安部雅延のグローバルワークス Masanobu Abe Global Works

国際ジャーナリスト、グローバル人材育成のプロが現在の世界を読み解き、グローバルに働く人、これから働く人に必要な知識とスキルを提供。

フリーの国際ジャーナリストで、フランスのビジネススクールで長年教鞭を取り、日産自動車始め多数の大手企業でグローバル人材育成を担当する安部雅延が、国際情勢やグローバルビジネスの最前線を紹介し、豊富な経験を踏まえた独自の視点で世界を読み解くグローバルトーク。

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 欧州連合(EU)離脱で複雑になる英本土と英領北アイルランド間の物品輸送を支援する政府のシステムについて、富士通率いるコンソーシアム(企業連合)が契約を獲得したと英BBCが報じました。システムへの投資額は最大3億5500万ポンド(約480億円)としています。

 日系大企業の海外展開としては、特にコロナ禍でグローバル市場に閉塞感が漂う中では朗報といえます。ただ、今はジョンソン英首相が提出した国内市場法案が英議会並びにEUとの間で紛糾中な上、EUとの貿易協定そのものが合意のないままに完全離脱する大混乱も懸念され、取り巻く環境には楽観視できない要素もあります。

 今年1月末に発効した国際条約「離脱協定」は、北アイルランドとアイルランド間に税関業務を含む国境を設けることを回避するためEUの経済ルールを引き続き適用すると定めれています。結果的に海をまたいだ英本土から北アイルランドへの物品輸送には税関申告業務が生じ、政府が関係取引業者の負担軽減のため無料で利用できるシステムの導入を計画しています。

 そのシステムを富士通連合が受注したわけですが、システムには極めて政治的影響が濃厚で、不透明なものが多いといえます。なぜなら来年1月以降には不確定要素が多く、国際条約である「離脱協定」では、北アイルランド問題は継続的な検証が含まれ、不都合なことが多ければ、最終的にアイルランドとの間で検問する最悪の事態も考えられます。

 今、問題になっている離脱協定を保護にする国内市場法は、北アイルランドとのモノの移動で不都合が生じた場合、英政府は離脱協定を破り、英国本土と同じ扱いを北アイルランドに適応するというもので、EU側は今月末までに同法案を撤回しない場合、法的措置も辞さないと強く反発しています。

 同法案については、現在、決裂の可能性も高まっているEUとの通商交渉を年内合意に持ち込むため英国側が圧力加えていると見られています。結果、EU側の態度が硬化させ、通商交渉は決裂しハードブレグジットへの流れが強まるとの見方が高まっています。

 そのため、英本土と北アイルランドの物流には、かなり高いレベルの政治的プレッシャーが掛かってることは否定できません。それでも来年1月から移行期間を終え、離脱協定に基づいたヒトとモノの移動が英本土と北アイルランド間で始まるのは確かなので、しばらくは物品輸送を支援するシステムは必要不可欠です。

 グローバルビジネスは、国内ビジネス以上にリスクを伴うものです。日立製作所は今月16日、英ウェールズでの原子力発電所の建設計画から撤退する方針を明らかにしました。新型コロナウイルスの感染拡大などで投資環境が悪化したこともあり、事業の再開は不可能と判断したと説明しています。

 国内以上にさまざまなコストの掛かるグローバルビジネスだけに、常にリスクを折り込みながら展開する必要がありますが、果敢に挑んでほしいものです。日立の車両部は英国の鉄道事業に本格参入して10年以上が経ち、さまざまなノウハウを蓄積しています。

 富士通は北欧フィンランドで6年前に完全人工光型植物工場の製造、販売会社を設立しました。日照時間の短い北欧で成功モデルを作るのが狙いです。しかし、同事業には中国企業も参入し、競争が高まっています。ただ、日本の問題はグローバルビジネスを担う人材が不足していることです。

 事業拠点撤退の影には、グローバルリーダーシップやマネジメントの欠落があることは少なくありません。ナショナルスタッフの能力を引き出し、エンゲジメントを高める方法は日本とは大きく違います。カルチャーダイバーシティは成功すれば高いパフォーマンスを得られますが、失敗すれば地獄のような混乱が生じます。

 日本で実績があるからというだけで海外にその人物を送るのは間違いです。日頃から地道にグローバる人材育成を行っている会社が成功を収めているといえます。

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「フランス歴史物語より」チェリー・ロードラン、2019 c Thierry Laudrain / Chateau de Versailles

 フランスやベルギーには日本の漫画に相当するバンド・デシネが19世紀から存在します。意味は「描かれた帯」すなわち連続漫画で、たとえば、ベルギーの作家エルジェによる「タンタンの冒険」は、半世紀以上前から、フランスやベルギーの国民的愛読書です。

 「タンタンの冒険」や「アステリックス」といったバンド・デシネ本は、ほとんどがハードカバーのしっかりした装丁で、絵もしっかりしたものです。作家には絵画を正式に学んだ人間もいて、エルジェは晩年、モダンアートに興味を寄せていたといいます。

 私がフランスに住み始めた1990年代は、「キャプテン翼」などの日本のTVアニメが大量に放映されていました。日本の漫画やアニメは1980年代までは稚拙なデッサン力による安っぽいバンド・デシネと見られていました。

 そのイメージを根底から変えたのが確かな描写力と緻密な絵、練られたストーリーによる宮崎駿によるアニメでした。それ以来、日本の漫画やアニメの地位は飛躍的に向上し、今では書店の一角は日本漫画で占められ、欧州最古で最大級のバンド・デシネのイベント、アングレーム国際漫画祭でも大きな存在になりました。

 フランスではバンド・デシネは、建築、彫刻、絵画、音楽、文学、演劇、映画、メディア芸術に次ぐ「9番目の芸術」と位置づけられ、2016年にはルーヴル美術館で初めてバンド・デシネの本格的な展覧会が開催されました。

 フランスでは現在、ヴェルサイユ美術館で「バンド・デシネの中のヴェルサイユ」展(12月31日まで)と、パリのピカソ美術館で「ピカソとバンド・デシネ」展(来年1月3日まで)が開催されています。

