で進んだグローバル化で多くのビジネスマンが異文化体験をしています。私は職業柄、グローバル人材育成に長年関わり、異文化間コミュニケーションのスキル向上にも努めてきました。

 コロナショック後の世界を考えると、国家主権の強化を含んだアイデンティティ強化が必要ですが、同時に異文化間コミュニケーションスキルが重要さを増すはずです。理由は対立や摩擦を回避するためにコミュニケーションの質を高める必要があるからです。今まで鍛えた異文化間のコミュニケーションスキルを役立て、世界が秩序を回復するよう努めるべきだと思います。

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