 「バンド・デシネの中のヴェルサイユ」展は、ヴェルサイユ宮殿を舞台にしたバンド・デシネ作品を紹介する特別展で、オリジナル原稿や原画、下絵など約100作品の普段目にすることの出来ない作品や資料が展示されています。同時に19世紀から2019年までのバンド・デシネの変遷や発展をヴェルサイユ宮殿の歴史と共に振り返っています。

 フランス大革命やウィーン体制下の復古王政と7月王政が続く19世紀前半、2月革命後のナポレオン3世が実権を握った第2帝政になった19世紀後半だけ見ても、ヴェルサイユ宮殿はフランスの重要な歴史の舞台でした。バンド・デシネの作者たちは、偉大な人物から宮殿の威厳を支えた建築、庭園などまでを描き出しています。

 作品には宮殿や庭園、登場人物を単純化して描いたものから、細密画のように建物や庭の細部を描き込んだものまでさまざま。ヴェルサイユ宮殿で宮殿を舞台としたバンド・デシネに関する展示は初めての試みです。権力と頽廃の舞台だった同宮殿は数多くの文学小説を生み、漫画家の想像力を刺激しました。

 一方、「ピカソとバンド・デシネ」展では、ピカソの作品とバンド・デシネとの関係を探るものです。この試みも初めてです。ピカソは若い時から晩年に至るまで、新しいものへの好奇心が旺盛で、風刺画やイラストレーション、バンド・デシネに興味を抱いていたといいます。

 逆にバンド・デシネの作家のクレマン・オブジェリー、ライザ、アート・スピーゲルマンたちがピカソ本人を漫画の中に登場させたりしています。幼少期にアメリカのコミック漫画に触れたことが、ピカソのさまざまな絵画様式の試みに影響を与えたとの仮説も同展のテーマです。

 バンド・デシネは、作家のセンスと西洋絵画の優れた技法に支えられ、そのストーリー性とともに人々の生活を豊かにする存在として、フランス語圏で芸術的評価も受けています。同時に若者の間では日本の漫画やアニメが定着し、それが日本に対する興味を増幅させています。

 バンド・デシネが大きく日本の漫画と異なるのは使い捨ての消費型文化でないことかもしれません。「タンタン」は、今でも大人が休日に何度も読み返しているからです。

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   べチューンの街に衝撃が走る


 日本のタイヤメーカー、ブリヂストンは今月16日、グループ会社ブリジストン・フランスが保有する仏北部べチューン工場の閉鎖に向けた関係者との協議に入ったことを明らかにしました。乗用車用タイヤ市場の収益構造悪化が主な理由としていますが、地元自治体、政府を巻き込んで大騒ぎになっています。

 コロナ禍で深刻なダメージを受ける企業が秋以降、次々に人員整理に乗り出すことが懸念される中、従業員数863人のべチューン工場閉鎖発表は、政府や組合側との協議なしの決定打として、仏メディアも大きく報じています。

 労働市場の流動性が低いフランスの場合は、人員削減や工場閉鎖はすぐに大きな社会問題に発展します。この30年間、10%前後の失業率を大幅に改善することがなかったフランスでは、常に雇用問題が政治の主要テーマです。オランド前大統領の支持率が史上最低で終わったのも失業問題で改善がなかったからです。

 工場のあるオー=ド=フランス地域圏議会のベルトラン議長は「工場閉鎖は地元にとって自殺行為」と語り、雇用を守るためのあらゆる方法を模索すると約束し、政府はそのための資金の準備もあるとしています。

 ボルヌ仏労相や経済・財務省のパニエリュナシェ副大臣は、ブリヂストンの工場閉鎖計画について「まったく同意できない」と述べ、同社に対して工場閉鎖以外の選択肢を詳細に分析、検討するよう強く要求したことを明らかにしました。

 ブリジストン側にとって都合が悪いのは、同社は2008年には50万ユーロの公的資金援助を受け、2016年には12万ユーロを超える職業訓練資金を受け取り、2018年には高額の税控除も受けていることです。公的資金の注入にあたり、同社はさまざまな事業改善を約束させられていたはずです。

 仏政府は今回、「ブリヂストンは長年にわたり他の欧州拠点を優先し、ベチューン工場には投資を怠った結果、競争力を失った」と指摘し、仏公共TVフランス2は「ブリジストン側は他のアジアのメーカーとの競争に晒され、持ちこたえられなくなったと説明しているが、仏政府は弁解に過ぎないと一蹴している」と伝えています。

 同工場の非効率な状態は度々指摘されながらも改善されなかったことが主要因だと政府も地元自治体もメディアも指摘しています。ブリジストン側は、連結業績に与える影響は算出可能になり次第、速やかに開示し、理解を求めるとしていますが紛糾は避けられない状況です。

 フランスの場合、生産拠点が地方の小規模都市にあり、その工場に勤める住民が5割を超えるケースも少なくありません。2009年、仏南西部の小さな街にあったソニーのビデオカセット製造工場が閉鎖になった時は、工場責任者が労組によって数週間監禁されたこともありました。

 別の日系企業の工場閉鎖では市長がハンガーストライキで抗議し、仏西部ブルターニュのヴィトレにあった日本系電機メーカーの工場閉鎖では、地元メディアに叩かれ、社会問題化しました。

 海外進出は撤退の可能性も織り込み済みですが、フランスで某日系企業の撤退処理に関わった経験から、撤退をスムーズに行うには日頃からの経営改善努力が必要なことを痛感します。ブリジストンの場合も、効率化に対する投資を怠ったことが批判されており、経営の中身に踏み込んだ批判です。

 労使双方がこれまで納得のいく業務改善に真剣に取り組んできたのか、これから明らかになるのでしょうが、多くの場合はさまざまな悪習が放置されていたケースが少なくありません。規模縮小などのリストラで大きな抵抗もない事例を見ると、企業としての透明性が高く、日頃から従業員からのフィードバックに経営者側が耳を傾けているケースがほとんどです。

 むしろ、従業員側が事業の改善に積極的で、さまざまな提案をしていて、それが実際に反映されていることは重要です。無論、規模縮小と撤退は話が違いますが、その場合は転職先の斡旋、他の企業への売却などを検討したかどうかが問われます。

 どうやら今回はブリジストン側がいう業績悪化の説明だけでは、従業員も政府も納得してくれない状況です。こんな展開で中国企業が買収に乗り出すことも考えられます。徹底した合理化、効率化、生産性向上に取り組み、同時にアグレッシブな営業戦略で前進する努力があったかどうかが問われています。

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 安倍前政権で日本の存在感を世界に示せたことで、菅新政権への海外の注目度もある程度高いといえそうです。前政権の路線踏襲が基本路線としていますが、近隣の日本との関係が重要な中国、韓国からは、改めて新政権の動きが注視されています。

 インド太平洋の発展は日本の国益に合致します。同時に戦後の日本の信頼回復に繋がるという大義名分もあり、さらに近年は覇権を強める中国の封じ込め外交も重なり、莫大な資金援助、技術協力、人材協力を繰り返してきました。官民上げて海外投資といえば、インド太平洋重視は変わっていません。

 しかし、相手国の発展に応じ、その姿勢は変える必要があります。その意味でアメリカ、欧州の対中外交には学ぶべきものがあると感じています。相手が途上国、新興国である場合は、支援の側面が強く、技術供与や人材供与は当然のように行われます。

 多くの途上国は政治が不安定で民主主義が成熟していないだけでなく、独裁国家や社会主義という日本と異なった統治システムを採用している国もあります。そのため、権力者の都合で頻繁にルールが変えられたりします。さらに個人も組織も遵法意識に乏しく、ルールを守る保障もありません。

 特にアジアはルールより人間が上に立っている場合が多く、人間同士の信頼関係だけで動いている場合があります。それもいつも裏切りに注意が必要です。かつての日本も1990年代前半まで、大企業が反社会性力でもある総会屋を使い、株主総会を管理する海外企業には理解不能な慣習が存在しました。

 既得権益を守り、超内向きの論理で動いていた日本は経済発展と同時に市場開放のための規制緩和をアメリカから迫られ、透明性を高めるためにも総会屋を一掃する方向に舵を切ったのは1990年代のことです。つまり、アメリカでいえば大企業がマフィアとの関係を持っていたようなもので、日本ではその関係を切ったのは1990年代に入ってからでした。

 今回、欧州と中国が年内の投資協定の合意をめざし、欧州連合(EU)のミシェル大統領、欧州委員会のフォンデアライエン委員長、議長国ドイツのメルケル首相が、中国の習近平国家主席と首脳会談を行った際、欧州側は3つの条件を出しました。

 1つは中国政府が公正な競争を妨げる多額の補助金を中国企業に出しているのをやめること、2つ目は知的財産権を盗み取るのをやめること、最後は新疆ウイグルへの宗教弾圧、人権弾圧及び香港市民の言論の自由を封殺するのをやめることでした。

 興味深いのは、中国側は「内政干渉」と反発しながら、欧州とのパートナーシップを強調しているのに対して。欧州側は途上国ならともかく、世界第2位の経済大国を自負する中国が欧州と対等の関係を望むなら、欧州で受け入れられない事項については変更してもらう必要があるという姿勢を鮮明にしたことです。

 日本もアメリカが日本に市場開放と規制改革を迫ったことで、前近代的な慣習を一掃し、より透明性を高め、グローバル化への参画、国際的発言権の確保に繋がったわけです。結果、日本はアメリカのパートナー国として信頼される国になり、戦後の国際社会での信頼回復にも繋がりました。

 その日本も大国志向の強い中国や日本への対抗意識が強い韓国に対して、かつてのアメリカの日本に対する姿勢や、今の欧州の対中外交のように「パートナーになりたければ、一定のヴィジョンとルールの共有は必須で、それなくしては対等な付き合いはできない」という毅然とした態度が必要です。

 資金、技術、人材支援の段階を終え、先進国が守るルール、守るべき価値観を中韓に求める段階に入っています。欧州首脳は中国との投資協定は「相手を変えるチャンス」と見ています。呼び水を十分与えられた中国、韓国は発展したことで、次の段階に入る運命にあるということです。

 それは日本が戦後辿ってきた道でもあります。人の物を盗むだけでは先進国になれず、地味な必死の努力なくして、世界が認める一流国になれないという信念を日本側が持つことが重要と思われます。恩恵を受けとることに慣れ、先進国に対して甘えの中にある中韓を自立させるのも日本の役割です。

 もし、中韓がそれを拒み、自分たちを変えようとはせず、今までどおりの関係を望むなら、日本は対等なパートナーシップを拒否すべきです。それに中韓のみならず、多くのアジア諸国が民主主義を成熟させ、ルールを守るようになれば、日本にとって繁栄のチャンスにもなります。

 間違っていることを間違っているといえる外交、それを相手に納得してもらうコミュニケーション力、共に発展するための価値観やヴィジョン、ルールの共有を生命視する姿勢を明確にすることを管政権に望みます。

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 コロナ禍で男性よりも女性の方が苦労しているという話は日本ではあまり話題になっていません。ロックダウン(都市封鎖)、保育園を含む学校封鎖、自宅でのリモートワークなどで、育児や家事のあり方は過去にないレベルで変更を迫られています。

 9月に入り、子育ての一翼を担う保育所や学校が本格的に再開したとはいえ、時間制限、人数制限があるだけでなく、感染第2波でフランスやスペインで一部地域で学校封鎖が起き、予断を許さない状況です。

 ロンドンで共稼ぎの娘夫婦は小学校前の子供2人を抱え、妻は昼間、リモートワークで6時間は働き、その間、夫が子供面倒を見ながら家事をこなし、夜には交代で、夫がリモートワークで妻が子供の世話や台所の片づけを行っているそうです。

 金融機関に勤める夫は子煩悩なので、その分担は成立していますが、彼の多くの男性の同僚は日中、リモートワークを行ない、妻が仕事以外に家事、子育てに多くの時間を費やしているといっています。日本よりは女性の社会進出が進んでいる欧米ですが、コロナ禍の女性への負担は想像以上です。

 米ウォールストリートジャーナル(WSJ)は、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)が今春実施した調査を紹介し「女性は家事育児に費やす時間が男性より週平均15時間多く(65時間対50時間)、コロナ流行前(35時間対25時間)より差が拡大した」と指摘しました。日本はそれ以上でしょう。

 女性がコロナ禍で仕事を犠牲にし、キャリアを積むことを諦めるケースが多い理由について、「男性パートナーの収入の方が多いせいだ。国勢調査データによると、2018年には共働き異性夫婦のおよそ70%で、夫の稼ぎが妻を上回っていた」というカリフォルニア大学へイスティングス・ロースクールのジョアン・ウィリアムズ教授の指摘を掲載しています。

 「たとえ男性が家事をもっと引き受けたいという強い思いがあっても、職場でフルに働くことを期待されるために挫折する場合がある」と同教授は指摘しています。無論、家庭でも稼ぎの多い男性に働いてもらう方が得策と考えるでしょうし、女性の方が育児や家事に向いているという従来の考えもあるでしょう。

 子供を持つ女性が働くために欠かせない保育や学校という社会保障機能が、コロナ禍で失われたり、弱められることは、男性よりも女性に深刻なダメージを与えています。少子化を女性の社会進出のせいとする伝統保守的な男性は、コロナ禍で女性は本来の使命に戻れると考える意見もありますが、会社でも女性の力が必要な時代、女性がキャリアを積めないのは社会的損失です。

 古い男性なら、「俺が一生懸命働くから、お前は家を守れ」というかもしれませんし、会社によっては職員のリモートワーク中の育児を禁止するケースもあります。夫婦に同じ条件が課せられた場合は、女性が仕事を諦めるしかありません。

 子育ては家庭と公的機関が一体となって行うのが先進国の原則ですが、公的機関のサービスがなくなれば深刻なダメージを受けるのは当然で、特に女性を直撃しています。日本のように継続的キャリアがなければ復職が困難な国では、一旦一線から退くと後がなくなるため、もっと深刻です。

 Withコロナは確実に働き方を根本から変えさせようとしています。キャリアを求める女性が、ますます結婚を避けるようになれば、少子化は加速するでしょう。日本の菅新総裁は「一生懸命仕事をすれば、必ず道は開ける」といっていますが、その伝統的考えは到底普遍化できません。

 男性も女性も活き活きと暮らせる社会を作るという意味で、コロナ禍は大きなリセットを要求していますが、それはけっして元の伝統的男女の役割に戻ることとは思えません。それより男性中心の働き方によって生産性を追求してきたシステムを根本から見直す時期が到来しているということだと思います。

 無論、本腰を入れて働き方改革に取り組む企業もありますが、コロナ禍で改革は急を要している状況です。デジタル化で仕事の効率化、生産性向上がもたらされる中、一人の人材の背後にある家庭を考慮した働き方改革を早急に進めなければ少子化はさらに深刻化する可能性があります。

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 日本は戦後、アメリカの圧倒的存在感により、アメリカの背後にある欧州は軽視するようになりました。そのため20世紀の2つの大戦以前に世界を主導してきた環大西洋同盟への意識は、あまりありません。無論、今はインド・太平洋が世界経済の中心になりつつあるわけですが、そこに先手を打っているのが中国です。

 今や中国にとって最大の敵となったアメリカに対して、中国から見える世界は大西洋につきだした日本とはまったく異なり、かつてのシルクロードをもとにユーラシア大陸の支配こそがアメリカに対抗する唯一の道です。広域経済圏「一帯一路」構想は、東の中国が西の到達点である欧州を手中に収めることです。

 欧州連合(EU)は14日、中国とオンラインによる首脳会談を行ないました。EU側からは議長国ドイツのメルケル首相、フォンデアライエン欧州委員長ら、中国側は習近平国家主席が出席しました。目的はEUと中国の投資に関する包括的合意達成を目指す首脳間の確認。

 年内に合意に至れば、欧州にとっては貿易の条件を定め、中国の補助金や欧州が保有する知的財産権の保護といった問題に対処でき、メルケル独首相の想定通りに事が進めば、気候変動対策における中国の役割を規定することにもなります。無論、中国投資による経済力恩恵への期待感が背景にはあります。

 では、中国にとってはどうなのか。一帯一路構想の最終到達点である欧州を手中に収めることでユーラシア大陸を支配し、さらにはアフリカ支配も視野に米・欧の大西洋同盟を完全に切り崩すくさびを打ち込むことが目的と見られています。

 当初、難色を示していた政府補助金の規制に対しても柔軟な態度に変わろうとしている中国は、米大統領選を視野に何がなんでも欧州との関係構築を急ぐ構えです。8月下旬から欧州を歴訪した中国の王毅外相は、今回の中・欧首脳会談の地ならしが目的でしかが、新疆ウイグル族や香港への弾圧に非難が集中し、欧州の空気の厳しさを痛感した旅でした。

 しかし、中国は多国間主義の欧州が、アメリカとは異なった世界観を持っていることを知っており、人権や政治問題と経済を切り離して考えていることも知っており、地政学的にも欧州に隣接するロシアへの警戒感は中国に対してはないと見られています。

 トランプ政権発足以来、大西洋同盟は陰りが見られ、特にメルケル氏はトランプ氏を敵視ししており、それが中国に対して脇を甘くしています。それに欧州産業界にとっては、成長するアジア市場へのアクセス確保は、EUの景気回復のために不可欠の条件です。

 欧州は対中警戒感が強まっているといいますが、アメリカ側に完全につくこともありえない状況で、大西洋の向こうアメリカと、シルクロードの向うにある中国を天秤にかけながらバランス外交を展開中です。本当はシルクロードの先にある日本との関係強化が重要ですが、中国にとってはアメリカとの関係の強い日本は邪魔の存在でしかありません。

 今回の首脳会談は 中国国営新華社通信が伝えるところでは、習氏は「平和共存、開放的な協力、多国間主義、対話と協議」の4つを強調し、言外に「アメリカこそ世界の破壊者」との認識を示し、多国間主義で嫌米のメルケル氏に共感を求めた模様です。

 欧州人は現実主義のアメリカ人、日本人と違い、理念的で観念的な美辞麗句が大好きです。中国共産党が最も得意とするところでもあります。コロナ禍で弱体化した欧州は中国にとって覇権外交の千載一隅のチャンスです。

 アメリカという敵と敵対する欧州を見方に取り込む敵の敵を味方につける外交戦力は、中国の非常に古くからある戦略の一つです。しかし、欧州では中国に甘いメルケル氏への批判の声も高まっており、旧中・東欧には多国間主義を偽善と見る見方も出てきています。

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leadership

 新型コロナウイルス対策でも「安倍政権はうまくやっている」というのが一般的な国際評価であり、経済運営でも先進国の中では「安倍政権は大きな失点はない」と見られています。国内保守派も総裁選では安倍政権の継承に総意があるように見えます。しかし、継承はうまくいくのでしょうか。

 「日本はうまくやっている」というコメントは国内外のメディアから聞こえてくることは多いのですが、それは日本人の国民の平均的知性レベルが高いこと、格差が拡がっているといっても欧米ほどの貧富の差がないこと、個人より集団の利益を優先させてきたこと、政治が安定していることなどが挙げられると思われます。

 そう書くと、日頃、安倍政権に批判的な人は不快に思うかもしれませんが、欧米の教育格差の現実は驚くべき状況にあり、アメリカやフランス、英国、ドイツなどでも勉強についていけないマイノリティー家庭の子供には冷たく、義務教育の途中で学校をドロップアウトする青少年は少なくありません。

 彼らが窃盗、傷害事件、麻薬売買に手を染め、治安を悪化させ、社会を不安定化させています。さらには彼らの中からテロリストも生まれています。差別と貧困、犯罪から抜け出せない状況の中、治安を守る警察は強硬な態度に出ざるを得ない悪いサイクルが出来上がっています。

 これは古くて新しい課題で、1970年代後半から80年代にかけて荒廃したアメリカの大都市のマイノリティー居住地区をテーマにしたアメリカ映画は少なくありません。それは収まっているかといえば、残念ながらそうではないために黒人差別への抗議運動も起きています。

 騒乱の鎮圧のために軍が動員される状況は日本にはありません。市営住宅などの貧困地区がテロリストの温床になっているとか、一般市民は危険で歩けない地区があるという状況も日本にはありません。フランスのように2年間も反政府の黄色いベスト運動で毎週末は繁華街が封鎖されることもありません。

 逆に言えば、国民があまりにも道徳基準が高く、優秀なので政治家に実力がいらないともいえます。優秀な官僚が作った政策を政府が施行しさえすれば、あとは真面目に国民はついてくる国など、そうはありません。マスクさえも着用義務への反対運動が起き、罰則のある措置がなければ国民は政府の要請を守ったりしない国が普通です。

 つまり、大した強いリーダーシップはいらないともいえます。報連相で管理するやり方も「人は嘘はつかない」「作り話はしない」という性善説が通用する日本社会だからこそのマネジメント手法です。上が下に対して進捗を厳しく管理する必要性も感じていません。

 日本では長く続いた官僚主導と縦割行政を脱却するため、政治主導に切り替えるため内閣府ができ、内閣人事局で各省幹部約600人の人事を行うようにしました。その制度はまだ、6年しか経っていません。意思決定権を持つ政府の方針に各省は従う体制を整えたように見えますが、弊害も出てきています。

 1980年代後半、欧米日本が中心となって立ち上げたビジネスプロジェクトに関与し、その時、意思決定や権限、人材配置で論争したことを覚えています。アメリカ出身者が「トップに選ばれた者が自分の意に沿うエグゼクティブスタッフを決めるのが当然だ」といい、「それでは権力が暴走する」と日本側が抵抗したことを覚えています。

 今の日本政府は、その欧米型の意思決定スタイルを踏襲しようとしていますが、その前提になる意思決定の透明性、徹底した議論、ヴィジョンを共有するためのリーダーの発信力、説得力はあまり論じられていません。政府が決めた政策に疑問を呈する官僚は排除されるだけでなく、昇進もできなくなる状況も生まれ、官僚の士気があがらないだけでなく、優秀な人材の官僚離れも起きているそうです。

 つまり、権限の棲み分けはできたのみで、リーダーシップの素質そのものへの問いかけ、マネジメントの仕方は未成熟なままに見えます。成功する組織は実力者が群雄割拠し、競争原理が働くと同時に自由に異なった意見がいえる環境があり、リーダーは強権を発するだけでなく、多くの意見に耳を傾けながら、最大限の納得感、共感を全員に与えるリーダーが必要です。

 その意味で日本の政治は過去にない大きな岐路に差し掛かっているように見えます。それに日本のトップリーダーは、いつの時代より日本のアイデンティティを明確にする必要があります。

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 欧州連合(EU)から年末に完全離脱を予定する英国に対して、日本はEUとは別に貿易協定を結ぶ必要を迫られ、約3か月という異例のスピードで交渉は決着し、関係者を驚かせました。それも英政府がEUとの離脱協定を反故にする国内市場法を議会に提出し、EUと英国の関係が悪化する最中でした。

 日本は政権交代を控え、閣僚や担当者が変わる前の決着が急がれ、英国もEUとの貿易交渉が頓挫する可能性もあり、早急にポジティブな材料が必要だったとも指摘されています。ただ、日本とEUの経済連携協定(EPA)をほぼ踏襲する内容だったことを考えれば、スピード決着も不思議とはいえません。

 両国間の貿易額の輸出入総額は現在約4兆円といわれていますが、英政府の試算によれば、貿易協定の締結でさらに約2.1兆円の上積みが見込めるということです。EU離脱後に貿易協定がなければ、関税引き上げや通関手続きの複雑化で企業は大混乱に陥るリスクがあっただけに、日本の経済界も歓迎しています。

 無論、完全離脱を待たずして国益重視を露骨にするジョンソン英政権は、国際法に違反し離脱協定をねじ曲げてでも自国の都合を優先する姿勢を見せています。その意味で日本にとっては、対EUよりリスクは高いともいえます。「あの英国が協定を簡単に反故にすることはあるまい」とはいえない状況だからです。それに施行は相当先に話になりそうです。

 ビジネスは信頼関係の上に成り立っており、対英ビジネスで不安要因がないとは言いきれなくなりました。それに今回の日英貿易協定では投資紛争の解決手続き(ISDS制度)導入が見送られました。環太平洋連携協定(TPP)の参加に意欲を見せる英国には、同制度が導入されているTTPへの参加交渉のハードルは高いかもしれません。

 20年前から、グローバルビジネスに関わる欧州のビジネスマンたちは、環大西洋の同盟国が世界を主導する時代は終わり、インド太平洋の時代に世界経済の軸は動いたという認識で合意しています。その意味でもEUを離れる英国が英連邦の大国オーストラリアもある環太平洋に軸足を移すのは当然といえます。

 特に大英帝国時代に築いたグローバルネットワークを手放さない英国は、過去に覇権を持った環太平洋に商機を見出そうとするのは当然の流れです。しかし、アヘン戦争以降英国を嫌う中国も待ち受けており、共通の価値観を共有するアジアの大国、日本との関係強化は最優先課題です。

 ジョンソン政権にとっては、ブレグジットに理解を示すトランプ米大統領との間で有利な英米通商協定を結ぶことで、環太平洋の盟主の日本とアメリカとの新たな関係を築くことは、離脱後の英国経済にとって極めて重要です。とはいえ、頭の固い英国人はアジアに偏見がないわけではありません。

 未だに英国のビジネススクールでは、日本及びアジアを見下げる傾向は消えていません。大陸欧州に至っては、さらに現実離れしたアジアに対する上からの目線があります。インド太平洋に商機がある一方で文明的蔑視も存在します。

 もしかしたら遵法意識の低いアジアの途上国では、国際法を無視する横暴な態度の英国だからうまくやれるという皮肉な見方もできるかもしれません。ただし、大英帝国時代のようなアジア人蔑視の不遜な態度は許されないことも確かで、成功するかどうかは英国次第ともいえます。

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 英政府が9日、昨年10月に欧州連合(EU)と締結したEU離脱協定に反する国内市場法案を議会に提出したことを受け、EUは法的措置も辞さない構えで大きな騒ぎになっています。さらには北アイルランド和平協定を危険に晒すとしてアメリカ議会も米英貿易協定に署名しないと警告を発しました。

 今回、英政府が議会に提出した国内市場法案は、離脱移行期間の終了後、離脱協定で定められた北アイルランドに関する議定書の一部を無効とする条項を含むものです。合意されている離脱協定では、アイルランドと北アイルランドの間で国境がなく自由に往来している現状を維持するため、年末の移行期間終了後も北アイルランドをEU単一市場にとどめる条項が存在します。

 結果として北アイルランドと海を隔てる英本土の間では離脱後、異なった税制やルールが課されるため一定の検査や手続きが必要となる見通しです。2016年の国民投票後の離脱交渉で、北アイルランド問題は交渉を長引かせた最も難しい問題でした。離脱強硬派は、北アイルランドを貿易ルールで分離する案は、一つの英国の原則を脅かすとして、反対していた内容です。

 とはいえ、北アイルランドとアイルランドの間に国境を設け、関税を巡る煩雑な手続きを生じさせれば流通は滞り、経済的ダメージが大きいだけでなく、北アイルランド和平協定(ベルファスト合意)を危険に晒すとして、アメリカは懸念を表明し、結果的に国境検問は設けず、北アイルランドだけはEU単一市場にとどまりながら、離脱後にさらなる検討を定期的に重ねることで合意していました。

 ところが、ジョンソン英首相は、離脱協定にある英・EU間の貿易協定が成立しない場合に発効するモノの移動に関するルール、企業に対する国家補助の取り決めを、英政府が一方的に無効化する権限も含まれた法案を提出しました。その権限には国際法に反しても適用されるべきと明記されています。

 これに呆れたEU側は、欧州委員会のフォンデアライエン委員長が「国際法に反するのみならず、信頼の喪失につながる」とツイッターに投稿しました。EU側は離脱協定の修正を試みれば自由貿易協定(FTA)は実現しないだけでなく、交渉を巡る混迷がさらに深まると不快感を示しました。

 法案を提出したジョンソン英首相は、離脱協定の北アイルランドに関する条項について「極端、あるいは不合理な解釈から英国を守る法的安全網」と英下院の答弁で説明しましたが、年末までに合意をめざす通商交渉に悪影響を与えるのは必至です。

 これを深読みすれば、現在、貿易協定の最終交渉プロセスにある中、英国側は英国に有利に貿易協定を締結するため、EUを脅しているともいえそうです。それで思い出すのは、昨年9月、離脱協定で紛糾する英議会を強引に閉会し、議論を封殺しようとしたことです。

 ジョンソン氏の目論見は最高裁判所の判決で違法とされ、結果的に公約していた10月31日の離脱は今年1月31日に持ち越されました。自分の思うようにならないと、最後は超法規的行動に出る癖があるともいえそうです。同時にEUに対する疑心暗鬼がありすぎるのかもしれません。

 ジョンソン首相は「英国の統一を維持すると同時に、ベルファスト合意を守ることが私の仕事」とした上で、「北アイルランドと英本土の間に国境線が引かれるような事態から英国を守る安全措置が必要」と訴えています。

 この揉め事に英国の後ろから米国のペロシ下院議長が参戦し、英政府の提出した国内市場法案について、トランプ政権が英国と締結をめざす自由貿易協定について、北アイルランド紛争の和平合意(ベルファスト合意)を危険にさらすのであれば、米英貿易協定が議会を通過する可能性はない」と警告しました。

 トランプ氏はジョンソン氏にEUからの合意なき離脱でも強硬離脱を支持し、米英貿易協定で英国経済は上向くとしていますが、トランプ政権と鋭く対立する民主党のボスであるペロシ女史は、これには反対です。アメリカの大統領選も絡んだジョンソン氏の国際法無視の法案はどうなるのでしょうか。

 問題は、政策を推し進めるために民主的な手続きを無視し、国際法に違反することも辞さない態度が、どこかののし上がった自称、経済大国の態度に似ていることです。議会制民主主義発祥の地である英国は、大英帝国の時代から遵法意識に欠ける同じような強引な行動を繰り返してきました。

 中国批判に舵を切っている欧州ですが、正式な協議で自分のヴィジョンに合わない結果になると、契約やルールを強引にねじ曲げようとするのは文明国のあり方とはいえません。それに離脱後もEUと共存・共栄しようという態度とはほど遠い傲慢な態度です。大英帝国の妄想に囚われたパラノイアともいえそうです。

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 米大統領選は70代の2人の一騎討ちとなりました。年齢はプラスに働きにくい米国で2016年の大統領選で勝利したトランプ大統領は70歳でした。48歳で大統領になったオバマ前大統領からすればかなりの差です。ロシアのプーチン氏が最初に大統領になったのは47歳、英国のブレア氏が首相になったのは44歳でした。

 東西冷戦終結後のグローバル化に邁進した時代の大国を率いたトップリーダーは40代が多く、新しい時代を予見させました。ところが今、アメリカは70代の2人がトップの座をめざして戦っています。バイデン氏が当選した場合、在任中に80歳を超えます。

 日本は以前と変わらず、60代、70代で首相の座を争っています。東洋には儒教の長幼の序の精神や人間崇拝の慣習があるため人望や人脈、経験が重視されるため、40代のトップリーダーを産むことはなかなかありません。日本にはさらに徒弟制度的な慣習も根強く、世代交代も起きにくい現実があります。

 それでも世界の激変に晒され、結果が求められるビジネス界では、50代で大抜擢される社長が日本で生まれ、結果を出しており、政治の世界よりは世代交代は進んでいます。この10年、グローバル化の暴走で世界のあちこちで格差が拡がったことで歪みが生まれ、今は調整期でネクストコロナは政治と経済の関係に新たな状況が生まれつつあります。

 弱者に重心を置きすぎた政権は国の経済をしぼませることは世界各地で実証済みですが、自分たちの存在意義を強めたいために管理をしたがるのが政治家や役人です。結果的に格差是正で弱者に重点を置きがちで、ともすれば管理が行き過ぎた社会主義的な方向に向かう危険性もあります。

 彼らの多くにじわじわと影響を与えているのが、経済成長した社会主義国、中国の成功です。統制経済はうまくいっているように見える側面もあるからです。日本でも役人には社会主義的考えを持つ人は少なくありません。

 ヨーロッパは長年社会民主主義を信じ、結果萎縮した経済を抜け出すために自由市場主義に傾斜していますが、構築してしまった社会保障システムを変えられず、フランスの黄色いベスト運動に象徴されるように弱者軽視を身を持って感じる労働者層が反政府運動を展開しています。

 ネクスコロナで警戒すべきは自由主義の衰退です。同時にデジタル革命で激変する世界を正しい方向に導くことです。19世紀の産業革命はビジネスで成功した富豪ブルジョワジーと貧困にあえぐ労働者階級ができ、結果、共産主義を産みました。人間の生活を根底から変えるような大変革期はチャンスであると同時にリスクでもあるわけです。

 そこでトップリーダーにとって重要なことは、明確なヴィジョンやその実現のための戦略を示すことは当然ですが、同時に「管理」ではなく、「支援」の姿勢を持つことが重要になています。全てのプレーヤーの自律性を尊重しながら、彼らが成果を出すための環境作りの支援者にリーダーは徹することです。

 ネクストコロナは、高齢リーダーは豊富な経験で、若いリーダーは優れた感性で変化に対応できるしなやかさで、どれだけ全体を支援できるかが鍵を握るというのが、最先端のリーダーシップです。下が上を支えるのではなく、上が下を支援する意識転換が必要です。

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 誰でも上品な人の方が下品な人よりいいと思うかもしれません。米大統領選で飛び出すトランプ候補への人格批判は「下品」という指摘で覆われています。あのリベラルなハリウッド関係者の中で保守的とされる監督で俳優のクリント・イーストウッドでさえ「トランプは下品すぎるのでバイデンを支持する」といったほどです。

 「下品な大統領は米国の恥だ」というわけですが、実はトランプ支持者の中で岩盤といわれてきた福音派や白人労働者階級は、トランプ氏の下品さをどう思っているのでしょうか。私個人はアメリカのバリバリの共和党支持者の友人が少なくないので聞いてみるとまったく違った答えが返ってきます。

 テキサス州出身でニューヨークで高校保険医として働くマリリンは「米国はIT、ハリウッド、ウォールストリートの金融業などの勢いが増したことで、リベラルな考えが蔓延り、保守はどう対抗すべきか危機感を抱いていた。トランプは伝統保守の価値観を守り、リベラル派に真っ向から挑む戦士だったので期待は大きい」という。

 もう一人、フロリダ州タンパで建築会社を営むリーフ氏は「最近、黒人の抗議デモが暴徒化するのに対して、人気裁判TVドラマのロー・アンド・オーダー(法と秩序)をトランプが強調しているが、白人警官に殺害された多くの黒人は、軽犯罪を繰り返す不良で警官にも反抗的だ。黒人差別ではなく、治安維持の当然の結果だ。トランプ氏の考えは正しい」といっています。

 多民族国家の米国、それも何より個人の自由を保障する国の秩序を維持するのは容易ではありません。米国のフロンティア時代から培われた正義の価値観は、悪を憎み排除することを当然としています。死刑制度が続く州が少なくないのはそのためです。黒人だから排除するのではなく、秩序を守る警官に刃向かう態度は許されないということです。

 保守派は善悪の価値観がはっきりしており、リベラル派は曖昧です。リベラル派は黒人が犯罪に走るのは差別によって苦しい人生を送っているからだという同情論が先にあります。30年間、フランスの治安分析を行ってきた私は、この保守とリベラルの治安に対する考えの違いを深いレベルで見てきました。

 左派が政権を取ると警察権力が弱められ、治安は悪化し、保守になると治安が落ち着くのが常です。イスラム過激派のテロが頻発するフランスで、左派は社会的差別を受け、犯罪に走るアラブ系移民の境遇改善が急務を訴えますが、解決には非常に時間の掛かり、すぐに効果が出る話ではありません。

 右派のサルコジ氏は、イスラム教の宗教的慣習である女性のスカーフ着用を禁じ、犯罪は厳罰で対応し、警察官の権限強化を徹底しました。抗議デモの暴徒化では極左の無政府主義者の活動家が紛れ込み暴力と破壊がエスカレートするのが常です。

 トランプ大統領が抗議デモが暴徒化する町の民主党の首長が、鎮圧に躊躇し、騒乱を抑えられないことを強く非難していますが、理由はどうであれ、暴力と破壊行為は許されないというのが法治国家の原則です。リベラル派はトランプは独裁者といいますが、実は極左の無政府主義者が紛れ込む暴力的デモの鎮圧には多くの米国人はトランプ氏を支持しています。

 無論、言い方はいつも下品です。しかし、饒舌なリベラル派の人道主義的発言に無力だった保守派の人々は、下品でもトランプを支持しています。左派リベラルは権力に抗する歴史が長く、戦術に長けています。マスコミや世論操作から煽動まで巧妙ですが、保守派は纏まりがなく、戦う術も知りません。

 今、リベラル派が気が狂ったように反トランプキャンペーンを展開し、「人格の破綻した狂人」と非難する作戦に出ていますが、実はトランプ氏の反リベラル攻撃はかなり本質をついており、それがリベラル派を苛立たせ、強い危機感を抱かせているのも事実です。

 人格批判でトランプ氏の女癖の悪さを指摘されても、大統領選で聖人を選ぶわけではなく「男なら誰でもそういう側面があるよね」程度にしか受け止められていません。民主党や親族のスキャンダラスな人格批判は、トランプ氏の致命傷になるとは考えられません。

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 ポンペオ米国務長官は、トランプ大統領から国務長官に任命された時、「大統領は東西冷戦後にできた世界の枠組みを完全にリセットしたいということを理解した」と語っています。裏を返せば、アメリカの国益になるかならないかを徹底的に洗い出すということでもあったわけです。

 しかし、国家同士が密接な関係で動く世界においては、国益は世界の動向と深く関係しており、国家エゴは国益にも繋がりません。特に大国である米国の場合は国際秩序構築に大きな責任があり、それは国益にも繋がる話です。一方で支配するかされるかしか頭にない覇権主義は世界にとって脅威です。

 対中貿易戦争が香港の一国二制度を崩壊させる中国政府の暴挙によって、イデオロギー問題にまで発展し、そうなるとイデオロギーに敏感な欧州も貿易戦争を高みの見物してきたようなわけにもいかない状況です。トランプ政権が繰り返してきた中国覇権主義の脅威は本当だったと受け止められています。

 ところが世界は経済関係において、東西冷戦時代とは比べ物にならないほど密接な関係にあり、利害が複雑に絡み合い単純な対立の構図ではなくなっているのも事実です。トランプ政権の登場、中国覇権主義の加速によって、欧州が主張していた多国間主義や国連平和主義は機能不全に陥っています。

 安倍政権を振り返ってみると、日米同盟関係を重視する安倍政権の動きは、世界から見れば不思議だったと言わざるを得ません。欧州は北大西洋条約機構(NATO)の分担金が不平等とか自動車税を増やすなどトランプ氏の強硬態度に嫌悪し、距離を置くようになる中、安倍政権はあくまでトランプ政権との関係を強化し、安倍氏はトランプ氏が最も信頼する外国首脳だったといいます。

 人間関係構築を優先する日本独特のアプローチは、考え方の共有を優先する欧米社会では通常は通用しないわけですが、成果をあげることができたといえそうです。過去のいかなる時代よりアメリカの大統領に日本の首相が影響を与えたことは大きな実績です。

 今回、健康上の理由で安倍氏が辞任表明したことは、トランプ氏には驚きでしょうが、権力に固守しない潔さが日本人である安倍氏がトランプ氏に送った最後のメッセージだったかもしれません。

 考え方が合わないメルケル氏はトランプ氏への嫌悪感を露わにし、マクロン氏に至っては親子の年齢差があるにも関わらず、トランプ氏に説教しようとしたりしています。今やアメリカの足元にも及ばない経済力、軍事力しかない独仏首脳の頑固で尊大な態度は現実離れしています。

 日本は欧米と異なり、理念やヴィジョンを掲げて動くよりも、状況を見ながら上手に生きていくことに長けた国民性を持つ国です。安倍外交も米中対立が激化する中で、両国との関係をうまく保ちながら国益を追求する姿勢を貫いています。

 それは信念のない商人国家の狡賢い姿勢だと批判されることもあり、本当に自由と民主主義、法治国家、人権を信じているのかと不信感を持たれることもあります。しかし、安倍政権は少なくとも基本的価値観において自由世界に属していることを繰り返し強調しており、それは成果を上げたと言えます。

 今は冷戦後の世界の枠組みづくりに狡猾に侵入した社会主義で覇権主義の中国共産党の脅威を排除するのが喫緊の課題です。同時に経済を崩壊させることはどの国ににとっても国益にならず、信念と柔軟性の両方を備えたしなやかで粘り強い外交が必要です。

 それは日本が最も得意とするものであり、世界の役に立つもので、今後も日本の顔を明確にすることができれば日本をしぼませない道に導く姿勢だと私は考えています。

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